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070813 レン(垂木)を流す

棟の上がった家にはなるべく早く垂木を流して屋根のかたちをつくり、雨から養生できるようにしておかなければなりません。
ベテランの大工さんたちも、茅葺きの屋根下地を新しく組むのは初めてなので、一緒に作業しながら説明させてもらいます。茅葺きの小屋組は現場合わせで組んで行くので、順番を間違えないようにすることが肝心です。
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まず、スミレン(隅垂木)の位置を決めます。屋根全体のかたちがここで決まってしまいます。

茅葺き屋根の垂木は丸太のモト(根元)を上にしたものと、スエ(梢)を上にしたものを組み合わせて使います。
モトを上にしたものはホゾを切って栓を打ち、2本1組にしてあります。
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それを棟木に引っ掛けて、軒の方は下屋の桁に乗っけてあるだけです。
2本1組にしたレンを両側のスミレンを含めて何組か放射状に並べて行くことで、屋根のかたちをつくっていきます。

棟木から下屋桁に渡したレンを縄をかけて固定するために、ちょうどレンを受ける位置に草桁(丸太の桁)を配置しなければなりません。
草桁を乗せる梁の鼻は長めに出しておいて、草桁の位置を微調整できるゆとりを持たせてあります。
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ところが、そのゆとりをはみ出しての調整が必要なことが判明してしまいました。
棟が上がった瞬間から、何だか低いような気がして胃が痛かったのですが・・・大工さんと何度も打ち合わせしながら進めて来ましたが、実際に建ててみて現物を前に説明しなければ、伝えきれないことが残ってしまうことに歯痒さを感じます。

とにかく、棟の高さを上げないことにはどうにもなりません。ただちに棟木の上に束を立てて小棟が乗せられました。
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緻密な仕口を刻み細かい寸法を合わせる大工さんと、現場で豪快な解決策を採用する大工さんと、その割り切りの良さには驚かされますが、とても面白いと思います。
まあ、茅葺きの屋根下地はそもそもが、屋根屋や近所の人達が現場合わせで組んでいますから、柔軟な気持ちで臨機応変に対応して行けば良いと思います。

とにかく屋根下時の勾配も、大間の側は美山の茅葺き民家の標準に近づいて、棟上げから続いていた懸念もすっきり解消しました。
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スミレンの頭の位置で小間の勾配も決まって来ます。
そちらはお盆明けに。

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0812 葺き上げ/夏の水2つ

中干しを済ませた田んぼに、出穂期を迎えて水があてられています。
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落差があっても畔が傷まないように、必要な量の水だけ田んぼへ引き入れられるように、石がさりげなく上手に使われていて感心させられます。

毎日あまりの暑さに葺き上げのペースもやや鈍ってしまいましたが、ここまで葺くと雨漏りの心配はまずなくなります。
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お盆までに棟を上げることができなかったのは残念ですが。

さすがにこの暑さでは無理も出来ませんし。
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家の裏の横井戸からは、猛暑続きでも変わらず冷たい水が湧き出しています。
この水で入れて、この水で冷やした麦茶が猛暑を乗り切る支えとなってくれました。

0809 古屋根解体(棟返し)

裏側が棟近くまで葺き上がったので、表側の古屋根の解体に取りかかります。
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この屋根の表側は、アリゴシから下半分を何年か前にこぜあげて葺き替えてあります。

そこで今回は上半分だけを葺き替えます。
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美山のやり方では屋根の傷み具合に合わせて屋根を上下に分割して葺くことができますが、上半分を葺き替える際には棟も積み直す事になるので、表裏両方を必ず同時に葺き替えます。
これを「棟を返す」と表現しています。
ひっくり返す訳ではありません。

下半分は葺き替え済みとはいえ、数年経ってその分減っていますから、それに合わせて新しい屋根を葺くと薄くなってしまいます。
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それを避けるためにまず古い屋根を整えて、段を付けてから葺き始めるようにします。

段を付けるとはこんな感じです。
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減った屋根につられないようにして、正しいかたちを出せるようにしておく訳です。

