あいな亭を一緒に葺いていた、「飛騨かやぶき」のスギヤマさん
の現場に応援にやって来ました。
岐阜市内の縄文遺跡公園に建つ復元縦穴住居の葺き替えです。
稲作の一般化していない縄文時代にはワラ縄はありませんから、「ネソ」と呼ばれる雑木を曲げて屋根下地の構造材を組んで行きます。
ネソはスギヤマさんの地元の北陸地方では伝統的な建材として用いられていて、今回は応援と言いながら、その扱いに関しては日本でも指折りの屋根屋さんであるスギヤマさんに教えを請いに来たようなものです。
ネソの正体は早春の山を彩るマンサクの若木です。
伐り出したあとしなやかさを失わないように水に漬けてあるネソには、間違いなくマンサクの花が咲いていました。
木の内部が凍ったままで曲げると折れてしまうので、まず焚き火で樹皮が焦げて落ちるくらいまで炙ります。
さらに全体を絞り上げるようにねじって、木の繊維をほぐしておきます。
慣れていないと力のかけ方がわからず、からだ中が筋肉痛になってしまいました。
木のねじれが戻ろうとする力を利用して丸太を結束して行きます。ネソは乾燥が進むにつれてより強く締まって外れることは無いそうです。
縄文時代まで遡らずとも林業を生業として栄えていた飛騨地方では、稲作の副産物であるワラ縄よりもマンサクの若木の方があたりまえの材料でした。
外から見ただけでは判らなくとも、茅葺き屋根を支える技術や材料は実に様々です。現代の茅葺きを支えるに相応しい技を見極めるためにも、永く伝えられて来たそれぞれの技術に関する理解を、少しでも深めて行きたいと思います。