投稿者「webmaster」のアーカイブ

071003 軒付け

自宅の前には川から引き込まれた水が流れています。田んぼに入れるための水路ですが、谷に沿って伸びる砂木の集落の家々の前を通る際に、野菜を洗ったり生活用水としても使われているので、稲刈りが終わったあとも水が止められることはありません。
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茅葺きはとにかく汚れる仕事なので、現場に手や顔を洗えるきれいな水が流れていると助かります。
今朝は、水路に咲くミゾソバの花びらが浮いていました。

さて、編み付けの上には稲ワラを並べて、下地に対して角度を稼いで行きます。
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藁の上には古茅の「シン」を並べて、さらに角度を稼ぎます。
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砂木の家は新築なので古屋根を解体した古茅は無いのですが、茅葺き屋根の軒裏に材料の違いで生じる縞模様が好きなので、他所の現場で畑に還されようとしていた古茅を頂いて来ておいて、縁側の前に持ってきてみました。

角度を稼ぐために並べた短い切り茅の上に、長く丈夫な茅を選んで並べて、竹で押さえます。
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カヤマル当日までに、ぐるりと軒を付けておいてしまいたいので頑張っています。
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カヤマルでは参加者の方に「葺く」体験もしていただくのですが、屋根の要となる軒付けは難し過ぎて手を出してもらえる工程がありません。あらかじめ現場をカヤマル仕様にしつらえておくことで、カヤマルの時に参加者の方々に積極的に関わって頂けるようになるのです。

カヤマルは、当日はもちろん事前の準備から事後のケアまで、仲間の職人たちが支えてくれているからこそ、中身の濃い体験会として続けて来ることができました。

071002 脱衣室

神戸の里山でもススキの花が咲き出しています。
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砂木の家の屋根は、以前から少しずつ刈り貯めていたススキに、淀川や宇治川のヨシを混ぜて葺いて行きます。
ヨシを取りに茅倉庫へやってきました。

茅倉庫の容量に限りがあるので外に積んでいた茅がかなり傷んでいました。厳重にシートで養生し地面からも高く上げて積んでいたのですが、わずかな穴から雨水が入り込んでいたようです。
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細かな気配りが必要な上に、やたらとかさ張る頭痛の種です。
かつては秋に刈り冬中干して乾かした茅を春に葺いたり、村の各戸の屋根裏に分散して保管した茅を順番に使ったりしていた訳ですが、つくづく上手い仕組みが出来ていたものだと思います。

倉庫の茅を運び出していると、何やら変なものが出てきました。
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卵の殻を細かく砕いて固めたような・・・

どうやらこの皮の主が、食事の後に吐き戻したもののようです。
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ヘビは脱皮の際に石の角などを使って、古い皮を引っ掛けながら脱いで行くそうですが、積み上げて揃えた茅の根本が引っ掛けるのに具合が良いようで、実にたくさんの古川が脱ぎ捨てられていました。

さらに茅を運び出して行くと、皮の持ち主自身も現れました。
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左の細い皮の主のシマヘビ。

そして、右のごつい皮の主のアオダイショウ。でっかい!
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カヤネズミのことを思うと、ヘビ達に茅倉庫の住み心地を喜ばれるのは複雑な気分ですが、大きなヘビが何匹も暮らして行けるくらいに、ネズミやカエルや鳥の巣がたくさんある環境になっていることは、喜んでおこうと思います。

070928 下地組み

足場が組まれると、「大工さんの建て方モード」から、「屋根葺きモード」へ現場が切り替わったような気がします。
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この現場では体験会「カヤマル」も開催することですし、安全面に配慮した広めの足場を組んでおきました。

足場が出来れば、下地の竹を組んで行きます。
緩まないようにしっかりと結わえて行くと、屋根カゴと呼ばれる下地はいかにも丈夫そうになりますが、この横竹は構造材としては最終的にはあまり機能していません。
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茅を並べてから茅を止めるホコダケ(茅押さえの竹)をレン(垂木)に締めつければ、あいだに挟まれた下地の横竹は緩んでしまうことも少なく無く、また、挟まれた茅全体の摩擦係数とホコダケで「総持ち」になっている茅屋根の構造上、緩んでも特に問題は無いのです。
下地の横竹をしっかりと結わえるのは、シートの上げ下げや下地工事の期間中、足場として使う際の安全性と、屋根裏から見た時の美しさに対する配慮です。
純粋な機能としては、横竹は並べた茅が屋根裏にこぼれ落ちて来ないように、そこに「ただあれば」良いものなので。

下地ができれば、軒を一番下で支える「編み付け」
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軒を支えるために丈夫で、かつ縁側から見上げた時に目に入る場所なので、化粧の意味もあり真っ直ぐできれいな材を使います。今回はヨシを使っています。
麻を栽培していた頃には、麻殻(オガラ)を有効利用していたりもしたようですが、ヨシのように光沢のある材料を用いた方が、縁先は明るくなります。

