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2010年05月 アーカイブ

2010年05月15日

0515 古屋根解体

昨春、古民家族の面々とともに茅屋根の葺き替えに着手した、六甲山中、船坂集落の旧坂口家に今年は暖かくなってからやって来ました。
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前回は土と化していた山側の屋根を葺き直しましたが、表側も傷みの酷い後補の瓦葺きの庇を解体した後は、ご覧のようにベニヤ板で凌いでいるような状況です。

まずは、前日から用意していた足場を仕上げます。
表側は公道に面しているので、敷地からはみ出さないように。
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丸太足場を組む機会も貴重な昨今、シノと番線の使い方を教わりながら。

足場が用意できたら、古屋根をめくります。
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上から下へと、再利用できる茅と、肥料にして土に還す茅を仕分けながらめくって行きます。

丁寧にめくることで、葺き方の勉強になります、が・・・どう?
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道路にこぼれた茅くずは、こまめに掃除。大事ですね。

掃除した茅くずと、再利用できない茅は、裏の畑に運んで土に還します。
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濡れると重くて運べなくなりますが、お天気で何より。

2010年05月16日

0516 続・古屋根解体

今回葺き替える部分の古茅と、軒を養生していたベニヤ板を取り除きました。
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かつて瓦の庇がついていた軒の部分には、既に茅葺き用の下地が用意されていますが、残念ながらこれは後ほど一部やり直し。
古屋根を残したまま下地の面を正しく出すのは、職人でもなかなか難しいですから。致し方無し。

古屋根を剥ぐったところは、横竹もしっかりしていてそのまま行けそうですから、下地の縄をかけ直しておきます。
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度々練習して来た、男結びの腕前の見せ所。

再利用するために分別しておいた古茅。カブ(根本)を揃えて傷んだところを切り落として、束ね直しておきます。
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直接雨のかからない軒の裏とか、葺く茅の勾配を調整する「延べ茅」とか、使い道は色々あって重宝します。

きれいに整えた古茅は、足場の上に戻して積み上げ、シートで養生しておきます。
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地面からの湿気が来ないし、人の手も届かない足場の上は茅の保管に具合が良いです。
もちろん、あまり足場の上に積み上げていると作業の邪魔になりますが、古茅は最初の軒付け工程であらかた使ってしまう予定なので大丈夫。

昨年は「茅葺き週間」を設けて集中して葺きましたが、平日だと参加できない人も多いので今年は隔週の週末開催に。
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2週間空けるのでシート養生も念入りに。
ま、念入りにしたつもりでも、雨が降れば水は思わぬところから入り込んで来るものです。たかがシートをかけるのにも、経験と技術が必要。
せっかくなので経験しておいて下さい。

2010年05月29日

0529 下地組み・軒付け

今週は山城萱葺き屋根工事のヤマダさんとサガラが来てくれたので、「何となく差し込んであった」軒の部分の下地を直してもらいます。
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茅葺きの下地は墨を打って直角を出す訳でも、ミリ単位でボルト穴の位置を決めてもありません。大雑把なものです。
でもアバウトだからこそ、局部に無理のかからない構造にするために、経験を重ねた感覚が必要です。
いいかげんは、良い加減。その加減がなかなか難しい。

職人が下地を直している間、参加者は宇治川からやって来たとてつもなく長いヨシを、用途に即して3つに切り分けます。
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と、言ってもヨシは堅いですから。「押し切り」を使いこなさなければ切れずに刃が欠けるだけ。

宇治川のヨシに加えて、自分たちであちこちで刈り集めたススキも使います。
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茅葺きのために「茅を集めなければならない」と考えるか、「身近に自分たちで集めたものが使える」と考えるかで、茅葺き屋根との付き合い方は変わってくると思います。

下地が整ったところで、軒を付けはじめます。
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まずはきれいめのススキを選んで、ひと掴みずつ丁寧にかきつけて行きます。
屋根の基礎になるところだし、軒裏から見上げたときの化粧にもなるから、焦らずに。

一服の準備をする流しには、昨年被せた苫葺きの屋根がまだまだ頑張っています。
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軽い、薄い、苫葺きですが、風が吹けばなびき、雨が降れば受け流し、なかなかしたたかに屋根としての務めを果たしてくれています。

やたらと散らかる茅葺きだからこそ、まめな掃除は大切です。
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でも茅葺きのゴミは、決して廃棄物にはなりません。僕たちが暮らし方を間違えなければ、畑が求めてくれますから。

2010年05月30日

0530 続・軒付け

作業開始前に河原工房の会長さんから、伝統建築についてのレクチャーを伺います。
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様々な工法についての解説も興味深いのですが、代々受け継がれて来た歴史建築と関わる際の、心構えについて触れられたお話しが印象的でした。

気持ちが入ったところで今日も作業開始。
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茅屋根葺きのヤマ場、軒付けの中でもさらに気遣いの必要な、軒先の水切りとなる茅を葺いて行きます。

足場が狭くて材料を置けないので、地面にいる人が必要な茅を滞り無く届けてあげなければなりません。
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短かったり長かったり、先細りだったり頭でっかちだったり、自然素材である茅は束によって形も様々。そして良い加減につくられた茅葺き屋根の下地も、へこんでいたりふくらんでいたり様々。
ですから良い屋根にするためには、葺く人だけでなくて、材料を手渡す人が茅の形を見極めて、その茅が活きる場所へ届けてあげることがとても大切です。

葺き並べた茅を押さえて固定する竹を止める縄も、足場の上には置けないので地面から延ばして渡してあげます。
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このとき、縄の「うらおもて」に気をつけなければならないって、知っていました?
間違った方から縄の端を引き出すと、こんがらがって使い物にならなくなってしまいます。

色々気を使って届けられた縄の端を、茅屋根を貫通するでっかい針の穴に通して、茅押さえの竹を縫い止めて行きます。
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針の角度に注意しないと、正しい位置から竹が動いたり、雨漏りの原因をつくってしまいますよ。

縄の端を垂木にかけてあげる役目の人も、ただぼんやり針先が出て来るのを待っていてはいけません。
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垂木の際に隙間が出来ないように針を差すためには、内側から声をかけて上手に誘導してあげられるかどうかにかかっています。

垂木にかけた縄で茅押さえの竹を締め上げて、男結びで固定。
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葺く時には地面から茅を渡す人と、屋根の上で葺く人。縫う時には針を差す人と、屋根裏で受ける人。そしてもちろん、隣りで作業している人とも。茅葺きはチームプレー、全員が呼吸を合わせなければ茅葺き屋根は葺けません。

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