毎年恒例の「笹葺きパートナーズ」による丹後での笹葺き、4年かかって上世屋の民家の屋根の葺き替えを完成し、今年から2棟目の屋根にとりかかれるまでになっています。
作業の中心となる立命館大学経営学部の学生による、「丹後村おこし開発チーム」の面々は、今や笹刈りから笹葺きまで一貫してこなす、日本唯一の技能集団に育っています。
こちらの家は昭和10年に建てられた際に葺かれて以来、先日お亡くなりになったご当主自らが差し茅を続けて維持されて来たそうです。
つまりは、一世紀近く囲炉裏やかまどの火で燻され続けて来た煤が、年月の分だけ屋根に溜まっているということで、古い屋根を解体する作業はものすごいことになりました。
家の中で煮炊きや照明のために火を使っていた頃には、茅葺き屋根は煤けているのがあたりまえで、皮膚に染み込む煤は洗っても簡単には落ちず、屋根屋は常に顔も手も黒かったものだそうです。
しかし、最近では我々現役の屋根屋でもこれほど煤けた屋根には滅多にお目にかかりません。
にもかかわらず、丹後村おこし開発チームの学生たちは怯みもせずに、手際の良いチームワークで煤けた笹を屋根から下し、堆肥にするために積み上げて行きます。
古い屋根を下ろしたら、昨年末に刈っておいた笹を葺いて行きます。
もともとは「笹葺き民家を守るために」始まった笹刈り。毎年刈り続けることで雑木林の植生が豊かになって行くことを実感し、笹刈りは学生たちにとって、「里山の自然と関わりを持つため」の営みとなりつつあるのではないでしょうか。
笹葺き民家の活用が里山の自然を守る営みの動機となることで、文化財の保存と生態系の保全、地域コミュニティの活性化が繋がり、人と自然、人と人とをつなぐ環が広がって行きつつあることを感じます。