« お知らせ | メイン | 0709 London »

2008年08月25日

●0708 Property

日本では滅びゆく郷愁の対象と見なされる茅葺き民家が、イギリスでは現在でも住宅として大切に使われています。
P6263257.jpg
「やはり英国は文化程度が高いね」とか仰る方もおられますが、僕の感じる両国の違いは「茅葺き屋根の葺き替えに銀行がお金を貸してくれるか否か」。

そう言うと大抵怪訝そうな顔をされるのですが、要は不動産として流通しているかどうか。
イギリスでは不動産広告にも茅葺き民家が、他の物件と同列にしれっと載っています。
img240.jpg
イギリスでも茅屋根の葺き替えは決してお安くはありません。日本の一部のような公的な補助金も一切ありません。

でも、古い建物は時間という厳しい審判を経たことで、何がおこるかわからない新築より信頼できると考えて、どうせお金をかけるならば新築よりも古民家に手を入れて、という訳です。
もちろん、イギリス人らしい骨董趣味もあるのでしょうが。
img241.jpg
手入れの行き届いた古民家を住宅として求める大きな市場があればこそ、銀行も茅葺き屋根に喜んでお金を貸してくれます。

ただし、イギリスの夏は乾燥して木が腐り難い、台風が来ない、地震も無い、と、老朽木造建築に優しい気候風土の国です。日本では「古い家は立派」と言われますが、実際には立派な家しか残れず朽ちてしまう、日本の環境とは少し事情が異なります。

イギリスにはこんな茅葺きの長屋もたくさんあります。かつての小作人長屋で、古民家ですがはっきり言って安普請です。
P6293450.jpg
茅葺きのワンルームですよ!良いなあ。
とはいえ日本の気候条件では、イギリスほど気軽に古民家に暮らす訳には行きません。余程しっかりした造りか大幅に手を入れないと、安心して住むこともできませんから。

でも、30年の住宅ローンを組むのならば、30年後に資産価値ゼロ、ごみとなりかねない新築を買うよりも、時を経たことで建物としての信頼が証明された、古民家をレストアして暮らす方がおトクだし、暮らしにも彩りが添えられるという考え方は、日本でもアリだと思います。

トラックバックURL

このエントリーのトラックバックURL:
http://www.kayabuki-ya.net/notebook/mt-tb.cgi/399

コメント

茅葺きのワンルームすごいです!
今回行かれたほうにあったのですか?

見てみたいです。

とはいっても今回は私はロンドンには寄らずヨークのみなので見られそうにないのですが・・・。


先日、宮津のシンポに参加した者です。

塩澤さんのお話、とてもおもしろかったです。
言葉に哲学が感じられて、視野も広くて、
久住章さんと似てはる!と思いました。

私は建築は素人です。
でも、環境のことなどを考えて行き着くところは
「住まい」ではないかと思っています。

茅葺や古民家、ストローベイルハウスなど、
今まで興味を持ってただ見ているだけでしたが、
なんとか私自身の暮らしに直結させていきたい!と
塩澤さんの言葉を聞いて思いました。

12月に神戸で開催されるイベントのお知らせ、
ぜひこのブログでご紹介ください。
(*^_^*)(*^_^*)

ceico さん、アネモネ さん、コメントありがとうございます。

>ceico さん、
テラス(Terrace)つまり長屋で、窓一つが一世帯分、DKと屋根裏のベッドルームなので、ロフト付きワンルームです。家族で住むにはさぞかし狭かったことでしょう。

イーストアングリア地方を中心に、結構どこにでもあるように思いますが、現在では仕切り壁を抜いて、規模の小さなものでは一軒家とされていたりするので、気付き難いもしれません。

日本でもこのようなつましい茅葺き住宅があれば、茅葺き暮らしも身近になると思うのですけれども。かつては貧しい人はそれなりの家で暮らしていたはずですから、小さな茅葺き民家もたくさんあったと思うのですが、日本の気候風土では土に還ってしまったのでしょうか。

イギリスでもマンチェスターからリンカーンを繋ぐラインから北では、茅葺き民家が急に目につかなくなります。このあたりで畑作から牧畜に切り替わるのかもしれません。コムギワラが手に入り難いからか、ヘザーで茅屋根を葺いていたそうです。もともと耐候性に劣る材料のうえ、北上するにつれ気候が厳しくなるので、茅葺き屋根は早くに廃れてしまったとか。

>アネモネ さん、
宮津では飛び入りみたいな形で、お時間を使わせて頂いてしまいました。少しでもお役に立つ事柄が紹介できていましたら幸いです。

茅葺きは建築であると同時に、「暮らし方」だとも考えています。と、いうか生業として茅葺きと関わるうちに、ススキやヨシやササにそう教えられました。
ライフスタイルとしての茅葺きは、切り口の多様さが魅力の一つです。茅葺き民家で暮らしているかどうかに関わらず、様々な立場からだれでも身近に参加できる文化です。

ススキが教えてくれた茅葺きの魅力を、多くの人に伝えられる言葉を探して、その魅力に触れられる機会を用意して行くことが、自分の仕事かな、と思っています。

時差の甚だしいブログで恐縮ですが、12月4日の神戸でのシンポもはじめとして、お知らせは最新の日付で更新しますので、またお時間のある時にでもお立ち寄り頂きチェックして下さい。

コメントする