2008年05月20日

●0520 越前の茅葺き屋根

越前の茅葺き屋根は、見慣れた関西のそれとは当然色々と違っています。
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古屋根を解体して驚いたのは、ススキが茅刈りした束のままで使われていたこと。
「茅で屋根を葺く」方法に唯一の正解はありません。とはいえ、僕にとって屋根屋修行の最初の頃は、丸い茅束を屋根の上でいかに平らに均等に伸ばすかに費やされていたので、いささか驚かされました。

外見的に最も特徴的なのは、「こうがい棟」と呼ばれるこの棟の収まり。
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棟が風で飛ばされたりしないように、屋根から突き出た丸太に縛り付けておくという何とも豪快な収め方で、白川郷なども含めた能越地方の茅葺き屋根の特色です。

現場のお隣には白山麓から移築された重文の民家も建っています。最近では文化財でも形だけなぞっている茅葺き屋根もある中で、こちらはオリジナルの材料と工法に徹底的にこだわっていて、こうがい棟の様子がより良く解ります。
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茅を並べた上に丸太をどん!と置いて、屋根の途中から突き出た丸太(表裏は繋がった1本の丸太で、屋根を貫通していることが多いです。だからかんざしに見立ててこうがい棟)に、落ちないように縛り付けておきます。この屋根の場合は縛り付けるのも縄ではなく移築前から使われていたネソ

小屋裏の丸太同士を結束しているのも、やはり縄ではなくネソ。
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水田の多くはなかった山村では、生活道具の素材や飼料として貴重なワラの縄より、山で採れるマンサクの若木の方が使いやすい材料だったのでしょうか。

茅葺きの下屋の庇が石置き屋根というのも始めて見ました。
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こちらは風の強い沿岸部の特色なのでしょうか。
茅葺き民家の豊かな地域性には、風土の特色を活かした先人達の暮らしが透けて見えるようで、興味が尽きません。