●0720 男鬼での葺き屋根
今年も滋賀県立大学人間文化学部有志「男鬼楽座」による、廃村「男鬼(おおり)」での茅葺き民家保全のお手伝いにやって来ました。
昨年差し茅で補修した反対側の屋根を、今度はめくって葺き替えます。
山城萱葺き屋根工事のヤマダさんの指導で、学生達自身が足場に上って屋根を葺いて行きます。
適切な職人の助力が得られれば、素人でも建築工事に参加できるのも、茅葺きの大きな魅力のひとつです。
屋根裏では針受けも学生達がこなします。
屋根裏で地面の上で、テッタイ仕事を率いるのはヤマダさんの新しいお弟子さん、ナカヤマさん。
今回葺き替えに用いた茅は、トタンを被せて葺き替え用の茅がいらなくなった、ご近所の茅葺き民家からの頂き物だそうですが、男鬼楽座では自ら茅場の再生にも取り組んでいます。
こうして実際に自分で葺いてみると、「良い茅」とはどういうものか良くわかるようになります。茅を刈るモチベーションもきっと高まるとことでしょう。
里山での営みの再興を試みる、地に足の着いた取り組みに触れて楽しい一日だったのですが、帰り道で目にする雑木林は昨年以上にナラ枯れの被害が広がっていて、気持ちが暗くなってしまいました。
地球温暖化とか酸性雨とか様々な要因が重なっているのでしょうが、本来生態系の中で木を伐る役割を与えられているはずの人間が、化石燃料に過度に依存して薪や炭として木を伐らなくなってしまい、森が年老いた木ばかりになってしまったことも、大きな要因の一つに思えます。
屋根を葺くために身近な草を刈ると、豊かな草原が生まれる茅葺きという仕組みを通すと、人の営みと他の生き物たちとの関わりがとても良く見えて来ます。
男鬼に蒔かれた種が、自然と人の暮らしが織り成す里山全体の再生へと育って行ってくれることを願いながら、帰路につきました。