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0211 軒付け

今朝の美山はうっすら雪化粧。
雪が積もっても霜が降りても、くるまの窓ガラスは未だ凍ることも無く、この冬は霜取りスティックの出番が一度もありません。
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やはり美山も暖かなようです。
とはいえ、ここのところ毎日5℃ずつ最高気温が下がるという非常識な天候で、せっかく香港帰りは無事乗り切ったのに、何だか風邪っぽくなってしまいました。

解体前の屋根はヨシで葺いてありましたが、元請けさんがススキをたくさん用意されていたので、ススキも混ぜて葺くことになりました。
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稲ワラの代わりにふたつに切ったススキの穂先の方を使って軒付けを始めます。

さらに選り分けた古茅のヨシを並べ、軒の水切りの一番強度がほしいところは新しいヨシを使います。
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軒裏はまともに葺いた屋根であれば雨水のかからないところですから、耐久性に劣る柔らかいススキの穂先や古茅のような材料を使っても問題はありません。

軒の裏側が出来ました。
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構造的に華奢な茶室や門は、重量のバランスを取るために全ての面の屋根を同時に葺いて行きます。

0208 屋根下地

個人的に茶室は「建築」ではなく「工芸品」だと認識しています。
構造的に屋根に人が上がる事も危ういほど華奢なので、冗談ではなく葺き替えの際にうっかり壊してしまわないように、細心の注意が必要です。
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それにしてもこの下地は寂しすぎます。

軒先の広小舞も大きく下がってしまっています。
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どうやら跳ね木が効かずに垂木が曲がってしまっているようです。

跳ね木を替えるとなると大工さんを呼んで大事になってしまうので、補強し枕木を追加することで軒を支えておきます。
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下地の竹も虫の入ったものは交換し、さらに軒の負担を軽くするために垂木の本数を増やします。

相変わらず「工芸品」であることは変わりませんが、それでもはじめに比べればしっかりしたと思います。
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茶室には天井が張ってあるのが普通なので、屋根裏に上がっての針取りができません。
葺き始めたら下地を目にする事はもうできないので、ひとまず見納めです。

0206 古茅解体/等持院

京都の洛北にある等持院庭園の茶室、清漣亭の葺き替えを始めました。
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美山から通いで仕事をするのは、随分久し振りな気がします。
昨年は関東滞在が長かったものですから。

前の屋根はやや傷みが進んでいましたが、ヨシで丁寧に葺かれていました。
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解体に際して、充分使える古茅は選別して再利用します。
予算には当然制約があるなかで、良い屋根を葺くためには手間を惜しむ事は出来ません。

屋根をめくって行くと、たくさんのヤモリが現れて来ました。
茅の隙間に卵が産みつけられていたようで、ヤモリの卵は初めて見ました。
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卵の殻と一緒にいたヤモリたちは、卵から出て来たにしては大きすぎるような気がしますが・・・
とにかく、ヤモリは「家守り」ですから、大事に軒下に放しておきました。

070205  茅刈り体験会のお知らせ

第14回 茅刈り体験会 「カヤカル'07」開催いたします

神戸市とその近郊ではニュータウンに近接して、現在でも多くの茅葺きの集落景観が保たれています。
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しかし、毎年の草刈りを必要とする伝統的な農業が行われなくなると、屋根を葺く茅を得る場所でもあるススキ野原=茅場(カヤバ)は失われ、材料の不足から葺き替えが困難となっています。

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一方で、ニュータウン内の幹線道路法面などの遊休地では、ススキがセイタカアワダチソウのような雑草に混ざって薮をつくっています。この薮は年に一度の刈り取りを続けると、やがて一面のススキ野原に遷移していきます。

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手入れの行き届いたススキ野原は景観として美しく、生態系としてもススキ野原に依存する、たくさんの貴重な動植物の住処となります。

