投稿者「webmaster」のアーカイブ

0915 かなり燻しています

軒裏を刈り落として、いよいよ最後の仕上げに軒先を刈込みます。
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ヨシを使って丈夫に葺いてある軒先を刈込むのは、なかなかに骨が折れます。

さて、土間ではあいかわらず火を焚いています。
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大工さんが松食い虫で枯れたアカマツを1本分持って来て下さったので、筒切りにしただけで割りもせずに燃やしています。

細かくしなくても火がつくのは、大量に含まれるこの松ヤニのせい。
ただし、このために松を燃やした煙にも脂が多く含まれ、お風呂やストーブを焚いたりすると釜に付着して傷めるそうで、ウチにまわって来たという事です。
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茅葺きの屋根裏が煤けるのは全然困りません。防腐、防カビのためにはむしろ良いくらいなので助かります。

ところで、小舞だけとはいえ壁が出来ると煙が屋根裏にまわるようになり、茅葺き屋根から空気が流れ出る様子が良くわかるようになりました。
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まずオーソドックスなのは文字通り煙出しから排気されるとき。

ところが日によっては煙出しからは煙があまり出て来ずに、屋根全体から湧くように煙が噴き出す事もあります。
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屋根裏と外気の気圧差なのか湿度差なのか、このように茅葺き屋根が呼吸する事で内部は快適に保たれるのでしょう。
ただ、そんな時には屋根に火が着きやすくなってもいそうで、もらい火で延焼して集落が全焼してしまうような火事も、こんな時に起きるのかもしれません。

曇った日に煙の量が多いと、軒先から煙が下りてくることもあります。
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ただし、砂木の家ではまだ建具のない今でも、居室の中には煙はほとんど入っては来ません。
茅葺き屋根のベンチレーターとしての機能を生かして、適度な換気と暖かい居室を実現しようとする試みは、今のところ上手く行っているように思います。

0912 軒刈り

砂木の家に戻って来ました。
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空はもう秋の空。日差しは強くても、乾いた心地よい風に吹くようになりました。

仕上がったところから足場を解体して行き、正面の軒を残すのみとなりました。
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茅葺き屋根を葺き下した縁側に腰掛ければ正面に見えるところなので、最後にもう一度集中して仕上げます。

造成から逃れた小さな庭に、ニラの花が咲きはじめました。
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以前は家の周りの土手の上に、背景に初秋の青空をレースのように透かしてたくさん咲いてくれていました。
建物が落ち着いたら、窮屈に過ごしながら待ってくれている草花が戻ってくれるように、庭も整えて行けたらと思っています。

0905 杉の葉葺き

テッタイとして活躍してくれていたクボさんとヨネクラくんが、滋賀県の朽木でのフェス山水人にスタッフとして参加しているので訪ねて来ました。

由良川を遡って美山町の奥へ奥へと進んで行くと、芦生の森をかすめて佐々里峠に出ます。
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見事な針広混交樹林が広がりますが・・・灰色の木は昨年までに、赤い木は今年、ナラ枯れにやられてしまった木です。関西でも指折りの美しい森の、広葉樹の半分以上は枯れてしまっています。
ここまで酷いとは・・・

峠を下りるとそこは、京都市左京区。美山町は京都市とお隣りさんです。雪の無い季節限定ですけれども。
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ここ久多の里は知る人ぞ知る茅葺きの里です。休耕田が茅場としてきれいに手入れされていました。

山水人の会場に着いていみると、テッタイチームの2人は滞在+イベント用の竪穴住居を建てているところ。さっそく手伝います。
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用意してあった真竹で骨組みを組んで、さて屋根を葺こうとすると茅が足りません。
この場所で一番身近に手に入る茅材というと・・・周りは杉だらけの山ばかりなので、枝打ちして杉の葉で葺くことにします。

竪穴住居のようにカーブした面に下地の竹を取り付けるには、無理に水平にしようとすると割れたり緩んだりしてしまうので、面に沿って斜めに取り付けます。
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現場で試してみればすぐ判ることだと思うのですが、何故だかこのように復元されている古代住居をまだ見たことがありません。

1日手伝って作業するとこんな感じになりました。
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あとは、自分たちで頑張ってくださいね!

