2008年05月17日

●0517 開腹手術(屋根を)

先に下見を済ませておいた、「癒しの森」という公園に移築された民家の屋根を修繕に、石川県小松市にやって来ました。
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元々は広い砂浜と飛砂防止のクロマツ林がどこまでも続く、石川県南部の海岸部に建てられていた農家だそうです。

限られた予算枠の中で、差し茅による修繕をとのことでしたが、下見に来た時から軒周りなどに不自然な傷み方をしている箇所があるのが気になっていました。
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茅葺き屋根は本来なら表面だけを雨水が転がるように流れ落ちて行くので、葺かれた茅は屋根表面に少しずつ出ている部分だけが順に朽ちて、屋根全体が均等に薄くなって行くのが理想です。
葺き方や材料にムラがあったりすると、そこだけ傷みが進んで溝になってしまったりします。この屋根には溝は無いのですが、茅材がススキのかたちもわかるほどあらわになっているのは不自然です。

差し茅は表面から減った分だけ葺き足すような工法なので、屋根の内部に異常のある疑いを抱えたままでは行えません。
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思い切って傷んだ箇所の古屋根を解体してみると、何と表面は茅の形を保っているのに、内部は完全に土のかたまりになってしまっていました。
雨が茅屋根の表面を流れずに、染み込んでしまっていたためです。
材料の茅材が悪かったり、葺き方に無理があったり、カブトムシの幼虫が屋根の茅を食べてしまったりすると、このようなことが起きることがあります。

傷んだ部分は全て撤去して、古屋根の材を活用しつつ新しい茅材で屋根表面を作り直す、「下げ葺き」という工法を採用することにしました。
差し茅のように材料を節約しながら、葺き替えのように新しい屋根をつくれるのが特徴です。
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これからの季節「弁当忘れても傘忘れるな」な越前の天気に配慮して、元請けのスギヤマさんがシートを張ってくれました。
おかげで屋根の上にもかかわらず、日陰で涼しい思いができます。