2008年11月16日

●0924 壁土つくり

砂木の家では、いよいよ壁塗りが始まります。左官屋さんと昨年夏から寝かせた壁土を1年振りにひろげたところ、混ぜ込まれていた藁スサはすっかり溶けて、まるで髪の毛のようになっていました。
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そこに軒刈りででた藁スサを加え切り返して行きます。

さらに同量の新たな壁土が運ばれて来ました。
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古い土、新しい土、藁スサをブレンドして、壁に塗る土をつくります。

上が新しい土、下が1年寝かせた土。
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こんなに変わります。

良い壁を塗るためには、三者を良く混ぜ合わせることが肝要。
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土にさわっているうちに百姓の本性が目覚めたサガラは、いつの間にか裸足で手に鍬。

柔らかな秋の日差しの中で土と戯れています。
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土は重くて体力のいる大変な作業です。このうえ寒かったら果てしなく辛くなるところですが、素手素足で泥に触れる感触は、原始的な快感を呼び覚ましてくれます。
何としても暖かな季節のうちに壁塗りをしておきたかった理由の一つです。何とか間に合いました。

2008年11月12日

●0916 茅屋根竣工、土屋根準備

軒を全て仕上げて足場も解体。砂木の家の屋根がようやく竣工しました。
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長かったです。これほど手間取るとは。
本業のお仕事の傍らにご自宅をセルフビルドされる方々のすごさを、身を以て思い知ってしまいました。

さて、ようやく屋根屋の仕事が片付いたので、大工さんや左官屋さんは仕事の再開準備を進められています。
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小舞いのかかれた壁に土を塗る日程も決まりました。ついでに天井裏にも土を載せてもらうので、壁塗りに先立ちそのための準備を進めておきます。

載せた土がひび割れたりしないように、竹にワラ縄を巻き付けたものをこんな感じに配置しておきました。
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茅葺き屋根の天井裏に土を載せるのは関西では大和天井と呼ばれ、室内の保温や防災のために地域によっては広く普及しています。

作業のために照明を灯した屋根裏を小舞壁越しにロフトから見ると、教会みたいで何だか格好良いです。
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建物がその一生の中で一瞬だけ見せてくれる、小舞壁が光を透かす様子を楽しんでいます。
とはいえ、もちろん少しでも早く壁土を塗った方が良いには決まっていますけれども。

2008年09月15日

●0915 かなり燻しています

軒裏を刈り落として、いよいよ最後の仕上げに軒先を刈込みます。
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ヨシを使って丈夫に葺いてある軒先を刈込むのは、なかなかに骨が折れます。

さて、土間ではあいかわらず火を焚いています。
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大工さんが松食い虫で枯れたアカマツを1本分持って来て下さったので、筒切りにしただけで割りもせずに燃やしています。

細かくしなくても火がつくのは、大量に含まれるこの松ヤニのせい。
ただし、このために松を燃やした煙にも脂が多く含まれ、お風呂やストーブを焚いたりすると釜に付着して傷めるそうで、ウチにまわって来たという事です。
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茅葺きの屋根裏が煤けるのは全然困りません。防腐、防カビのためにはむしろ良いくらいなので助かります。

ところで、小舞だけとはいえ壁が出来ると煙が屋根裏にまわるようになり、茅葺き屋根から空気が流れ出る様子が良くわかるようになりました。
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まずオーソドックスなのは文字通り煙出しから排気されるとき。

ところが日によっては煙出しからは煙があまり出て来ずに、屋根全体から湧くように煙が噴き出す事もあります。
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屋根裏と外気の気圧差なのか湿度差なのか、このように茅葺き屋根が呼吸する事で内部は快適に保たれるのでしょう。
ただ、そんな時には屋根に火が着きやすくなってもいそうで、もらい火で延焼して集落が全焼してしまうような火事も、こんな時に起きるのかもしれません。

曇った日に煙の量が多いと、軒先から煙が下りてくることもあります。
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ただし、砂木の家ではまだ建具のない今でも、居室の中には煙はほとんど入っては来ません。
茅葺き屋根のベンチレーターとしての機能を生かして、適度な換気と暖かい居室を実現しようとする試みは、今のところ上手く行っているように思います。