0903 燻しています

裏側の軒が仕上がったので、雪で足場が折れた時に割れた瓦を直してもらいました。
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やはり多少は雨漏りしていたようで、垂木や野地板に染みが出来ていました。

そうでなくても大工さんの建前のあと、1ヶ月も雨ざらしにされて松の梁にはカビが生えたりしているので、土間で端材を燃やして毎日燻しています。
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こすっても消えないカビが、燻してから乾拭きすると煤と一緒にきれいに取れて驚きました。

そんなことをしながら、ひたすら刈込む毎日です。
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0901 八朔の日

毎年9月1日は、砂木のお堂の月遅れの八朔のお祭り。
まず朝から集落総出で林道の草刈り日役に汗を流します。
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仕事の都合で田舎に引っ越して来た当初は、高い住民税を払っているのに管理作業が住民に義務化されていることに反発を覚えたものでした。でも日々の暮らしに彩りを添えてくれる田舎の自然が、実は自然のものではなく先人たちの営みの積み重ねによるものだと気付いた時、自分の暮らしもそこに重ねて行く機会として、日役に参加するのは義務ではなく楽しみだと思えるようになりました。

それに、役得もちゃんとありますしね。
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刈り払い機を振るいながら防獣柵に絡んだヤマノイモのムカゴを摘んでいると、たちまちポケットが一杯になりました。
明日のお弁当はムカゴご飯。

午前中に草刈りを終えて、昼からはお堂の周りで盆踊りの準備。
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すっかり支度が整ったら一旦家に帰って汗を流し、お地蔵さんにお経を上げてから持ち寄ったご馳走を広げて、村の人たちみんなで頂きます

気持ち良く酔った顔に夕方の風が心地よく吹く頃には、三々五々引き上げて行きますが、中には話に熱が入って暗くなるまで語り合う人たちも・・・
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そしてすっかり日が暮れてしまうと、浴衣に着替えて再びお堂の周りに集まり、盆踊りが始まります。
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お堂の中では三度酒宴の花が咲いているようですが・・・

0827 茅葺きに窓

北側の大間は軒まで刈って下りたので、続いて軒裏を刈り落とします。
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屋根の真ん中に開いている穴は、2階ロフトの天窓です。窓枠の取り付けなど作業が残っているので、足場を残しておきます。

北側の軒はロフトの地窓の庇を兼ねています。
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実験的に穿った窓ですが屋根の強度や採光、視界は考えて葺いていたつもりでした。が、仕上がってみるとやはりというか不都合も出て来たので、思い切って1尺ばかり切り上げてしまうことにします。
堆肥原料に利用されるとはいえもったいない話しではありますが・・・

奥まったところ、手間がかかりそうなところから先に仕上げて行くのは、どんな仕事にも共通する手順です。
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刈込む前と比べると、軒の形もかなり変わっています。
「前髪が重くてうっとうしい?じゃあ、ちょっと切って軽くしておきましょうか」と、いう感じ。

0822 アングル

砂木の家の施工記録写真を撮って下さっている、parammmさんが現場に来られました。
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屋根屋の作業の様子は、屋根の上から撮影した方が手元の様子が明らかになります。が、足場の無い上方からの撮影は、普通のカメラマンさんには無理な話。
ところが、地下足袋持参で棟に上がってしまうparammmさん。茅葺屋のヘルメットが似合い過ぎです。

屋根屋とはいえ自宅の棟に上がれる機会はそうそうありませんから、僕も棟に上がって砂木谷の眺めを楽しみます。
砂木の谷の集落の一番奥にある我が家の屋根からは、谷全体を見渡すことが出来ました。正面奥に谷の入り口の高台に在る、茅葺きのお堂が見えます。
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砂木に茅葺きのままで残るのは、拙宅とこのお堂ともう一軒だけ。でも、トタンを被っている家はもちろん、瓦葺きの家も全て茅葺き屋根を下ろして2階を上げたもの。目に入る全ての家が茅葺き民家からの改築です。
本当にちょっと前までは、茅葺きの家があたりまえだったのですね。

