今年も滋賀県立大学人間文化学部有志「男鬼楽座」による、男鬼での茅葺きに参加して来ました。
崩壊寸前だった山手側の屋根を、軒から順に葺き替えはじめて3年目。とうとう棟にまで至りました。
棟に近づくと、葺き並べた茅の先が越えてはみ出てしまいます。はみ出た分が無駄にならないように、茅を切るのも屋根の残りにに合わせて長さを調整しながらとなります。
茅切りしている地面から、バケツリレー式に茅を届ける葺いている場所までの距離も遠くなりますが、加工した茅の「仕掛品」が出ないように、葺く人と茅を切る人とで連絡を密にして、互いの作業内容を確かめ合いながら進めることが大切です。
毎年少しずつ茅を集めて、葺いて、積み重ねて山側の屋根はきれいに葺き替えられました。
既に住む人がいなくなって久しい男鬼の集落ですが、人が関わり続けることで集落としての気配を保ち続けています。人の営みが重ねられた環境は、自然の中に適度なアクセントを加えて、原生の自然よりもはるかに多くの生き物たちに暮らしの場を与えています。
山村の佇まいを眺めていると、人の暮らしもまた自然の一部なのだと実感します。
自然に正直に、丁寧に暮らしたいと思う人は増えていますが、自然とともにある正しい人の暮らしとは、エコとかロハスとか外から持ち込むものではなくて、その場所が求めている声に耳を傾けて、ようやく教えてもらえるものだと思います。
長く営まれて来た集落の暮らしは、まさにそんな生き方のお手本でです。
男鬼に携わった学生たちは、そこでの営みを通しての様々な発見を、きっと少しずつ社会に還元して行ってくれることでしょう。