2007年07月31日

●070731 建前

美山では随分と久し振りに目にする快晴の青空の下、大工さんたちが息を合わせて振るうカケヤの音が響いています。
施主の普段の行いはあまり感心されない筈なのですが、大工さんたちの心がけが良かったおかげでしょう。
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皆さんありがとうございます。お世話様でした。
僕は現場のお盆前進行が押しているので、ちょっと覗きに来ただけでしたが。もっとも施主なんか居ても、うろうろするだけだったでしょうけれども。

夕方には棟札、墨壷、差金にお神酒、ご洗米、盛塩を供えて、大工さんに上棟式を取り仕切って頂きました。
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とは言っても餅撒きは無し。近所に子供も少ないし、すぐ横が谷川で危ないですし。
でもご近所の方が次々とお祝いを持って来て下さり、夜にお礼のご挨拶にまわった際には「木槌の音が良かった、良えもんやなあ」とも言って下さいました。

基本的に金物は使わず、大工さんの手刻みによる材を組み合わせて建てられています。
僕が大工さんに示したのは図面と模型、そして予算だけでなのですが、要所には手間のかかる車知(シャチ)栓継ぎで、松材の長物(チョウモン/差物)が組まれています。
贅を尽くした旦那仕事ではなく、はっきり言ってしまうとローコスト住宅なのですが、押さえて置くべきところからは一切手を抜かないという大工さんの姿勢を示して頂いていると思っています。
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まあ、予算は限られているのでその分抜くところは抜きますが。
一般的なローコスト住宅とは、多分そのあたりのバランスが随分違うのではないかと思います。

さて、いよいよ屋根を葺かないことには、大工さんも左官屋さんも仕事を進められなくなりました。
屋根屋の段取りが悪くて申し訳ないです。胃が痛い・・・
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あと、この現場を使っての「カヤマル'07」企画中です。
こちらも実施の詰めが遅れて、未だにきちんと告知できずにいますが。
詳細が決まり次第に本ブログでも参加を募りますので、よろしくお願い致します。

2007年07月30日

●070730 上棟前夜/アプローチの石垣

「何としても7月中に棟上げしておきたい」という大工さんの気合いが叶って、明日大安吉日の棟上げに備えて材が組まれ始めています。
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二次元の図面からついに立体に立ち上がって来るのを見ると、感慨もひとしおです。
無事に屋根が収まるかどうか、不安も立ち上がって来ますが・・・

後回しにされていたアプローチの整備が、棟上げのためにレッカーを据える地行と絡めて、一部行われました。
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この石垣は既に孕んで崩れかけていたので、いずれにせよ積み直す必要があったのですが、石垣も茅葺きもこのようなプロの手によらない、かつての「百姓の百の技のひとつ」として積まれたであろうもの方が、現在ではある意味で却って貴重な技となってしまっているような気がします。
ここでもプロの石屋さんに頼むのは大層ですし、かといって自分で積むことも出来ず、頼むあても無く手をつけるのを躊躇していたのですが、バックホーのオペレーターのおじさんがあっさりと(スロープの部分)積んでくれました。
ユンボが通れるくらい、結構しっかりしています。

組み立てを待つ柱のほぞ穴。
金物を用いない在来技法の継手を見るにつけ、あらためて大工さんの技能に感心させられます。
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建前が終わるまでのひとときだけしか見れませんが、トーテムポールのようでかわいらしい表情だと思います。

2007年07月29日

●070729 男鬼での差し屋根

山城茅葺屋根工房ヤマダさんに声をかけてもらい、滋賀県立大学人間文化学部有志「男鬼楽座」による、廃村「男鬼(おおり)」再興の取り組みの一環としての、集落の茅葺き民家の屋根の差し茅をお手伝いしに行って来ました。
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名神高速の彦根I.C.を下りて山間に分け入って行くと、男鬼方面から流れ出してくる川の水が、まるでガラスのように透明なことに驚かされました。
玄武岩質の美山では川底の石が黒く泥っぽいので、川の水質が良くてもこれほどの透明度は得られません。
水が青く見える感じは鍾乳洞の地下水みたいだと思っていたら、近辺はやはりカルスト台地で、川底に敷きつめられた玉砂利も石灰石でした。

山口県の秋吉台などと同様に、ここでもカルスト台地の緩やかな尾根筋はかつては茅場として利用されていたそうです。
茅刈りの行われなくなって久しい現在では、それらの尾根も雑木の林に遷移してしまっていますが、男鬼楽座の活動として再び茅場に戻そうという取り組みもなされていました。
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ハードウェアとしての茅葺き民家の保存に止まらず、周辺環境の整備に繋がる営みを取り戻そうとしていることが素晴らしいと思います。
茅葺屋の目指すソフトとしての茅葺きの再興と通じるものも多く感じていて、今後の活動からは目が離せませんし、もちろんお手伝いできることがあれば微力ながら力になれっていければと思っています。