070927 壁土が来ました

夏のあいだに頼まれていた仕事を片付けて、自宅の屋根葺きに戻ってきました。
屋根を葺き出す前に、下地に使った縄を濡らさ無いように屋根の養生をして、ようやく雨ざらしの状態を脱しました。
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本格的な作業開始に先立って、まず足場を組みます。
茅葺きの足場は、軒の高さに合わせて微妙な調整が必要なため、昔ながらの丸太と番線の足場が具合が良いのです。

足場を組んでいると、左官屋さんが壁に塗る土を持って来られました。
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2tダンプ一杯の土・・・小さいながらも家一軒の壁を塗るのに、多いと言えば多いような、少ないと言えば少ないような。素人には判りませんね。

壁土は左官屋さんが土手に積んだ上に水を貯めて、シートで包んで寝かせておきます。
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途中に何度か切り返す必要があり、その際に藁スサを足す事になるのですが、それは茅屋根を刈り揃えた切り屑で賄えたらと面白いかな、と思っています。

0921 刈込み/差し茅

風破板の下まで葺きつめたら、上から順に仕上げのハサミをかけて、足場の丸太を外しながら下りてきます。
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棟を触ることなく、小間だけを楽に葺き替えることができるのは、破風板のある入母屋型の屋根ならではです。

軒まで下りてきたら、軒裏もきれいに刈り揃えます。
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足場を解体し、掃除をして完成です。

数年前に葺き換えた北側の屋根の、部分的に傷んでいた場所を差し茅で直しておきます。
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日当りの悪い北側などの傷みやすい場所は、まめな補修を怠らないようにするのが、長持ちさせるコツだと思います。

用事があって、先に竣工させたお隣の現場にお邪魔してきました。
と、屋根の表面がぼんやりと緑色になっているのがおわかりでしょうか?
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茅として用いたススキのタネが一斉に芽吹いています。
葺いたばかりなのに、このまま雑草が茂るのではと心配される方もいますが、タネは暗く乾燥した屋根裏で何年も過してきて、突然日光と水を与えられたので条件反射的に芽を出しただけです。まだ茅が風化していない新しい屋根の上には土がありませんから、

0919 葺き上げ/ナラ枯れ

葺き上げが続いています。
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屋根は上へと葺き進めるに従って小さくなるので、後半はどんどんペースが上がります。

今年はいつまでも残暑が続いていますが、それでも季節の方は確かに移ろっているようです。
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休耕田を利用した茅場にも、一面の銀波がうねるようになりました。
本来なら痩せた土地に生えるススキですから、肥えた田んぼの土では育ち過ぎて、やたら大きいばかりでの柔らかく弱い茅に育ちがちだったのですが、10年以上刈り取りを繰り返しているとだいぶ落ち着いてきました。

しかし、今はススキよりもその向こうの山が心配です。葉の赤くなっている木が目につきますが、さすがにまだ紅葉が始まったのではありません。
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ナラ枯れといって、松枯れと同じように、ある種のキクイムシが運ぶ菌に感染した木が枯れているのです。
日本海側の広い地域で問題が深刻化しているようですが、数年前から美山町でも芦生の原生林で、見事なミズナラの大木が次々と枯れていました。ミズナラに特有の病気と言われていましたが、この夏、里山の雑木林の中心を成す、コナラまで枯れ始めてしまいました。ナラやシイの仲間は、どれも感染する可能性があるようで、京都の東山でも立ち枯れた木が目立つようになったとニュースで言っていました。
僕がそのニュースに驚かされたのは、清水寺や銀閣の背景である東山に枯れ木が増えるのは好ましくないと、景観問題として取り上げられていことです。ツキノワグマからアカネズミまで、山に生きるほとんどの生き物の暮らしを支える、ドングリをつけるナラやシイやカシが枯れてしまえば、山では飢饉がはじまろうとしているはずだというのに。

カエルツボカビ病のニュースでも思ったのですが、「カエルがいなくなると生態系に深刻な影響があるかもしれません」という説明を、いちいち加えているのを聞いて怖くなりました。「カエルがいなくなるかもしれない」ということそのものを、問題だと受け止める人がそんなに少ないのだろうかと。
古都の景観も大切ですが、「日本の山には自然に木が生える」というのが、昔話となりかねないことを想像して、怖くならないのでしょうか。

そもそも、忘れられてしまいがちですが、日本の山は放っておかれると、豊かな自然では無くなってしまいますし。それこそ問題の本質だと思うのですが、報道されるような機会は少ないように感じます。
茅刈りを続けることで荒れ果てた休耕田が、安定した茅場という生態系に推移しているように、山もそこが人の暮らしの場として使われて来なくなってしまったので、松もナラも枯れ始めてしまったのでしょうか。

0915 葺き上げ/めでたい唐辛子

軒がついたらどんどん葺いて行きます。
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茅葺き屋根を葺くには、角の部分を先に葺いて基準にするのですが、小間(妻側の方)の葺き替えでは余程傷んでいない限り角の部分は解体せず古屋根を手直ししながら使うので、作業も手早く進みます。

