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2008年10月 アーカイブ

2008年10月04日

1004 下げ葺き

あいかわらず秋の花に囲まれて仕事をしています。
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こちらのお宅の北側が現場。

軒がついたら古い屋根に使われている短い茅を下敷きにして、長い茅の下に差し込むようにする下げ葺きで、どんどん葺いて行きます。
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古い屋根を完全にはめくらない葺き方ですが、新しくできる屋根はほぼ新しい材料だけで葺かれているので、丈夫に長持ちします。

残り少ない暖かな季節を惜しむように、咲いている花には蝶がたくさん集まって来ています。
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夏が終わってアゲハの姿が見られなくなると、入れ替わりにこのツマグロヒョウモンのようなタテハ蝶の仲間が目につくようになりました。

一週間と少しかかって、傷みの酷かった下半分はほぼ新しく葺き替えました。
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2008年10月05日

1005 茅場つくり その1

米作りの機械化を進めるために、田んぼの区画を大きくまとめる「圃場整備事業」が日本中で進められていますが、一枚の田んぼの面積が広くなった分、田んぼの畔はしばしば見上げるほど高く大きなものとなってしまいました。

田んぼの畔は崩れてしまわないように、刈り込むことでしっかり草の根を張らせておく必要がありますが、あまりに大きくなった畔では刈り払い機を使うのも危険で、草刈りが大変な労働となってしまっています。
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そのために手入れの行き届かなくなった田んぼの畔が、農村風景の中で次第に広がりつつあります。

淡河茅葺き保存会「くさかんむり」は、草刈りの代わりに茅刈りによって、これらの畔を草の生え揃った原っぱへと戻して行くことを目指して、活動を開始しました。

刈り取ることで、放置して自然に任せているよりも生態系も豊かになるはず。
それを確認するために、茅刈りをする前後の植生調査を行います。
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の、予定だったのですが、あいにくの雨。
本格的な調査は無理ですが、参加者で生えている草を集めて来て、森林植物園の先生に解説してもらいました。
こうして説明してもらうと、「雑草」も実に豊かな個性をもっていることに感心させられます。

兵庫県下では姿が見られなくなりつつあるオオバクサフジ(大葉草藤)が、小さな群落をつくっていました。
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日当りの良い草原を好むこの花は、草刈りが行われずクズやセイタカアワダチソウに鬱蒼と覆われた畔では肩身が狭そうです。
茅刈りによってススキの原っぱへと遷移させることができれば、かつては当たり前でありながら今や貴重になってしまったこの花を、再び身近なものに出来るかもしれません。

カヤネズミの古巣も、わずかながら見付かりました。
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草刈りをしないと枯れ草だらけになって、春になっても新しい芽も生えて来ませんから、今のままでは彼等にとっても暮らしにくい場所になってしまっていると思います。

田んぼの畔を守ったり、茅葺きの材料を集めたり、そんな人の営みとともに紡がれて行く、命の営みもあるのです。

2008年10月08日

1008 差し茅

上半分は葺き替えた下半分よりは新しいとはいえ、今回下げ葺きで真新しくした屋根よりは古くなった分だけ薄くなっています。
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そこで、新しい下半分とのあいだに段差が生じないように、差し茅をして馴染ませます。

雨上がりの空気に金木犀の香りが満ちていて、思わず深呼吸。
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美山町の茅場では、銀の波が秋の日差しに輝くようになりました。
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子供の頃には、夏休みが終わってしまうのが寂しくて秋は嫌いでした。
美山町で10年と少し過ごした今では、秋雨でぐずついても冷え込んでも、雪に閉ざされる前にはまだ心地よい乾いた風が吹くことを知っているので、秋も悪くないと思えるようになりました。

2008年10月11日

1011 刈込み仕上げ

軒付けから始めて下から順番に葺いて行き、差し茅で上半分の屋根と一体化させたら、今度は上から順番に仕上げのハサミを入れて刈り込んで行きます。
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ハサミを使いつつ見上げる空は、透明な秋の空。
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最後に軒を刈り落として、刈込みは終了。
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足場を解体して、掃除。

そして、完成です。
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2008年10月12日

1012 茅場つくり その2

茅場へと復元予定の田んぼの畔に、あらためて植生調査にやって来ました。
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雨のため一週間順延となったのに、あらためて集まって下さった皆さん、ありがとうございました。

四角い区画を設置して、その中に生える植物の種類と量を定点観測して行く、コドラート法という調査を行います。
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しかし、長らく草刈りが行われておらず、クズとセイタカアワダチソウのジャングルとなっている畔では、コドラートを区切る杭を打つのも一苦労。
さらに地表まで掻き分けて、生えている草の種類を余さず確認して行くのは更に一苦労。

既に花が終わっていたり、クズに負けて矮小化していても、植物の専門家の方は次々と種類を同定して、雑草にも名前と個性があることを教えてくれます。
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個人的に心惹かれたのは、このアキノノゲシ。
薄いクリーム色の花の色が、何とも上品です。

背後には圃場整備によってつくられ、草刈りが滞って薮に覆われた高畔。手前の原っぱは洪水対策の河道修正工事で生じた残土が積み上げられもの。
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いずれも、人が自然との関わりを保って暮らして来たこの列島には、かつて存在したことの無い環境です。
ここで茅刈り始めることで、これらの環境と人が再び関わりを持つようになると、どのように自然が変化して行くのか楽しみです。

2008年10月19日

1019 壁塗り その2

塗ってから3週間待って、壁はかちかちに乾きました。
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ちなみに裏側はこんな感じです。
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段々それらしくなっていく我家を、少し嬉しがって遠くから眺めてみました。
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この谷での長い長い人の暮らしの積み重ねが、砂木の集落の景観をつくっています。
新たに建てた拙宅がそこに馴染んでいるかどうかは、とても気になるところです。自分のつくった物が風景の中で浮いてしまうようでは、自分の人生に先人への敬意と環境への意識が欠けていることになってしまいますが、さて、砂木の家はどうでしょうか?