070806 床組、貫

床組の部材は家が完成してしまうと人の目につく事はなく、しかし、湿気や虫害には最も曝されるところですから、昔から見た目は悪くとも乾燥し切った丈夫な古材が、転用されることの多いところです。
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砂木の家でも、何かに使えると思って集めていたヒノキやクリの柱などが、大引として用いられました。

束は茅葺き屋根の棟飾りに使う、ウマノリの端材です。
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自宅として暮らしていた小屋のまわりが散らかるのを気にかけながらも、いつか役に立つ事を信じて後生大事に抱え込んでいた木切れたちが、立派な仕事に就いてくれて何とも言えず嬉しいです。

砂木の家の耐力壁となる壁は、土塗りの荒壁とするので、柱のあいだに筋交いではなく貫が渡されました。
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構造用コンパネや筋交いでひたすら固めていく方法だと、限界を超えた途端に一気に破壊されることがあり得ますが、伝統的な貫構造は、小舞竹、壁土と一体となることで、丈夫なうえに粘り強い壁をつくります。

0805 葺き上げ/夏

引き続きケラバを積み重ねています。
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今年は梅雨が明けても何となく湿っぽい日が続き、その分過ごしやすくもありましたが、台風5号(ウサギ)の通過直後、猛烈に蒸し暑い日があってからいよいよ夏らしい、剥き出しの暑さに見舞われています。

現場の近くに良い水があって本当に良かった。
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この時期に屋根の上での作業は寿命を削る思いです。
デスクワークも貯まって来ていますが、日の暮れまで屋根を葺いたら、夜にはもう何をする体力も残っていません。

0801 葺き上げ/石垣

ようやくアリゴシまで葺き上がりケラバ積みへと移行していきます。
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夏で日も長いし頑張って葺いてはいるのですが、いかんせん人数が不足気味で・・・ お盆までに棟を上げるのは難しいかも・・・ 言い訳がましくてすみません。

谷川の石を積み上げた現場の周りの棚田の畔は、石積みと土法の取り合わせがさりげなく、踏みしめられ野芝に覆われた路面と相まってあこがれます。
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砂木の家のアプローチも時間を重ねて、いつかこのような雰囲気を醸して行けたら良いのですが。

070731 建前

美山では随分と久し振りに目にする快晴の青空の下、大工さんたちが息を合わせて振るうカケヤの音が響いています。
施主の普段の行いはあまり感心されない筈なのですが、大工さんたちの心がけが良かったおかげでしょう。
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皆さんありがとうございます。お世話様でした。
僕は現場のお盆前進行が押しているので、ちょっと覗きに来ただけでしたが。もっとも施主なんか居ても、うろうろするだけだったでしょうけれども。

夕方には棟札、墨壷、差金にお神酒、ご洗米、盛塩を供えて、大工さんに上棟式を取り仕切って頂きました。
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とは言っても餅撒きは無し。近所に子供も少ないし、すぐ横が谷川で危ないですし。
でもご近所の方が次々とお祝いを持って来て下さり、夜にお礼のご挨拶にまわった際には「木槌の音が良かった、良えもんやなあ」とも言って下さいました。

基本的に金物は使わず、大工さんの手刻みによる材を組み合わせて建てられています。
僕が大工さんに示したのは図面と模型、そして予算だけでなのですが、要所には手間のかかる車知(シャチ)栓継ぎで、松材の長物(チョウモン/差物)が組まれています。
贅を尽くした旦那仕事ではなく、はっきり言ってしまうとローコスト住宅なのですが、押さえて置くべきところからは一切手を抜かないという大工さんの姿勢を示して頂いていると思っています。
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まあ、予算は限られているのでその分抜くところは抜きますが。
一般的なローコスト住宅とは、多分そのあたりのバランスが随分違うのではないかと思います。

さて、いよいよ屋根を葺かないことには、大工さんも左官屋さんも仕事を進められなくなりました。
屋根屋の段取りが悪くて申し訳ないです。胃が痛い・・・
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あと、この現場を使っての「カヤマル'07」企画中です。
こちらも実施の詰めが遅れて、未だにきちんと告知できずにいますが。
詳細が決まり次第に本ブログでも参加を募りますので、よろしくお願い致します。

