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2010年03月 アーカイブ

2010年03月03日

0303 笹葺き職人!

飛騨かやぶきのスギヤマさんたちと入れ替わりに、山城萱葺き屋根工事のヤマダさんたちがやって来てくれました。
僕たちの世代の茅葺き職人で、ネソ巻きをきちんと修得しているのがスギヤマさんだけなら、笹葺きを完全にこなせるのもヤマダさんだけでしょう。
ヤマダさんに預かって頂いていた、丁稚サガラもようやく登場です。
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まずは、学生たちが葺いた屋根を手直し。
こういう事は職人が学生と一緒に葺きながら、さりげなく済ませておいてあげるべきなのですが、一緒にいたのが手本にやってみせる事もできない僕ひとりでは、口ばかりうるさく言われて学生たちも気の毒でした。

こんな笹の小束をつくって、粗いところ、へこんだところ、勾配のおかしなところ、何となく気に喰わないところに差し込んで、笹が均等に固まるように整えて行きます。
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笹葺きはヨシやススキで葺いた屋根に比べて耐久性は劣りますが、差し茅がとてもしやすい屋根なので、まめに差して手入れしてやれば意外と長持ちします。
勝坂遺跡にも良い笹が生えているので、遺跡公園を訪れる人たちで差しながら末永く守ってもらえたら・・・

一通り手直しが済んだら、棟に向かって葺き上げて行きます。
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「逆葺き」の笹葺きは葺く手間もススキやヨシで葺くよりかからないので、葺き上げにスピード感があります。
手間がかからないと言うのは、簡単だという意味ではないですよ。念のため。

もう1棟の土葺き民家も、下地となる樹皮を敷き並べはじめました。
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縄文時代の植生を考えると樹皮は雑木なのかもしれませんが、今回はそこまで用意できませんでした。杉皮で勘弁して下さい。

まとまった数の職人が揃って、ようやく茅葺きの現場らしい空気になってきたような気がします。
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2010年03月05日

0305 笹葺き。樹皮葺き?

あいかわらずすっきりしない天気が続きますが、茅葺き職人チームにより笹葺き屋根は順調に葺かれて行きます。
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土葺き屋根は土だけだと雨漏りするので、下地に杉皮をきれいに葺き並べました。
これだけでも「樹皮葺き屋根」と言ってしまえそうですね。実際そのような屋根もあったと思います。杉皮ではなくて白樺の皮とかでしょうけれど。
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でも樹皮だけだと風に弱い。
土葺きは薄く葺き並べた樹皮や茅を、土で押さえるという葺き方だったと思います。それなら、鉄の鎌がなくてもたくさんの茅を集める必要が無いし、立ち枯れて手で折れるような茅でも使えます。

雨がちな日が続いて、現場の周りはすっかりこの通り。
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たっぷり水を含んだ関東ローム層+黒ボクの上を重機が走るので、どこまでもぬかるんでしまいます。

車椅子なんかでうろちょろしていると、すぐにこの有様。
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縄文時代の人たちは、水はけをどうこなして暮らしていたのでしょうか。

棟近くまで葺き上がって来て、ようやく久しぶりの青空が顔を出しました。
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春を告げる恵みの雨ですが、屋根も地面も、今は早く乾いてほしいです。

2010年03月10日

0310 芝棟

棟まで笹を葺いて上がって来て、棟の収まりは芝棟としました。
茅葺き屋根のてっぺんに土を載せて、土が雨で流れないように草を生やした棟で、ひと昔前までは東北から関東にかけて割と普通に見られたはずの棟のスタイルです。
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ススキでもヨシでも、笹でも、棟まで葺いて上がればてっぺんは何かで「フタ」をしないと雨が入って来てしまいます。
現在では杉皮か、その代用品としてのトタン板を被せて、それが風で飛ばないように留める工夫のあれこれが、地域性豊かな様々な棟のスタイルを生んでいます。