2008年10月21日

1021 葺き上げ/スゴいヘビ

ナカノさんの美山茅葺き株式会社の現場へ応援に、伝統的建造物群保存地区の「北」集落のとなり、「中」にやって来ました。
ちなみに地元では、北はきたむら、中はなかむらと呼んでいます。
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大野の現場を片付けてからおっとり刀でやって来ましたが、既に軒付けは終わっているところからの合流となりました。

暖かな良いお天気が続いていますが、こちらの現場に来てから、冬鳥のジョウビタキが「ヒッ、ヒッ、」と短くホイッスルを鳴らす声を聞くようになりました。
少しずつですが、冬は確実に近づいて来ています。
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そんな小春日和に誘われたのか、こんなとんでもない体色のヘビが散歩していました。
ヤマカガシなのかなあ?体色変化の多いヘビだけれども、こんなカラフルなのは初めて見ました。

現場の方はヘビとは関わりなく順調に進んでいます。
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ナカノさんのところの若い衆は武相荘坂野家薬師門など、以前は泊まり込みで良く一緒に仕事をしていましたが、すっかり一人前の職人に育った最近では、各地の現場を任されて忙しいようで、会う機会も減っていましたから一緒に屋根を葺くのが懐かしいです。

2008年10月24日

1024 壁塗り(屋根も) その3

仕事から帰ると、荒壁の裏塗りがされていました。
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左官屋さんが鏝で押さえた、塗り立ての壁はつやつやとしてきれいです。

裏側を塗ると、かちかちに乾いていた表側にも水分が滲みて来て、貫の影を浮かび上がらせました。
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裏を塗ると表も濡れるというのは、考えてみれば当たり前なのですが、少し意外に感じました。
現場で左官屋さんとご一緒することは少なく無いのですが、他の職工さんの仕事をまじまじと見る機会はあまり無いので、知らないことが多いです。

さて、砂木の家では壁だけではなく天井裏にも土を塗りました。
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換気塔である茅葺きの屋根裏への通気を妨げないように、ロフトの天井と茅葺き屋根の間には充分な空間を確保するようにしてあります。

そして、ロフトの天井板の上には、蔵を塗り込める要領で土を載せてもらいました。
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こうすることで天井裏は「半屋外」と割り切ってしまえば、外気を充分に取り込むことで、夏の涼しさと冬の暖房効率を両立出来るのではと考えています。
もうひとつ、万が一茅葺き屋根が火事になった時に、外に逃げ出す時間と空間を稼ぐこともできます。

ところが、ひとつ思いいたらないことがありました。
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天井裏に壁土を載せたら、天井板に水が滲みて来てしまったのです。
考えてみれば当たり前なのですが、全然予想していなかったので意外でした。

断熱と火災対策のために茅葺きの天井裏に土を載せるのは、大和天井として関西では広く行われているのですが、その場合は竹簀子の上にむしろを敷いて土を載せます。そうすれば少々水が滲みても問題なく、土も早く乾くでしょう。
砂木の家も天井板に少々シミができたくらいでたいしたことはなさそうですが、昔ながらのやり方は、やはり理に適っています。


2008年10月29日

1029 葺き上げ/コマいヘビ

なかむらの現場は、職人の人数が揃っているので裏表同時に葺いています。
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天候の安定する季節にも助けられて、仕事は捗っています。

アリゴシまで葺き上がると、両角は狭い範囲で茅の向きを急激に変えなければならず、一層手間がかかるようになります。
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そこでケラバにあらかじめ短い茅をかきつけておくと、作業効率の向上と仕上がりの丈夫さの一石二鳥となります。

ところで、一服している足下でこんなヘビをひろいました。
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以前茅倉庫から小さなヘビが続々と出て来たことがありましたが、比べ物にならないほど小さいですね。
ヘビは茅葺き屋根の守り神ですから、大切にしなければ。

2008年10月30日

1030 屋根茸

そんな名前のキノコは多分ありませんが、砂木の家の屋根にキノコが生えて来てしまいました。
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屋根屋にとって茅の確保はもちろん、その保管も頭の痛い問題です。かさ張るうえに雨漏りや地面からの湿気、結露など、湿気によってだめになってしまうこともあるからです。
大切な茅を捨てるのも忍びなく、濡れた茅を往生際悪く干してみたりして、とはいえさすがにお施主さんのところには持って行けず・・・そんな茅がこの屋根にはたくさん集まってしまいました。

濡れて菌糸で真っ白になっていた茅。今更乾かしてみても、キノコをつくる準備はすっかり整っていたという訳です。
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キノコはハサミでチョン、と切り取って、土間での焚き火を再開して屋根も燻すことにします。
気休めですけれどね。
それにしても、苔も生えぬうちからキノコが生えるとは。

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