作業開始前に河原工房の会長さんから、伝統建築についてのレクチャーを伺います。
様々な工法についての解説も興味深いのですが、代々受け継がれて来た歴史建築と関わる際の、心構えについて触れられたお話しが印象的でした。
気持ちが入ったところで今日も作業開始。
茅屋根葺きのヤマ場、軒付けの中でもさらに気遣いの必要な、軒先の水切りとなる茅を葺いて行きます。
足場が狭くて材料を置けないので、地面にいる人が必要な茅を滞り無く届けてあげなければなりません。
短かったり長かったり、先細りだったり頭でっかちだったり、自然素材である茅は束によって形も様々。そして良い加減につくられた茅葺き屋根の下地も、へこんでいたりふくらんでいたり様々。
ですから良い屋根にするためには、葺く人だけでなくて、材料を手渡す人が茅の形を見極めて、その茅が活きる場所へ届けてあげることがとても大切です。
葺き並べた茅を押さえて固定する竹を止める縄も、足場の上には置けないので地面から延ばして渡してあげます。
このとき、縄の「うらおもて」に気をつけなければならないって、知っていました?
間違った方から縄の端を引き出すと、こんがらがって使い物にならなくなってしまいます。
色々気を使って届けられた縄の端を、茅屋根を貫通するでっかい針の穴に通して、茅押さえの竹を縫い止めて行きます。
針の角度に注意しないと、正しい位置から竹が動いたり、雨漏りの原因をつくってしまいますよ。
縄の端を垂木にかけてあげる役目の人も、ただぼんやり針先が出て来るのを待っていてはいけません。
垂木の際に隙間が出来ないように針を差すためには、内側から声をかけて上手に誘導してあげられるかどうかにかかっています。
垂木にかけた縄で茅押さえの竹を締め上げて、男結びで固定。
葺く時には地面から茅を渡す人と、屋根の上で葺く人。縫う時には針を差す人と、屋根裏で受ける人。そしてもちろん、隣りで作業している人とも。茅葺きはチームプレー、全員が呼吸を合わせなければ茅葺き屋根は葺けません。