ただ、大きな杉皮を得るためには、密植して枝打ちして育てた、節穴の無い杉丸太が必要です。つまり杉皮も建材として広く普及したのは、杉の植林が盛んになった割と最近のことかもしれません。
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それまでは、並べた茅で棟を塞ぐのが長い間一般的だったでしょう。
ならば並べた茅の上に土を載せて押さえ、草を生やして根を張らせて、雨風に強くしようというのは、ごく自然な発想だったでしょう。

この、土葺きの屋根のように。
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樹皮葺きで完成?っぽかったお隣ですが、そのままでは風が吹いたらばらばらに飛んで行ってしまうので、押さえるために土がどんどん載せられて行きます。

杉皮の上に土止めに粗朶(そだ=木の枝)を並べてから土を被せて行きます。
やがて被せた土から草が芽を出し根を張って、しっかりと固まる事でしょう。
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あ、樹皮の上には粗朶を置く前に透湿防水シートが敷いてあります。要らないとは思いますが公共の公園だし念のために。仕様書でそのようになっていましたので。
因みに芝棟の下地にも、現在では杉皮を敷くのが一般的です。杉皮よりも芝棟の方が古くからある技術だと思いますが、杉皮を使っえば施工しやすく長持ちするのなら、新しい材料もあるものは使えば良い訳ですから。

ところで笹の葉っぱには、よくこんな「切り取り線」がついているのですが、一体誰の仕業なのでしょうか?
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虫の食み跡なのかな。どんな食べ方?


2010年03月11日

0311 竣工

菜種梅雨の過ぎた青空を背景にコブシの花が咲いています。
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竣工に至って、勝坂遺跡にもようやく本格的な春が訪れたようです。

棟を無事に積んだら、手直しが必要な場所を仕上げつつ、足場の丸太を上から順番に外して下りて来ます。
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丹後で今も行われる笹葺きの葺き替えの際には、きちんとハサミで刈り込んで仕上げますが、今回は葺きっぱなし。縄文時代にはハサミは無かったでしょうから。

池に落ちた犬みたいに濡れそぼっていた笹葺きも、久々の陽射しを受けて毛並みがふさふさして来ました。
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実は以前から、逆葺きの笹葺きの風合いを活かすために、ハサミ仕上げ無しの屋根も見てみたいと思っていました。
風が吹くとさわさわ揺れてきれいです。同時に葉っぱがはらはら落ちて来るので掃除は大変かもしれませんが。

笹葺きと、
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土葺き。
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「使用前」「使用後」という感じ?
まるで違うのに、並んで建っていると仲が良さそうです。
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たくさんの人たちが手技を携えて集まってくれました。おかげで、縄文の人たちの気持ちに近づくことができたからでしょうか。

勝坂遺跡公園は2010年4月からオープンしています。事前に申し込めば笹葺き、土葺きの中にも入れるそうなので、お近くにお越しの際はぜひ訪ねてみて下さい。

2010年03月27日

0327 神戸建築物語

ようやく春の息吹が感じられるようになっていた季節に開催されたイベントについてご報告します。
神戸市では建築文化の魅力を引き出し、発信する機会として、講演会と見学会を組み合わせ地域や建物にまつわる物語を紐解いて行く、神戸建築物語を継続的に開催しています。
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「神戸に生きる茅葺建築」と題され3月27日に開催された第9回において、神戸芸術工科大学大学院助手の鎌田誠史先生と共に講師役を仰せつかり、行って参りました。

茅葺きについて現場での四方山話を中心に、基本的にくだけた話しか出来ない僕と違って、かっちりとした構成で茅葺きについて講義してくれた鎌田先生は、実は学生時代の同期だったかまやんです。
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同じ大学で同じ時期に同じ先生の指導を受けても、ずいぶん違う種類の人間になるものですね w

僕たちが学生の頃には、1,200棟とも言われていた神戸の茅葺き民家ですが、今では750棟を割り込みました。
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半分近くに減ったと見るか、まだ良く残っていると見るか・・・

参加者の皆さんからは、見学会を通して活発にご質問を頂くことができました。
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人と自然の織り成す里山のシンボルとして、茅葺き民家のある風景が広く神戸市民の財産として愛されるように、これからも自分に出来ることを考えて行きたいと、あらためて思う機会になりました。

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