屋根の上で葺く作業がスムーズに進むのは、裏山で茅の下拵えしたり運んだりする、テッタイさんの働きをする人がいればこそ。
茅を切るのも手配するのも、段々上手になってきました。
新しく葺いた屋根と、葺き替えていない上半分の屋根の間を葺き詰めます。
葺き詰め方が足りなければ、古い屋根が緩んで崩れますし、だからといって闇雲に詰め込んだら、茅が屋根の内部に向かって傾いてしまい、そこから雨漏りが始まります。
古い屋根は長年風雨に曝されて厚みが減っています。新しい屋根はそれにつられないように注意して、適正な厚みを保って葺き上がらなければなりません。
だから、新旧の屋根のあいだには段差が出来るのがあたりまえ。
最後に仕上げのハサミかけ。
屋根の表面を上から順に仕上げて行ってから、軒の裏を刈り落とします。
重いハサミを持ってのきつい姿勢での作業、「腕が笑った」のはだれでした?
そこらへんに生えている草と、みんなの力とを合わせるだけで、見違える程きれいな屋根になりました。
来年以降も毎年刈り集めた茅の分だけ、屋根は新しく生まれ変わって行くことでしょう。
あるものを使って、必要な分だけ葺き替えながら、一緒に暮らして行くのが茅葺き民家のあるべき姿。つぎはぎの屋根は、この民家が「生きている」証拠です。