2008年09月12日

●0912 軒刈り

砂木の家に戻って来ました。
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空はもう秋の空。日差しは強くても、乾いた心地よい風に吹くようになりました。

仕上がったところから足場を解体して行き、正面の軒を残すのみとなりました。
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茅葺き屋根を葺き下した縁側に腰掛ければ正面に見えるところなので、最後にもう一度集中して仕上げます。

造成から逃れた小さな庭に、ニラの花が咲きはじめました。
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以前は家の周りの土手の上に、背景に初秋の青空をレースのように透かしてたくさん咲いてくれていました。
建物が落ち着いたら、窮屈に過ごしながら待ってくれている草花が戻ってくれるように、庭も整えて行けたらと思っています。

2008年09月03日

●0903 燻しています

裏側の軒が仕上がったので、雪で足場が折れた時に割れた瓦を直してもらいました。
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やはり多少は雨漏りしていたようで、垂木や野地板に染みが出来ていました。

そうでなくても大工さんの建前のあと、1ヶ月も雨ざらしにされて松の梁にはカビが生えたりしているので、土間で端材を燃やして毎日燻しています。
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こすっても消えないカビが、燻してから乾拭きすると煤と一緒にきれいに取れて驚きました。

そんなことをしながら、ひたすら刈込む毎日です。
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2008年08月27日

●0827 茅葺きに窓

北側の大間は軒まで刈って下りたので、続いて軒裏を刈り落とします。
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屋根の真ん中に開いている穴は、2階ロフトの天窓です。窓枠の取り付けなど作業が残っているので、足場を残しておきます。

北側の軒はロフトの地窓の庇を兼ねています。
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実験的に穿った窓ですが屋根の強度や採光、視界は考えて葺いていたつもりでした。が、仕上がってみるとやはりというか不都合も出て来たので、思い切って1尺ばかり切り上げてしまうことにします。
堆肥原料に利用されるとはいえもったいない話しではありますが・・・

奥まったところ、手間がかかりそうなところから先に仕上げて行くのは、どんな仕事にも共通する手順です。
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刈込む前と比べると、軒の形もかなり変わっています。
「前髪が重くてうっとうしい?じゃあ、ちょっと切って軽くしておきましょうか」と、いう感じ。

2008年08月22日

●0822 アングル

砂木の家の施工記録写真を撮って下さっている、parammmさんが現場に来られました。
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屋根屋の作業の様子は、屋根の上から撮影した方が手元の様子が明らかになります。が、足場の無い上方からの撮影は、普通のカメラマンさんには無理な話。
ところが、地下足袋持参で棟に上がってしまうparammmさん。茅葺屋のヘルメットが似合い過ぎです。

屋根屋とはいえ自宅の棟に上がれる機会はそうそうありませんから、僕も棟に上がって砂木谷の眺めを楽しみます。
砂木の谷の集落の一番奥にある我が家の屋根からは、谷全体を見渡すことが出来ました。正面奥に谷の入り口の高台に在る、茅葺きのお堂が見えます。
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砂木に茅葺きのままで残るのは、拙宅とこのお堂ともう一軒だけ。でも、トタンを被っている家はもちろん、瓦葺きの家も全て茅葺き屋根を下ろして2階を上げたもの。目に入る全ての家が茅葺き民家からの改築です。
本当にちょっと前までは、茅葺きの家があたりまえだったのですね。

少し目線を上げると、ナラ枯れで赤茶けた木の目立つ山が・・・春の新緑、秋の紅葉、雪景色と、四季折々の姿で楽しませて来てくれた山だったのですが。
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里に近いこの山は薪山として雑木を伐られ続けることで、常に若々しい広葉樹が新陳代謝しているのが、ついこのあいだまで当たり前でした。薪がもう必要なくなり木を伐らなくなったことで、山が枯れて行くのも当たり前だとは僕にはどうしても思えません。
茅葺き民家が無くなって行くのを当たり前と思ってしまうことは、ナラ枯れのような放置された自然の荒廃と無関係ではありません。砂木の家での様々な試みが、茅葺き民家は失われ行くものだという決めつけを、少し変えることになってくれたらと願っています。