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住民参加で維持される身近で豊かな自然を抱くニュータウンは、これからの人と自然の共生の在り方を示してもくれています。
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さらに、ニュータウンで刈り取ったススキを、周辺の茅葺き集落の屋根の葺き替えに用いることは、農作物でも人でも常に田舎から都会へという一方通行の流れに対して、逆向きの新しい流れを生み出す機会でもあります。
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ぜひ、冬晴れの一日に鎌を手に取って、団地の中に育まれる茅場での茅刈りを体験し、新しい時代の茅葺き文化に参加するとともに、十数年に渡って茅刈りを続け再生した、街中の茅場というビオトープの豊かな自然にも触れてみて下さい。

詳細、問合せはこちらを

070203 香港行

突然ですが、少し香港に行って来ました。

'05年の4月と10月に当地に新しく整備された日本(風)庭園で四阿の屋根を葺きました。
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その様子を見に行くついでに、まあ、旅行です。
屋根屋仲間で、たまには、と。

10月に行った段階で実は既に4月に葺いた屋根は随分傷んでいました。
これはその時の写真です。
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雨期のあいだ屋根はほとんど乾く間が無いような有様で、高温多湿な環境では茅を引き抜いてみると、雨水が染み込んでいない屋根の奥まで蒸れてカビが生えていました。

今回訪ねてみたところ、さいわい心配していたほど傷んだ様子は見られませんでした。
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南国の茅葺きというと、茅の葉を屋根の外に出してバサバサとした「逆葺き」を思い浮かべます。
香港は他の多くの都市国家と同様に木造建築が禁止されて来ていたので、地元の茅葺きを既に見る事は出来ないのですが、周辺の中国で見られるのはやはりそのような南国風の茅葺きだそうです。

一般に「逆葺き」は日本で多く見られる「真葺き」より耐久性に劣るとされています。
ただ葺く手間は真葺きほどかからないので、簡単に葺いて頻繁に葺き替えるか、手間をかけて長持ちさせるか、かかるコストは同じようなものです。
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手間をかけても茅葺きが長持ちしない環境ならば、逆葺きが選ばれるのは賢明で自然なことでしょう。
この現場では材料のヨシや竹も全て日本から持ち込んでいました。僕はあくまでも手伝いに呼ばれた立場でしたが、いつか地元の材料と技術を用いて日本風の屋根になるような葺き方も、試してみたいものだと思っています。

四阿は九龍サイドの志蓮浄苑という仏教寺院が管理し、一般に無料で公開している庭園にあります。
香港に行かれた際には時間があれば訪ねてみて下さい。
香港まで行ってわざわざ日本庭園を訪ねるのもどうかとは思いますが・・・園内の中華精進料理レストランはなかなかだと思います

以下、茅葺きとは無関係ですが。

香港に着いたら、何はともあれまず、マンゴー。
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「糖朝」は確かに美味しいけれどいつも混み合っているので、庶民的な「許留山」が落ち着きます。

古い香港はどんどん取り壊されて新しくなりつつあります。
仕事をさせてもらったお寺も、啓徳に空港があった頃にはスラムが広がっていたのを、再開発して建てられています。
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上のような町工場や住宅や老人ホームが積み重なった「香港らしい」ビルは次第に少なくなって来て、ガラス張りのビルが増えて来ています。
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ガラスが金色だったりするのが「香港らしい」とも言えるかもしれませんが。

香港名物の高層マンションのデザインも洒落たものが増えて来ていました。
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穴があいたりしているのが「香港らしい」とも言えるかもしれませんが。

でも、相変わらず足場は竹で組まれています。
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茅葺きの現場でも地元の足場屋さんが竹で組んでくれました。ちょっと恐いこともありましたが・・・

香港と言えば「茶餐廳」
何それ?と言う方は「レビュー」でもお薦めした香港無印美食をご参照願います。
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煮出した(ような)ミルクティーと「サイトー」で一服。

'05年に仕事をしていた時には、毎晩新メニューを開拓するのが楽しみでした。
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何を頼んでも美味しかったので。

