●1028 軒付け
筑波の屋根を特徴づけている、軒の部分の解体に取りかかります。
水平に大きく張り出した軒を支えるために、鎌倉の覚園寺でも使った「力竹」が入っています。
軒が付いた状態でも茅材が随分急な勾配で屋根に置かれています。
関西では軒に先細りの材料を使って、軒が付け終わるまでに茅材を置く勾配をなるべく水平に近づけるように努めるので、これには驚かされました。
軒を層状に積み重ねて美しい縞模様をつくる筑波流の茅葺き屋根。
このシマシマはバウムクーヘンのように一枚ずつ剥がして行く事が出来ました。
水切りになる軒端の部分を取り去ると、そこから下はそれまでとは明らかに別の職人さんの手によって、より丁寧に収められていました。
おそらく前回の葺き替えの際にもここより下の軒は傷んでいなかったために、取り替えることなく残されていたものと思われます。
軒を水平に張り出そうとすれば薄くなるので、丈夫に葺くためには難しい技術が必要ですが、上手に葺かれていて茅材の勾配もここでは不自然な程ではありません。
今回も特に傷んだ箇所を除いてこの軒は残して、その上に重ねて屋根を葺いて行く事にしました。
軒のコーナーを押さえるための、平たい割竹を曲げるための目からウロコな工夫。
どうなっているか判りますか?
押さえの竹に使われているのは割り竹だけではなく細めの丸竹も。
タナカさんが「マンダケ」と呼ばれたシノタケかネマガリタケと思われる竹は柔らかく、曲げても折れる事は無いようです。一方で固いマダケは折れないようにねじって曲げてあります。
竹を茅葺きの材として使いこなす技術の発達を垣間見る事が出来ます。
関西流の葺き方だと、コーナーの部分に独立して「角付け」をして固めたくなりますが、筑波のやり方に習ってあらためて軒端の水切りを付け直して行きます。
茅材の奥が起きて勾配がつきすぎないようにしながら、手前の軒の端になる部分をしっかり固めなければならないというのは、単純に考えると相反する条件を満たさなければなりません。
取り付ける場所を考えて一束ずつ茅を選び、束ごとのクセを活かしながら上手く収まるように気を遣って軒を付けて行きます。