070730 上棟前夜/アプローチの石垣

「何としても7月中に棟上げしておきたい」という大工さんの気合いが叶って、明日大安吉日の棟上げに備えて材が組まれ始めています。
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二次元の図面からついに立体に立ち上がって来るのを見ると、感慨もひとしおです。
無事に屋根が収まるかどうか、不安も立ち上がって来ますが・・・

後回しにされていたアプローチの整備が、棟上げのためにレッカーを据える地行と絡めて、一部行われました。
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この石垣は既に孕んで崩れかけていたので、いずれにせよ積み直す必要があったのですが、石垣も茅葺きもこのようなプロの手によらない、かつての「百姓の百の技のひとつ」として積まれたであろうもの方が、現在ではある意味で却って貴重な技となってしまっているような気がします。
ここでもプロの石屋さんに頼むのは大層ですし、かといって自分で積むことも出来ず、頼むあても無く手をつけるのを躊躇していたのですが、バックホーのオペレーターのおじさんがあっさりと(スロープの部分)積んでくれました。
ユンボが通れるくらい、結構しっかりしています。

組み立てを待つ柱のほぞ穴。
金物を用いない在来技法の継手を見るにつけ、あらためて大工さんの技能に感心させられます。
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建前が終わるまでのひとときだけしか見れませんが、トーテムポールのようでかわいらしい表情だと思います。

070729 男鬼での差し屋根

山城茅葺屋根工房ヤマダさんに声をかけてもらい、滋賀県立大学人間文化学部有志「男鬼楽座」による、廃村「男鬼(おおり)」再興の取り組みの一環としての、集落の茅葺き民家の屋根の差し茅をお手伝いしに行って来ました。
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名神高速の彦根I.C.を下りて山間に分け入って行くと、男鬼方面から流れ出してくる川の水が、まるでガラスのように透明なことに驚かされました。
玄武岩質の美山では川底の石が黒く泥っぽいので、川の水質が良くてもこれほどの透明度は得られません。
水が青く見える感じは鍾乳洞の地下水みたいだと思っていたら、近辺はやはりカルスト台地で、川底に敷きつめられた玉砂利も石灰石でした。

山口県の秋吉台などと同様に、ここでもカルスト台地の緩やかな尾根筋はかつては茅場として利用されていたそうです。
茅刈りの行われなくなって久しい現在では、それらの尾根も雑木の林に遷移してしまっていますが、男鬼楽座の活動として再び茅場に戻そうという取り組みもなされていました。
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ハードウェアとしての茅葺き民家の保存に止まらず、周辺環境の整備に繋がる営みを取り戻そうとしていることが素晴らしいと思います。
茅葺屋の目指すソフトとしての茅葺きの再興と通じるものも多く感じていて、今後の活動からは目が離せませんし、もちろんお手伝いできることがあれば微力ながら力になれっていければと思っています。

0727 葺き上げ/茅20〆

屋根裏から搬出した茅は、美山の〆である「2間縄締め」で20〆にもなりましたが、葺き始めるとあっという間にぺろっと平らげてしまい、追加の茅が運ばれて来ました。
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ところで、この茅の流通単位である「〆(シメ)」が、地域によって全然違うので苦労しています。
美山の2間〆は、神戸などで使われている5尺〆だと7〆〜9〆になります。ばらつきがあるのは5尺〆と言っても実は色々あるためで、流通単位がこんな有様では、これから私達の生活圏の拡大に相応の範囲で茅を流通させようとすれば、とんだ足枷となりかねない懸念があります。

ここまで屋根を葺くのに結構な量の茅が必要だったことがお解り頂けるかと思います。
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やはり茅葺き屋根は一度に葺き替えるものではなく、少しずつ刈り貯めた茅で、傷んだところを治しながら暮らして行くものだと思います。今回の工事範囲がマキシマムかと。
住人の方にそのローテーションの管理に習熟して頂ければ、茅葺きの維持管理をそれほどの負担でもないと考えて頂くことも出来ると思うのですが・・・