2006年03月26日

●060326 トタンもスタイルのひとつ

瓦や金属板やが開発されたり、木を板に挽けるようになる以前には、広い面積の屋根を覆うための材料としては、一般的に土や毛皮の他には茅葺きしかありませんでしたから、茅葺き屋根の民家は世界中で見ることができます。
しかし、茅葺き屋根をすっぽり金属屋根で覆ってしまうというのは、おそらく日本だけでなされているのではないでしょうか。

ヨーロッパの茅葺きは茅材の根元を屋根の外側に出して厚めに葺く、「真葺き(まぶき)」という葺き方をする点で日本のそれと近いものがあるのですが、当地では茅葺きでもスレート葺きでも、あるいは石やタイルや金属板で葺かれていても、屋根の勾配や下地構造にたいした変化はありませんので、茅葺きの葺き替えをしたくなければ、気軽に他の材料を選ぶことができてしまいます。わざわざ被せる必要はありません。
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これはイギリスの例ですが、茅葺きに戻すのも簡単で、茅葺きが他のマテリアルと変わらぬ選択肢として用意できるという点で、うらやましくもあります。

世界的には茅材の穂先を外に出す、「逆葺き(さかぶき)」の方が多いと思いますが、逆葺きは薄く簡単に葺いて、傷むのも早いけれどまたすぐに葺き替えたら良いという考え方が普通なので、茅葺きをやめるときにはやはりわざわざ被せたりせずに、別の材料に取り替えてしまいます。
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これはバングラディシュの例ですが、中央奥が従来の茅葺き、手前左右がトタンに葺き換えられた屋根です。トタンに換えられた屋根の中には、茅は入っていません。

茅葺きが農の営みの中で必要とされず、金属板を現金で購入する方が自然な行為であった時代に、茅葺き屋根の遮熱性能や外観を保つための工夫として、日本独自に発達した「カンヅメ屋根」は、「ある時代を代表する民家の様式」として認められてもよいのではないでしょうか?

民家を滅び行く過去の遺物ではなく、今も生きづつける文化として捉えたならば、そのような考え方にも違和感は無いと思うのですが・・・
sh@