●1026 筑波山麓にて
鎌倉滞在中に下見に来ていた、重要文化財 坂野家住宅の薬師門を葺き替えに茨城県にやって来ました。
6月に予定していた通り、タナカさんが講師をされる社団法人全国社寺等屋根工事技術保存会の茅葺師技術現場研修会として葺き替えを行います。
研修生は僕の他に美山から2人、神戸から1人。
偶然、普段仕事をしている顔ぶれと同じになってしまい、今ひとつ新鮮みに欠けるのは致し方なし。その分互いに気心は知れています。
昨日は資材の搬入と、前もって鳶さんが組んでくれていた作業足場を、茅葺き作業に合わせてアレンジし直したりで暮れてしまいました。
今朝はタナカさんの手配されたススキが奈良の曽爾高原から4トン車で届きました。
門とはいえ結構大きいので、これに加えてさらに2トン車大盛り一杯の茅が必要です。
研修なので、地元の職人さんの葺き方を調べながら時間をかけて古屋根の解体にあたります。
使っている材料はススキの他にシマガヤ、ヨシ、稲ワラ・・・ あれ、何でもあり? 葺いた時期も場所によって差があり、どうやら何度も補修を重ねて来た模様。
おまけに例のカブトムシ?の幼虫が大発生していて、屋根の傷みもかなりのもの。
周りを立派な屋敷杜の高木に囲まれているせいもあると思います。
とにかく、傷みが予想以上に酷いのと改修によりかなり変更を受けているため、時間をかけてめくった割には得られた情報は多くはありませんでした。
こちらの葺き換えられたばかりの主屋も参考にしつつ、これまでの経験と気心の知れたもの同士のチームワークで、良い屋根を葺いて行きたいと思います。
・・・できることなら、こちらの屋根を解体してみたいなあ・・・
などと言っては叱られてしまいますけれども。
門の屋根を解体して行くと、カブトムシの幼虫に混じってこいつが何匹も出て来ました。
晩秋にはアシナガバチが、乾いた茅屋根の中に潜り込んで冬眠しかけている事が良くありますが、スズメバチは初めて。勘弁してほしい。
茅葺き屋根の中は、本来なら極度に乾燥しているのであまり生き物は棲んでいません。
こんなに虫だらけの屋根はめずらしいです。
それだけ傷みやすい条件にあるという事かもしれないので、葺き替えにはいっそう気を遣います。
コメント
屋根屋さんのブログを拝見するようになって、今まで何気なくあ〜茅葺きだと思っていた茅葺きが違ってみえてきました。
日本のなかでもその風土の違いによって形が変わっているというのは当然なことなのに、知識がないとそんなこと思わず過ごしてしまうのですね。
使ってこそ意味がある。
使わないとどんどん悪くなり、いらなくなる。
生活に根ざした茅葺きであってこそ、意味があるのですね。
Posted by: ceico | 2006年10月27日 19:59
な〜るほど。研修ね。
結構立派な建物ですね。
カブトムシの幼虫は売れそう…(笑)
Posted by: よっすぃぃ | 2006年10月28日 00:04
こんにちは。Mixiでお世話になってるきくです。
いつもひっそりと覗かせてもらってます♪
はてさて。
カブトムシの幼虫が出てくることは聞いてましたが、まさか蜂が出てくるとは!
…蜂も冬眠するんですね。初めて知りました。
Posted by: きく | 2006年10月28日 10:06
皆さん、コメントありがとうございます。
出張中はレス遅くて済みません。鎌倉以来のマクド通い・・・
>ceico さん、
仰る通り、茅葺きは使ってナンボのものだと思っています。
そのためには現代の世の中において、茅葺きが必要とされる意味付けや仕組みをきちんと整えて行く事が大切です。
文化財も単に昔の建物の剥製として保存するだけではなく、茅葺きという仕組みを活かした地域文化を継承する場となってほしいものです。
>よっすぃぃ さん、
そう、研修。 色々ありますわ。
主屋はちょっとすごいよ。本音を言えばあっちで研修してほしかった。
>きく さん、
晩秋に古屋根の解体をしていると、茅屋根の中に潜り込んで冬眠しかけているアシナガバチを、茅ごとつかんでしまってよく刺されてしまいます。
からだの色は夏のあいだの鮮やかなレモンイエローではなく、くすんだ茶色になっていて、寝ぼけているのかほとんど飛ぶ事も出来ないのですが、さすがに握りしめれば刺します。翌日とてもかゆくなります。
でも、スズメバチにさされるのだけは絶対にごめんですね。慎重に解体しました。
Posted by: shiozawa | 2006年10月28日 22:24
わわわわわ
カブトムシの幼虫!!!
そういえば
10月8日の美山にて持ち帰った栗、
その後うっかりほうっておいたら…
玄関に1匹、自室に1匹…ちいさいなにかの幼虫がはいでていて…掃除してる時ゴミかと思ってつまみあげて、そのふにゅっとしたやわらかさに
ゾゾッゾゾゾゾゾ!
尻餅つきましたw
とんだおみやげでした(><)
Posted by: にち | 2006年10月29日 21:29
にち さん、コメントありがとうございます。
園芸種ではない山の渋栗は、お店で買う大粒のものより味が濃くておいしいのですが、時折入り込んでいる白い虫を無視して食べてしまう、神経の太さが必要になりますねえ。
僕にはちょっと難しいです。
キャベツの虫食いくらいなら気にならないけれど、イチジクとかでもアリが入っていたりするとひるみますね。
まあ、最終的には食べてしまいますけれど。
Posted by: shiozawa | 2006年10月29日 22:22
こんばんは。
一緒に働いているハズのNさんと結構前からの知り合いです。
なんだか、このブログ見てると塩澤さんのイメージ、すごくイイですっ。
グッジョブ!!です。
(聞いてる話とちょっとちがう・・・?!)
屋根からの景色は屋根やさんの特権ですよね。そんな景色を撮ってる塩澤さん、ステキです。
常総市シゴト、頑張ってくださいね。
Posted by: 餃子7 | 2006年10月30日 00:07
餃子7 さん、コメントありがとうございます。
N.N.にはいつも世話になっています。
彼はタナカさんのところで修行を積んで来ていて、曽爾高原の茅の扱いにも精通しているので、今回の現場でも色々と教えてもらっています。
それにしても、いったいどんな風に話していたんだか・・・だいたい想像はつきますけれど w
屋根からの眺めは確かに屋根屋の特権です。
飛んでいるトンビの背中が見えますから。
なるべく楽しんでもらえるような写真を撮るように努めて行きますので、お暇な時にでもまたいらして下さい。
Posted by: shiozawa | 2006年10月31日 22:49