●0614 差し茅/カンヅメ屋根の維持
雨の季節が近づき、路面のカエルに気を取られながらの、危険な運転が続きます。
今日は、カーブを曲がったところに道路を横断中の亀(クサガメ?)が!
咄嗟に跨いで躱しましたが、亀の方は直前で頭と四肢をひゅっと甲羅にしまっていました。
そんなことしても、意味ないのだけれど・・・
僕はライフスタイルとしての茅葺きを広めて行くことで、絵空事ではない人と自然の共生する社会の実現を目指しているのですが、人間と野生動物の生活域が無理矢理に重なると、ロードキル(Road Kill)が頻発することになります。
おそらく産卵のために川から上がって来たのであろう亀を、道路の反対側まで運びながら色々と考えさせられました。隣人との付き合い方がとても下手になっているように感じます。人間の方が。
現場の方は屋根を合わせてから後は順調に差し茅を続けて、今回修理するアリゴシから下はだいたいかたちになりました。
手前の方丈の方は傷みが酷くて、正直「葺き変えた方が早い」と思わないでもありません。
しかし、たとえ葺くのと変わらない程の手間がかかっても、差し茅にすれば材料は節約できます。今回は方丈は差し茅で凌いで予算を圧縮する方針なので、職人としてやるべきことは決まっています。
ところで、美山町内の現場から少し離れたところでは、トタンを被せられたカンヅメ屋根に、さらにトタンを被せるという工事が行われています。
住む人の生活や社会の変化により、ススキやヨシや麦ワラが屋根葺き材として合理的ではなくなったときに、より合理的な屋根材として「茅葺き屋根」を葺いて来たトタン板ですが、実はそれほど耐久性に優れているというわけでもありません。
施工後再塗装必要になるまでの期間は、製品それぞれの塗膜の性能如何によりますが大体10年〜20年くらいのようです。塗り直しは吹き付け塗装でおこなわれるので、その後は5年〜10年毎に行う必要があります。
それでも、自給自足的な伝統的生産システムが崩壊して後、住人の生活がより大きな経済システムの中に組み込まれてからは、お金を出せば買えるということは、安定的に屋根を維持して行くために大切なことでした。
また、茅葺きのサイクルが伝統的な生産システムに組み込まれていた時には、古屋根の茅くずが貴重な資源であったため、茅葺き屋根は必ずしも長持ちする必要はありませんでしたから、長持ちさせるための葺き方も十分には発達しませんでした。
現在美山を中心に葺かれている茅葺き屋根は、耐久性の面で金属による覆いをされた場合に劣ることは、決してないと思っています。
さらに物理的にも情報としても大きく広がった個人の生活圏に合わせた、新しい茅葺きのサイクルを確立していくことで、トタン板よりも茅のほうが合理的な葺き材だという環境を、これからは用意して行くことが出来るはずだと考えています。