少し目線を上げると、ナラ枯れで赤茶けた木の目立つ山が・・・春の新緑、秋の紅葉、雪景色と、四季折々の姿で楽しませて来てくれた山だったのですが。
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里に近いこの山は薪山として雑木を伐られ続けることで、常に若々しい広葉樹が新陳代謝しているのが、ついこのあいだまで当たり前でした。薪がもう必要なくなり木を伐らなくなったことで、山が枯れて行くのも当たり前だとは僕にはどうしても思えません。
茅葺き民家が無くなって行くのを当たり前と思ってしまうことは、ナラ枯れのような放置された自然の荒廃と無関係ではありません。砂木の家での様々な試みが、茅葺き民家は失われ行くものだという決めつけを、少し変えることになってくれたらと願っています。

0821 藁スサ

お盆が明けたばかりだというのに、秋雨のような冷たい雨に度々降られます。
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雨漏りの心配は無いとはいえ、雨の日の刈込み作業は捗らない上に仕上がりも悪くなるので、できれば避けたいところです。
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そこで雨のかからない軒裏の刈込みを進めておきます。
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軒裏には茅を屋根に置く角度を稼ぐために稲ワラが使われています。この稲ワラの刈りくずはとっておいて、壁土に練り込むスサに使います。
ススキやヨシといった他の茅材の刈りくずは堆肥の原料に。茅葺き屋根はゴミを出さないゼロエミッションを、とっくに実現してる建築技術です。

0820 集合住宅

お盆が明けて作業再開。いよいよ仕上げの刈込みが始まります。
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屋根を葺きはじめて丸一年。長かったです。仕事の合間に作業を進めることが、これほど手間取ることになるとは。本業の傍らで自宅をセルフビルドされている方々の偉大さを思い知らされました。

ストロー状のヨシの並ぶ茅葺き屋根は、穴の中に巣を作るハチたちにいつも大好評。狩人蜂(種類不詳)が幼虫のエサにするバッタをせっせと運び込んでいます。
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ただ彼等は有視界飛行で飛んでいるらしいので、これから仕上げのハサミをかけて屋根表面の地形が変わってしまうと、つくりかけの自分の巣の位置が判らなくなってしまうようです。
ハサミ仕上げの最中にエサを抱えたままうろうろしているハチを見かけると、いつも申し訳ない気持ちになりますが、ハチのお母さんたちのためにも、茅葺き屋根は葺いたらさっさと仕上げてしまわなければならないようです。

家の裏庭にミョウガが顔を出す季節になりました。採るのは鹿と競争です。
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クボ料理長は美山より更に山奥へと旅立って行ってしまいましたが、丁稚サガラが天婦羅にしてくれました。茅葺屋のスタッフはみんな料理上手でありがたいです。摘みたては香りも歯触りも最高!

0813 棟上げ/壁小舞

棟が上がりました。
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小さい家なのに、棟飾りが7つも載ってしまいました。屋根の勾配が急過ぎて、棟が長くなってしまったからです。
(大工さんの)棟上げの時慌ただしかったとはいえ・・・まあ、屋根屋でも新築に携わる機会は貴重だし、お施主さんの家ではなく自宅で失敗を経験できて良かったと思います。

棟飾りのウマノリはトタンを被せて必要なくなったお宅から安く譲って頂いたり、形が悪くお施主さんのところでは使えないものなど、寄せ集めを切ったり削ったりして形を揃えて使っています。
半端物だけれども、安全のためにも栗材にはこだわります。

かつてはその重さで棟を押さえていたウマノリですが、現在では針金で屋根裏の下地丸太に綴じて締め上げています。
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水を吸うワラ縄で屋根を貫通して綴じては雨が漏ってしまいます。雨の伝わり難い針金が登場したことで、意匠は同じでも機能としては、ただ置いてあるだけから挟んで固定するかたちに劇的な進化が隠されています。

棟が上がり雨漏りの心配が完全に無くなったので、内装の工事も本格的に始まりました。
左官屋さんが来られて壁の下地小舞をかいて行かれました。
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本当は小舞かきも我々でやりたかったのですが、結局時間を作ることが出来ませんでした。ただし、小舞にした割竹は、昨年自分たちで伐り出して割って用意していたものです。
すかすかの小舞とはいえ壁が出来ると、柱だけだったときより屋内に風が流れるようになりました。ちょっと不思議な気もしますが、適切な入り口と出口を用意してやった方が、吹きさらしよりも空気が動くということでしょう。