最近、香港で気に入っているのは郊外や離島の漁村です。
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明るくのんびりとした光や空気は、熱帯ではなく「亜熱帯」加減が良い感じです。

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もちろん、海鮮料理も美味しいですし。

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しかし、残念ながらこいつは試せませんでした。
食うのかコレ?食うのか、そうか。
日本では天然記念物サマだけれどね。
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お店で売られているものはたいがい平気で食べますけれど、有明海沿岸の魚屋さんで、ポリ袋に詰められたイソギンチャクを見て以来の驚きでした。

三度の食事が美味しいのに、合間に甜品(スウィーツ)もこなさなければならないので忙しい。
マンゴープリンの他にも牛乳プリンや杏仁豆腐等々。
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喫茶店のフルーツポンチみたいなものでも、缶詰ではないフレッシュフルーツで作るのでとても美味しいです。

今回初めての人も大勢いたし、定番の観光露天商を押さえておくのも悪くはないのですが・・・
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やはり市場は地元向けが楽しいです。
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果物は検疫があって持ち帰れないし、せっせと食べなければ。

と、いう訳で屋根の様子見にかこつけて、食べてばかりの香港行。
最後まで読んで下さった方はありがとうございます。お疲れさまでした。
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香港はお正月を目前にして、街中に飾りつけがされていました。
来年は猪(ブタ)年です。

それにしても、お正月を西暦(キリスト教歴)で祝う日本は、つくづく不思議な国だと思う。
別に善し悪しでは無く。

0124 竣工/武相荘の屋根の意匠

 

最後の最後に、軒のラインが真っ直ぐになるようにハサミを入れます。
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軒の仕上げは、まず表(上側)を軒の厚みを揃えて刈り、次いで裏(下側)を高さを揃えて刈り落とします。
これで軒のラインは水平な直線になるはずですが、実際には自然素材である茅は一本ずつが隙間を持ってランダムに配置されているので、茅一本分のでこぼこが残ります。

その細かな凹凸をハサミで直線にこそげとることで、縁先から見上げた時に軒先が真っ直ぐ通った屋根になります。
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もちろん、あまり深くハサミを入れて軒先の角度が甘くなると、屋根を流れて来た雨水が軒先で切れず、軒裏に伝ってまわり込むようになるので、切り揃えるのは茅一本以内の厚みで、切るか切らないかという加減でなければなりません。

武相荘の建物は、この土地が鶴川村であった頃からここにあった農家だそうですから、武蔵野の地の文化に配慮して棟や軒周りの意匠は関東の屋根のそれを踏襲するように努めました。
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一方で、建物自体が凍結保存の求められる建築史的な意味での文化財建造物ではなく、そこで営まれてきた暮らしの方に意義のある建物でもありますから、単に昔のやり方をなぞるだけではなく、美山の職人としてのこだわりも存分に発揮させて頂きました。

四隅のコーナーや軒のラインを、見た目に直線となるように仕上げることや、わずかに起り(ムクリ)をつけて屋根表面を平面に仕上げることなどで、我々の仕事を評価して依頼して下さったお施主さんのご期待に応えるためにも、建物の属する地域文化への敬意と職人としてのこだわりのバランスを取っていくことが、この屋根を葺いて行く中での大きなテーマでした。
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それが上手く行ったかどうかは、ぜひ武相荘を訪ねて皆さんご自身の目で確かめてみて下さい。

まだ、建物の裏手では大工さんの作業が残っているようですが、表側の足場は週明けにも外されて、新しくなった屋根を庭とともにご覧頂けるようになるはずです。

0122 刈込み(軒刈り仕上げ)

最後に軒裏を刈り落として茅葺き屋根は完成です。
茅葺き屋根は台風の強風や雪の荷重といった、全体にかかる圧力にはかなりの程度耐えますが、部分的に力が加わると変形しやすいので、仕上がった屋根にハシゴをかけたり踏んだりすることはご法度です。
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ですから、軒を仕上げたらもう屋根に登ることは無いように、上から足場を外しつつ刈りながら下りて来て、最後に軒を刈り落とすのがセオリーですが・・・・
まだ足場が残っているのに軒を刈っているのは、棟上げ式の都合で屋根の足場を外せなかったためです。

