2007年01月18日

●0118 刈込み仕上げ/屋根鋏の話

棟上げの式もすんで、本格的に刈込み仕上げに入ります。
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棟の方から順番に足場を外しつつ、軒の方へ向かって下りながら専用のハサミで屋根の表面を刈込み、整えて行きます。
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刈り揃えることで屋根の細かい凹凸を無くし茅そのものの断面も整えて、見た目に美しく水はけの良い、丈夫な屋根に仕上げます。
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しかし、それは茅の最も丈夫な根元の部分を捨ててしまうことにもなりますから、あくまでも刈り取るのを最小限に留められるように、葺いて上がって行く段階で屋根の平面がきれいに出来あがっていることが大切です。

刈り揃えた茅の断面がシャープに保たれるように、刈込みハサミは日に何度も研いで切れ味を保ちます。
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切れないハサミは体の負担になり集中力を切らすばかりではなく、刈る時に茅を潰すようなハサミでは、刈込みをする意味がありませんから。


ハサミは茅葺き屋根用に専用のものを、鍛冶屋さんに特注して打ってもらいます。
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用いる屋根の部分や用途によって大きさやかたちの異なる何本かを使い分けます。
さらに職人各自がそれぞれに使い易いよう工夫し注文するので、武相荘のような現場には様々なかたちのハサミが集まります。

しかし、現在この屋根ハサミを打って下さる鍛冶屋さんが少なくなってしまっています。
僕の弟子入りした十数年前には、美山の周りにも屋根ハサミを打てる鍛冶屋さんが何軒かありましたが、次々と廃業されてしまい、今では熊本と新潟に一軒ずつの鍛冶屋さんに頼っています。
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もともとハサミは2枚の刃物を組み合わせる手間がかかるうえ、職人の使う専用の道具は市場も小さくたいしたもうけも見込めないのに、口やかましい顧客ばかり相手にすることになりますから、余程腕に覚えのある(そして口は悪くとも心優しい)鍛冶屋さんでなくては、手を出すのをためらうのも仕方の無いことだとは思いますが。

茅葺きに限らず伝統的な技能の世界では、担い手の職人がいなくなる前に、職人の使う道具をつくる職人がいなくなるのではないかと、とても心配しています。