●1213 下地組み
「あいな亭」と名付けられて里山公園に再生されるこの建物は、もともと神戸市内で住宅として使われていた茅葺き民家でした。学生時代に調査で解体される前にも訪ねたことがあるので、再会することができて感慨もひとしおです。
乱雑に丸太を組んでいるだけのようにも見えますが、藁縄でしなやかに緊結していくとその強固なことは、百年以上に渡ってこの家を守って来た実績が、証明済みです。
丸太の位置や向きを1本ずつ手作業で整理しながら縄で結束して行くと、やがて美しい小屋組の構造が現れて来ます。
剥き出しのままで見て美しく安心感も感じられるのは、力のかかり方に無理の無い構造体であればこそだと
思います
。
傷みの激しい部材は新しいものに交換しますが、新補材には古材との色合わせのために古色が塗られます。
しかし、茅葺き民家は建てられたときで完成するのではなく、草の育つ自然のリズムで暮らしながら育てて行くものです。
「造り続ける公園」という里山公園のコンセプトも、テーマパークのように里山の景観を展示するのではなく、人の暮らしの場としての里山を再生することを目指しているはずなので、建物にも作り物の色を塗らずとも、使いながら時間をかけて良い色を出して行けば良いのにとは思いますが・・・
などと煮え切らない想いも抱えつつ1日の仕事を終えて屋根を下りると、タングステン光に照らされた茅葺き屋根の小屋組は、色など関係なく驚くほどきれいだったりします。