でも、大丈夫。屋根は4面あるので別の面から上り下りできますし、軒刈りは一発勝負の仕上げと言いながら、建物の裏側なら多少の失敗であればリカバリーも可能です。
と、いう訳で、ワカモノ達も先輩に混じって軒刈り。実戦を通してしか仕事は覚えられませんから。
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茅葺きの際に出るゴモクは有機肥料や天然マルチとして最高なので、お茶の栽培が盛んな地域であったりすれば、近所の農家の方々が軽トラの列をなして取りに来られます。
特に「すさ」になった刈りくずは使いやすくて重宝しますよ。

ところが昨夜に久し振りのまとまった雨が降ってしまい、雨を含んだ刈りくずは普通のゴモクよりも細かいだけに、格別重くなってしまって掃除は大変です。
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きれいに刈込まれた屋根は水はけも良く、朝日が当たると湯気を上げてたちまち乾いて行きます。
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ただ積まれただけの茅は雨に打たれれば芯まで濡れて、日光にあぶられても簡単に乾くことがありませんが、同じ材料が屋根に葺いておくと雨が染むことも無く常に乾いています。
当たり前のことなのですけれど。

さて表側の軒は腕利きの職人を揃えて、こちらは本当に一発勝負で刈り落としました。
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表の軒は家の顔ともいえるところで、地面からも近く良く見えますから、手直しの跡を残したりする訳にはいきませんので。

0118 刈込み仕上げ/屋根鋏の話

棟上げの式もすんで、本格的に刈込み仕上げに入ります。
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棟の方から順番に足場を外しつつ、軒の方へ向かって下りながら専用のハサミで屋根の表面を刈込み、整えて行きます。
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刈り揃えることで屋根の細かい凹凸を無くし茅そのものの断面も整えて、見た目に美しく水はけの良い、丈夫な屋根に仕上げます。
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しかし、それは茅の最も丈夫な根元の部分を捨ててしまうことにもなりますから、あくまでも刈り取るのを最小限に留められるように、葺いて上がって行く段階で屋根の平面がきれいに出来あがっていることが大切です。

刈り揃えた茅の断面がシャープに保たれるように、刈込みハサミは日に何度も研いで切れ味を保ちます。
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切れないハサミは体の負担になり集中力を切らすばかりではなく、刈る時に茅を潰すようなハサミでは、刈込みをする意味がありませんから。

ハサミは茅葺き屋根用に専用のものを、鍛冶屋さんに特注して打ってもらいます。
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用いる屋根の部分や用途によって大きさやかたちの異なる何本かを使い分けます。
さらに職人各自がそれぞれに使い易いよう工夫し注文するので、武相荘のような現場には様々なかたちのハサミが集まります。

しかし、現在この屋根ハサミを打って下さる鍛冶屋さんが少なくなってしまっています。
僕の弟子入りした十数年前には、美山の周りにも屋根ハサミを打てる鍛冶屋さんが何軒かありましたが、次々と廃業されてしまい、今では熊本と新潟に一軒ずつの鍛冶屋さんに頼っています。
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もともとハサミは2枚の刃物を組み合わせる手間がかかるうえ、職人の使う専用の道具は市場も小さくたいしたもうけも見込めないのに、口やかましい顧客ばかり相手にすることになりますから、余程腕に覚えのある(そして口は悪くとも心優しい)鍛冶屋さんでなくては、手を出すのをためらうのも仕方の無いことだとは思いますが。

茅葺きに限らず伝統的な技能の世界では、担い手の職人がいなくなる前に、職人の使う道具をつくる職人がいなくなるのではないかと、とても心配しています。

0115 棟上げ

神戸の茅刈りから戻ってみると、武相荘の棟は仕上がっていました。
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棟の端に草書体で彫り込まれた「水」の文字は、火伏せのおまじないです。

