1005 茅場つくり その1
米作りの機械化を進めるために、田んぼの区画を大きくまとめる「圃場整備事業」が日本中で進められていますが、一枚の田んぼの面積が広くなった分、田んぼの畔はしばしば見上げるほど高く大きなものとなってしまいました。
田んぼの畔は崩れてしまわないように、刈り込むことでしっかり草の根を張らせておく必要がありますが、あまりに大きくなった畔では刈り払い機を使うのも危険で、草刈りが大変な労働となってしまっています。
そのために手入れの行き届かなくなった田んぼの畔が、農村風景の中で次第に広がりつつあります。
淡河茅葺き保存会「くさかんむり」は、草刈りの代わりに茅刈りによって、これらの畔を草の生え揃った原っぱへと戻して行くことを目指して、活動を開始しました。
刈り取ることで、放置して自然に任せているよりも生態系も豊かになるはず。
それを確認するために、茅刈りをする前後の植生調査を行います。
の、予定だったのですが、あいにくの雨。
本格的な調査は無理ですが、参加者で生えている草を集めて来て、森林植物園の先生に解説してもらいました。
こうして説明してもらうと、「雑草」も実に豊かな個性をもっていることに感心させられます。
兵庫県下では姿が見られなくなりつつあるオオバクサフジ(大葉草藤)が、小さな群落をつくっていました。
日当りの良い草原を好むこの花は、草刈りが行われずクズやセイタカアワダチソウに鬱蒼と覆われた畔では肩身が狭そうです。
茅刈りによってススキの原っぱへと遷移させることができれば、かつては当たり前でありながら今や貴重になってしまったこの花を、再び身近なものに出来るかもしれません。
カヤネズミの古巣も、わずかながら見付かりました。
草刈りをしないと枯れ草だらけになって、春になっても新しい芽も生えて来ませんから、今のままでは彼等にとっても暮らしにくい場所になってしまっていると思います。
田んぼの畔を守ったり、茅葺きの材料を集めたり、そんな人の営みとともに紡がれて行く、命の営みもあるのです。