神戸の西にある実家に顔を出し、犬を連れて明石海峡を望む高台に登ると夕焼けがきれいに見えました。
毎日この夕焼けを見ながら育ったので、美山に移った当初は山に囲まれているせいで、夕焼けが見れないまま暗くなってしまうことに気が滅入ったものでした。
今ではすっかり慣れましたけれど。
未だに馴染めないのはこの非常識に大きな橋。
小学生の時に造り始めたときから、冗談みたいに大きくて子供心に笑わずにはいられませんでした。
四国に行く時には便利でよく使っていますけれども。
さて、保管してある茅を養生するための単管の覆いも、ようやくトタンの屋根を張るところまでこぎ着けました。
「屋根屋ですが茅葺きしか葺けません」ので、トタンを張るのも時間ばかりかかって、なかなかきれいには納まりまらないのです。
それでもとにかく雨露は凌げるようになったので、さっそく野積みにしてある茅を運び込もうとしたのですが、案の定ブルーシートをめくってみると雨水が入り込んでいて3分の1ほどの茅が濡れてしまっていました。
夏だったら全滅の大損害だったところです。
幸い冬場だったので腐朽には至っていませんでしたから、できたばかりの屋根の下に立てかけて乾かします。こうして立てて風を通してやれば数日のうちに乾燥するはずですが、単管の覆いは物干し場となってしまったので、全ての茅を運び込めるのはまた先に延びてしまいました。
茅を運び込むついでに、乾いた分の茅の一束あたりの重さを量ってみました。
この茅は北上川産のヨシですが、38束量って平均が4.097キログラム。
平方メートルあたりだいたい15束程度必要になるので、美山町サイズの屋根だと18トンくらいになる計算です。
これは茅だけの重さですから、さらに竹や縄の重量が加わります。茅葺きがとても重いということを説明しても、なかなか信じてもらえないことがあるのですが、こうして量ってみるとやはり相当なものです。
念のために申し添えておくと、金物を使わず木を組んで建てられる伝統的な日本建築は、上から荷重がかかってはじめて安定するものですから、重いということは別に悪いことではありません。
ただ、それに見合うだけのしっかりした構造が必要とされるということです。
野積みにしていた茅の山を崩して行くと、こんな可愛らしい借家人が出て来ました。
茅とビニールひもを細く裂いて作った巣にくるまって冬を越していた、カヤネズミでしょうか?ヤチネズミでしょうか? 親指よりも小さな野ネズミが。