2007年07月27日

●0727 葺き上げ/茅20〆

屋根裏から搬出した茅は、美山の〆である「2間縄締め」で20〆にもなりましたが、葺き始めるとあっという間にぺろっと平らげてしまい、追加の茅が運ばれて来ました。
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ところで、この茅の流通単位である「〆(シメ)」が、地域によって全然違うので苦労しています。
美山の2間〆は、神戸などで使われている5尺〆だと7〆〜9〆になります。ばらつきがあるのは5尺〆と言っても実は色々あるためで、流通単位がこんな有様では、これから私達の生活圏の拡大に相応の範囲で茅を流通させようとすれば、とんだ足枷となりかねない懸念があります。

ここまで屋根を葺くのに結構な量の茅が必要だったことがお解り頂けるかと思います。
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やはり茅葺き屋根は一度に葺き替えるものではなく、少しずつ刈り貯めた茅で、傷んだところを治しながら暮らして行くものだと思います。今回の工事範囲がマキシマムかと。
住人の方にそのローテーションの管理に習熟して頂ければ、茅葺きの維持管理をそれほどの負担でもないと考えて頂くことも出来ると思うのですが・・・

2007年07月26日

●070726 土台

基礎の上に土台が回されました。
土台にはヒバを使っています。
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北東北や北陸では建材として重宝されるヒバですが、削ったときの独特の匂いが強いせいか、大工さんのお話しでは京都では材の品目として流通しておらず、立米売りのヒノキの山に、天然生えのものが混じっているくらいだそうです。
シラス干しに混じっている小さなタコとかカニみたいな感じでしょうか。

ヒバはヒノキの異物扱いなので、ヒバが多く混じっているヒノキのひと山は安くなるのだとか。
大工さんには早い時期からなるべくヒバ混じりのヒノキを買うようにしてもらって、土台用のヒバを貯めておいてもらいました。相対的にどこかのお宅に使われたヒノキも安く買えた訳ですから、結果的に上手く収まったと勝手に喜んでいます。
大工さんの刻み場にはヒバを貯め込む事になって、迷惑をかけてしまいましたが・・・
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土台の上に置いてある板は、茅葺きの棟収めに使うウマノリを作った際の端材をスライスしたものです。

茅葺き屋根のてっぺんで風雨に曝されるウマノリは、堅く水に強いクリの木で作ります。
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水廻りとなっている北側下屋部分の土台で、基礎とのあいだに挟んで土台を浮かせるパッキンとして使いました。

刻み場では大工さんたちが部材の仕上げにかかっておられます。
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スギ、ヒノキ、アカマツ・・・適所に使い分けられた材が、ノミとカンナを使う大工さんの手によって柱や梁に姿を変えて行くのは、何度見ても不思議な風景です。

2007年07月25日

●0725 棟の解体

お施主さんのご夫婦による手入れの行き届いた現場の周辺には、たくさんの小さな生き物たちが暮らしています。
谷川の堤で仲良く昼寝中のシマヘビとアオダイショウ。
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近づいても体を触られるまで起きない程のんびりした様子は、普段から人にいじめられることなど無いからでしょうか。

葺き上げが捗ったので、続きを葺くために早くも上半分の古屋根を解体しなければならなくなりました。
まず、棟を解体します。
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棟飾りの「ウマノリ」は、昔はその重さで棟を押さえていただけあって、こうして近くに寄るとかなりの大きさ。栗の木で造られているので重さも相当です。

今は針金で引っ張りウマノリで棟を挟んで止めているので、ここまで大きな材を使う必要は無いのですけれども、棟は地域性をもっとも良く現す茅葺き屋根の顔ですから。お施主さんの気持ちとしても、「美山の屋根」にはやはりこれが無いと、ということですね。
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急に現場の人数が減ったので、でっかいウマノリを下ろすのは大変でしたが。

古茅も下ろしてから下地の竹を結わえている縄をかけ直し、下地の補修が済みました。
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あとは棟までひたすら葺いて行くのみです。

2007年07月23日

●0723 斜め軒付け/メガヤ

お施主さんが用意されて屋根裏に保管されていた茅の中に、3束だけメガヤが混じっていました。
手前の束がそれで、奥のススキと比べてみて下さい。
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美山で茅屋根を葺くようになって10年以上過ぎましたが、古茅でないメガヤを見たのは初めてでした。
かつてメガヤを育てていた標高の高い尾根筋の茅場は、美山ではもう絶えてしまったと思っていました。

断面を見ると穴が開いていて水切れが良く、合掌集落で有名な五箇山でかつて主流であった「コガヤ」のように、耐久性があると言われています。
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3束だけでしたからまとまった茅場があるという訳では無いのでしょうか、生えている姿を一度是非見ておきたいものです。

さて、屋根の方は今日までの3日間、「きたむら茅葺き屋根工事」改め「美山茅葺き株式会社」から、応援に来てくれていたので随分捗りました。
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屋根の大きさは決まっていますから、やたら屋根屋の人数を増やせば良いというものではありませんし、「テッタイ」さんの人数とのバランスも考える必要もありますが、美山サイズの屋根だと両角を付ける2人+真ん中に2人というのはなかなか恵まれた編成でした。

先方の現場の合間の、忙しい時間を割いて手を貸してくれました。ありがたい。
おかげで手間のかかる「斜め軒」の部分が仕上がりました。
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まあ、もっといてくれても良かったのですけれど w