反対側の端には縁起の良い「寿」を。
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文字は茅をハサミで刈り込んで刻み、内側を黒く塗っています。

関西の場合入母屋の破風(ハフ=煙出)に意匠を凝らし、縁起の良い文字や家紋もそこに飾ることが一般的なので、茅に直接文字を彫ることはまずしません。
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これは、美山の屋根。

破風の無い寄せ棟の屋根が多い関東では、棟そのものをにぎやかに飾る技術に見事なものを見ることができます。
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筑波の「クレグシ」など技術として見事の一言で、職人として挑戦してみたい誘惑にも駆られますが、武相荘では葺き替え前の棟のデザインを踏襲して控えめに。

午後にお坊さんをお迎えして棟上げ式が執り行なわれました。
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工事中で立ち入り禁止だった作業足場の上にお供えが並べられて、関係者の方々も上ってこられました。
みなさん真っ直ぐ屋根に近づいて行って、まず触ってみます。

やっぱり触ってみたいですよね。
足場が外されたらもう触ることも近くで見ることもできなくなりますから、この機会に撫でてそれから上ってもみて、屋根と親しくなっておいて下さいね。
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棟上げのお祝いにお呼ばれして、お酒と会話に気持ち良くなるまで酔っぱらってしまいました。
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武相荘が多くの人達から大切にされていることを、あらためて深く胸に刻んだ一日でした。
そんな建物の屋根を葺かせてもらえるのは、職人としても本当にありがたいことです。

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070114 茅刈り体験会

藍那里山公園では里山を構成する自然環境のひとつとして、茅場(カヤバ=ススキ野原)の維持再生に取り組んでいます。
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公園内の茅葺き民家の屋根は、公園内の茅場で毎年刈り貯めた茅で葺き換えることを計画しています。

茅刈りを、広く来園者の皆さんにも参加を呼びかけて行うことで、茅葺きという文化に気軽に参加する機会を提供していければと思っています。
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今回は公園事務所が近隣の小学校を中心に募った募集に応じられた、小学生とその父兄への茅刈りを指導するように依頼されたので、武相荘の現場から丁稚サガラを連れて神戸の里山公園へと駆けつけて来ました。

何年も前に耕作放棄されて薮が茂るに任されていた休耕田も、毎年の茅刈りを欠かさず続けることで美しいススキ野原となりました。
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かつては農業をするための肥料や飼料として草刈りは欠かせなかったので、里山にはこのような茅場が必ずありました。

そこはスズムシやマツムシといった、澄んだ鳴き声で私達を楽しませてくれる虫達の棲み家でもあり、シカやイノシシの採餌場でもあり、万葉の昔から日本人に愛されて来た秋の七草も、全て茅場に生える草花なのです。
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茅葺きのために茅を刈り集めることは、貴重な動植物の暮らす生態系である茅場を守ることにもなるのです。

注意するべきことをきちんと伝えておけば、小学生が集めた茅束も立派に屋根葺きの材料に使えます。
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そして、冬晴れの日に茅場に入って鎌を使ったこと、カヤネズミの小さな巣をみつけたこと、茅葺き民家の縁側の日だまりで昼食のカレーを食べたこと、そのような思い出を持つ子供たちが、茅葺きを文化として受け継ぐ社会を培って行ってくれることでしょう。

集めた茅束は冬のあいだ乾燥させるために、交流民家の前に「ニウ」に仕立てておきます。
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晴天に恵まれて子供たちも大人も楽しんでもらえたようで、夜行バスを使った0泊3日の強行日程で駆けつけた甲斐がありました。

茅葺屋主催の茅刈り(カヤマル'07)は1月18日に神戸で開催に向けて調整中です。
開催要項その他は正式に決まり次第お知らせします。
参考までに昨年のカヤカル'06@神戸の様子です。
ぜひご参加ください(まだ募集要項も示さず申し訳ありませんが・・)