屋根の北側は数年前に葺き替えていますが、既に一面に苔が生えてしまっています。
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苔が生えていても全体的に均等に減っているので、まだまだ長持ちするとは思います。
ただ、部分的に雪が凍って落ちる時に引き抜いたところがあるので、そこだけ今回のついでに直して帰ることにします。

ところで、お施主さんから袋一杯の満願寺とうがらしをいただいて、毎晩煮たり焼いたり炒めたりして頂いていますが、その中にこんなのが一つ混じっていました。
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何だか子宝にでも恵まれそうな、おめでたい形だと思いませんか w

0913 軒付け・木漏れ日カフェ、オープン

ランチは水辺のオープンカフェで。
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水面は「しいたけのホダ木を沈めて水を吸わせるための池」ですが・・・
オシャレだなあ w

さて、下地を直したら軒付けです。
ここで屋根のプロポーションが決まってしまう勘所ですが、小間(妻側)を葺き替えるときに今回のように大間(平側)があまり傷んでいなければ、大間のかたちに合わせながら間違いが無いか確認だけしておけば良いので、手早く作業が進行します。
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例によって茅の小束をかきつけた上に稲ワラを並べて、これから茅を葺いて行く際の角度を稼ぎます。

一旦縫い止めた藁の上に、また短い材料を並べてさらに角度を稼ぎ、最後に長く丈夫な茅を選んで並べてから竹で縫い止めて押さえます。
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短い材料には今回豊富に再利用できた、古茅のうちシン(半分に切った穂先の方)を使いました。
テーパーがきつく乾燥し切った古茅のシンは、軒裏に用いて屋根の重さを受け止めつつ角度を稼ぐにはもってこいの材料です。水濡れに対しては弱いのですが、軒の裏側は雨がかからない場所なので問題ありません。

軒を押さえた長い茅の上にはきれいに揃った茅を選んで、根本の方だけが屋根の表面に出るようにしてまとまった厚み葺き並べます。
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軒の水切りになる部分で、屋根全体で最も多くの雨水が流れますが、最後まで風化せずに形を保って欲しい場所でもあるので、良い材料を選んで手間を惜しまずにつくっておきます。

0911 古屋根解体・下地修理

夏の間仕事をさせて頂いたお宅の、お隣の家にやってきました。隣りと言っても田舎のことなので山の向こうで見えませんが。
この屋根は直ちに葺き替えが必要な程傷んでいる訳ではありませんが、シコロ屋根の修繕のために軒先を切断する必要があり、良い機会なので同時に屋根も葺き替えておこうということでした。
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こちらのお宅では毎年家の周りのススキを刈って、茅が貯まれば定期的に早め早めに葺き替えておられていて、次はこの小間の番という訳です。
早めに葺き替えると古茅の再利用率も高くなるので、結果的に施工費を意外と抑えることも期待できます。

再利用できるものと分別しながら古茅を解体すると、下地の横竹は軒並み虫が入ってだめになっていました。
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ローテーションからしてこの屋根で一番古いこの小間の下地は、囲炉裏やクドの煙で燻されていた様子が残っていましたが、それでも旬の悪い時期に刈った竹だったのか虫が入ってしまったようです。
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煤竹には虫がつかないと言われますが、むしろ正しい時期に刈られて屋根の葺き替えの際に取り替える必要も無かった竹だけが、長い時間をかけて煤竹になったと言うべきでしょう。

今回下地の竹はほぼ全て新しいものに交換しておきました。
これから長持ちしても、煤竹になるチャンスはなかなかなさそうですが、
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シコロ屋根の位置を少し高くしたので、カヤオイも新しいものに交換しました。

070909 下地組み

大工さんが手際良く棟上げ、レン(垂木)を流すところまで進めてくれた「砂木の家」ですが、屋根屋が放ったらかしにしているあいだに、雨に打たれてカビが生えたりしてしまいました。
ようやく作業再開です。
と、行っても今日明日だけですが・・・仕事の合間を縫っての作業なので、屋根屋の自宅は後回しにせざるをえませんので。
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レンを固定するのは縄によってです。風や台風の力を柔らかく受け流す、茅葺き屋根の下地を組むのはやはり縄でなければなりません。
釘は抜けてしまいますし、ビスは折れてしまいます。ボルトで強力に組めばレンの方が折れてしまうでしょう。

しなやかで強い茅葺き屋根の構造を支えるのは、やはり縄が一番です。
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レンは2本1組で棟に股がらせたものの位置を決めて固定したら、それに吊るようにしてヤナカ(母屋)の丸太を設置し、間を埋めるようにやや細い丸太をモト(根本)とスエ(梢)を逆にして配置して行きます。

下屋のシコロ屋根は、既に瓦屋さんが仕上げて下さっています。
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カヤオイがついて軒の高さが決まり屋根のかたちが現れてきました。
ロフトの窓の雰囲気も、イメージして頂けるようになったのではないでしょうか。