2006年03月18日

●060318 箱棟/大和棟

箱棟の家を反対から見ると、こんな感じになっています。
京都南部から奈良にかけてよく見られる形式で、「大和棟」なんて呼ばれたりしていますね。
このお宅は片側入母屋ですが、両方切妻にしているところも多くあります。
P1020026.jpg

大和棟も「傷みやすい隅の部分を補強して、台所の上から茅屋根を遠ざけ火災にも備える、理にかなった新しい茅葺きのデザイン」と評されるのですが・・・
箱棟ほどには茅を葺き替えるときに頭を悩まされることはありませんが、瓦葺きにあるまじき勾配で葺かれた夘建(茅屋根の端に立てられた壁)の瓦が結構傷んでいるので、瓦屋さんを呼ばないといけなくなります。また、この形態だと構造的な屋根の強度にも、影響を及ぼしているでしょう。

箱棟も大和棟も、あいな里山公園の交流民家と同じようなかたちの屋根に、改造を施して生まれた比較的新しい意匠です。茅屋根として葺き替えを前提に考えると、少々無理が生じているようにも思えるのですが、思うに、これらの意匠は葺き替えの際の古茅が、農業経営の中であまり重宝がられることが無くなった時期に生まれたのではないでしょうか。

肥料として古茅が必要でないのならば、茅葺き屋根は可能な限り丈夫に葺いて、葺き替えスパンを長くした方が良いということになります。場合によっては次の葺き替えの際の段取りの悪さに目をつぶってでも。
もし、そうならば、箱棟や大和棟を産み出した動機は、トタン巻きのカンヅメ屋根に踏み切るのとかなり近いものだったと思うのですが・・・

茅葺き(に限らないけれど)民家は、つくづく時代に合わせて柔軟に姿を変えていくものなんですねえ。その姿を美しいと感じるのも、長い長い年月をかけたトライアンドエラーの成果だからなのでしょう。
もっとも、今我々が目にしている中にも、エラーが混じっていないという保証はありませんけれど。
sh@