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2006年06月06日

●0606 屋根めくり(3回目)

最後の屋根めくりです。
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棟収めは地域による違いの顕著な箇所なので、棟の解体に際しては前回のやり方を参考にできるように、検証しながら行います。

僕が現場入りした時点で雨養生の瓦は既に取り外されていましたが、休憩に縁側をお借りしている、境内に移築された旧内海家住宅の棟と同じように、瓦が重ねられた棟だったそうです。
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これ、最近どこかで見たなと思ったら、ナショナルトラストのシンポジウムで茨城の八郷を訪ねた折、当地で見たものと同じ収め方でした。

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これが常陸風土記の丘公園にあったものです。基本的に同じ手法ですね。

屋根をめくって行くと、葺き方にも関西では見られない特徴がありました。
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角の部分を独立してつくるのではなく、平面を押さえた竹をそのままコーナーに沿って曲げて、同じように押さえています。また、角の両脇を足場を吊る縄で仮押さえして、その痕跡が残っています。

こちらは常陸風土記の丘公園で見学させて頂いた現場の写真。びっくりするくらい、全く同じ手法です。
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つまり、鎌倉もいわゆる「筑波茅手」の活躍の舞台だったのか・・・いや、地元相模の屋根屋さんがいなくなってから、呼ぶようになったと考えた方が自然かな・・・

参考までに、これは美山での角付けの様子。
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コーナーの部分を先につくってから葺くので、押さえの竹は角の部分は押さえません。

これは藍那の交流民家。
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角のエッジを立てれば、コーナーまでしっかりと固めて葺くのは難しくなります。
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関西では面や角をきっちりと出すことに気を配ります。

関東の屋根は素晴らしい装飾に注力し、面や角のバランスや仕上げには、ある程度おおらかです。
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コーナーも押さえ竹でまわり込むようにして仕上げれば、角のエッジを立てるのはちょっと無理です。
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ちなみにイギリス南部の伝統的な茅屋根の葺き方や仕上げも、筑波流と同じような考え方をしています。
つくづく日本は多文化国家だなあ。

下地の上には屋根を葺く前に、10pほどの厚さに茅が敷き詰められていました。
P1020754.jpg
主に葺き材の先が下地の下に入り込むのを防ぐためですが、特に下地も傷んではいないのでそのままにしておきました。

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コメント

角に竹を曲げているとは?風に強くなりますか?

山梨県道志村は、相模職人(会津系)と忍野職人(甲州流←こういう呼び方はないが便宜上に)の壮絶な茅葺き合戦が繰広げられました。
会津系でも南会津系で丸隅に葺いていたようです。

写真が解りにくくて申し訳ありません。L字(というにはアールが緩やかですが)に曲げた竹で、角の部分も同じように押さえています。
角を特別に固めないので関西の屋根屋には、風に弱くなりそうに見えますが、材料や葺き方の工夫で心配はないからこそ、この工法が一般化しているのでしょう。そのような工夫は職人同士でもなかなか見えにくいものですが。

渡りの職人と地元の職人が、各地で互いに影響し合い切磋琢磨していったのですね。
関西だと広島の「芸州屋根屋」が出稼ぎに来て、影響を及ぼして行った痕跡が認められます。しかし、本家の広島の茅葺き職人の系譜は絶えかけてしまっているそうなのですが、そのような中マイミクの青原さとしさんは、芸州かやぶきの取材を重ねられているそうなので、いつか成果を拝見したいと思っています。

青原さんが撮影している現場を拝見したことがありますよ!

その現場とは、違いますが「芸州屋根屋」のさし茅風景です↓
http://www.geocities.jp/runarunanotabi/siwahorihaima/2005.10siwahori.html

いやあ、すごい勉強になります。
ありがとうございます。
オモシロイもんですね、確かに、茅葺の形が各地異なるのを見かけますけども、このように比較解説しておられるのは専門家ならではですね。

ルナルナさん、写真をありがとうございます。
大きな屋根ですね。
棟のトタンの上に化粧として、茅を並べてあることに興味を覚えました。
個人的には杉皮は近年になってから使われるようになった、比較的新しい素材だと思っているのですが、この地域では茅だけの棟収めから、杉皮を経る事なくトタンが使われるようになったのでしょうか。

ichide!さん、コメントありがとうございます。
僕も地元以外の屋根に関しては専門家ではないので、或いは見当違いな指摘をすることもあるかもしれません。
ですが、間違いに気付いたらその時に訂正するようにして、現場で気付いた事は新鮮なうちにご紹介しておこうと思います。

皆さんから頂けるご意見やアドバイスが大変参考になりますので。

こんちわ!
写真の「棟のトタンの上に化粧として茅を・・・」と言われていたのは、トタンではなく紙製の防水シートのルーヒングです。職人さんは棟全体をやり変えたかったようですが、家主は今回そこまで要求しませんでした。一番上の棟竹を交換しただけで、あとは針金で締め直されていました。
この地区は、ほとんどワラ棟から箱棟へ移行しています。杉皮も一時使われたようですが。
もう少し北部へ行くと杉皮がよく見られました。
また、西中国山地一帯の置き千木をされている棟には、トタンの上に置き千木していました。私が見かけた時はすべてそうでしたね。
不鮮明な写真ですが参照してください↓
http://blogs.yahoo.co.jp/runarunanotabi

ルナルナさん、コメントありがとうございました。
対応が遅れてすみませんでした。

なるほど、ルーフィングでしたか。
いずれにしても茅を並べて隠すという、茅仕上げを良しとする文化が興味深く思います。

北山杉に囲まれて暮らしていると忘れてしまいそうですが、杉皮が豊富な地域というのは意外と片寄っているものなのかもしれませんね。
民家は身近な材料でかたちづくられていますが、それは地域だけではなく時代によっても変化するものですし。

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