投稿者「webmaster」のアーカイブ

0113 棟収め

この冬はじめて、うっすらとですが霜が降りました。
0113P1060378.jpg
足場丸太が凍って地下足袋が辛くなる、いつもの冬がうそのようです。

棟まで葺き上げた屋根の、表裏の高さを揃えて棟を積むための基礎を揃えます。
0113P1060379.jpg
表裏の押さえ竹の高さは、両方の竹を足で踏んでみて、人間の平衡感覚をたよりに確認します。
茅を抜いたり差したりしながら、屋根の表面から押さえ竹までの深さも勘案しながら調節します。

棟と平行に(つまり今まで葺いて来た茅と直行する向きに)茅を棟のかたちに積み上げます。
0113P1060382.jpg

最後の押さえ竹から針金をとってカマボコ型に締め上げて、棟のかたちをを整えます。
0113P1060386.jpg
関西のように三角に高く積み上げず関東風の丸く低い棟ですが、それでも一度に積み上げるのではなく何回かに分けて全体が均等にしまるようにします。

棟の基礎が水平でなかったり、棟そのものが上手く積まれていなければ、時間とともに棟が歪んだり傾いたりしてしまうことになります。

棟の端から茅がこぼれるのを防ぎ意匠としても目につく「マキワラ」を、水海道の坂野家に続いて丁稚サガラが制作しました。
0112P1060354.jpg
数をこなして関東風のマキワラつくりでは、関西の職人では一番の腕前になったかもしれません w

棟の中身となる「荒棟」が積み上がりました。
0113P1060384.jpg
この上に風雨から棟、さらには屋根全体を守るための杉皮と瓦を被せて養生し、仕上げます。

0110 古茅で庭つくり

年が明けて、ようやく武相荘の雑木林も裸となりました。
0112P1060360.jpg
すっかり葉を落とした林の枝越しに見る、冬晴れの空の青の清々しさ。

武相荘には葺き替えで生じた古茅を、堆肥として活用する畑はもうありません。
0109P1060341.jpg
古茅は丁稚のワカモノたちが、茅運びの合間を縫ってカブトムシの幼虫と一緒に、竹薮にきれいに敷きつめました。

個人的な好みなのですが、人間が型にはめたような作為的な公園には落ち着けない一方、全くの成り行きに任せたままの自然には「荒んだ」印象を覚えてしまいます。
自然とともにある人の営みが、積み重ねられてできたような風景が好きです。

僕としてはこの竹薮は、古茅=建築廃材(ゴミ)が捨てられる前より「美しく」なったと感じるのですが、いかがなものでしょうか。

さて、葺き上げ作業の方はまもなく終了の見込みです。
0109P1060350.jpg

毎度のことながら棟まで葺き上がってみると、毎日少しずつの作業の積み重ねでこれだけ大きなものが出来たものだと、あらためて我ながら感心してしまいます。
0109P1060324.jpg
作業は終盤のヤマ、棟収めへと続きます。

0107 仕事初め

(遅くなりましたが)
新年明けましておめでとうございます。

0107P1060303.jpg
今年はシーズンにはウミガメの上がる海南の浜で、随分久し振りに初日の出を拝んできました。

さて、武相荘の現場初めは、昨日いきなりの嵐で水を差されてしまいました。
0107P1060314.jpg
他の現場の都合で2人抜けて1人加わり、少しチーム編成が変わりましたが、今日から新しい年の仕事が始まりました。

葺き上げもそろそろ後半に差し掛かっています。
0107P1060317.jpg
今年も事故など無いようにして、良い屋根を葺いて行きたいものです。

061228 寒中ツーリング

美山では冬支度がすっかり整っていて、茅刈りもすでに済ませられていました。
1228P1060285.jpg
雪の多い日本海側では、まだススキが枯れきっていない年内に早めの茅刈りをするので、刈ったススキは雪で倒されないように束にして立てて、春まで風に曝して乾かします。

しかし、今年はまだ雪らしい雪は降っていない模様。

自家用車は武相荘の現場に置いて来たので、神戸の実家には単車で帰省することに。
1228P1060282.jpg
美山町周辺は、景色良く、道広く、交通量少ない、関西有数のツーリングスポットなのですが、そこに暮らしながら休みの日=雨の日という暮らしなので、なかなか単車に乗る機会がありません。

以前、夏の夜に単車を走らせたら、体中が虫だらけになってひどい目にあってしまったし・・・
そもそも、景色が見えないことには走っても楽しくないですしね。

夕方篠山を過ぎたあたりから急激に気温が下がって来ました。
ようやく、本格的な冬の到来でしょうか。
美山を出るのが一日遅かったら、雪で動きがとれなくなっていたかもしれません。

1227 葺き上げ工程

最後に残っていた古屋根も全て取り払い、あとは棟まで葺き上がって行くばかりです。
1226P1060248.jpg

日々ひと針ずつヨシを並べては止める作業を繰り返して、ここまで葺き上がって来ました。
1228P1060270.jpg
ヨシの葺き上げ工程は藍那里山公園の交流館の現場で詳しくご紹介していますが、あらためてざっとした流れを。

ヨシは滑りやすい素材なので、滑り止めに板を立ててから並べます。
1228P1060236.jpg

真っすぐに並べられるように捌かなければいけないのはもちろんですが、ヨシを屋根に置く勾配が立ちすぎたり寝すぎたりせず適切な勾配を保つように、長さや太さの微妙に異なるヨシを使い分けていくのが難しいところです。
1228P1060271.jpg

丸太で仮止めしてから板を外し、叩き揃えて屋根のかたちに整えます。
1228P1060171.jpg

押さえの竹を屋根裏に入った人と共同作業で、下地の垂木に縫い止めて茅を固定します。
1228P1060273.jpg
この作業を繰り返して葺き上がって行きます。

本日で年内の作業はひとまず終了です。
1228P1060274.jpg
しっかりと雨養生して現場の掃除をしてから、お正月の準備に関西に帰りました。

1224 軒のかたちを変える

今回の葺き替えでは隣接棟の2階増築によって、一部の軒に改修が必要となっていました。
12軒P1060023.jpg

増築された2階の壁が茅葺き屋根の軒に接してしまっているため、雨仕舞いが不自然なことになってしまっています。

12軒P1060077.jpg

12軒P1060078.jpg
また、このように軒先に体を入れて作業するスペースが全くないと、そもそも葺き換えること自体ができません。

屋根の形状を変更するためには、それに合わせて下地を作り直す必要があります。
12軒P1060167.jpg
破断したスミレンの補修に合わせて、問題の部分の軒下地にも手を入れます。

隣接棟に接する部分の軒を切り上げて、空いたスペースに雨水を受ける樋を設置します。
12軒P1060188.jpg

簡単な下地補修なら我々屋根屋で済ませますが、このような作業には大工さんの手を借ります。

12軒P1060190.jpg
茅葺きの軒下地も樋の高さに合わせて変更します。

さらに板金屋さんに仕上げてもらって、新しい軒を付け直します。
12軒P1060218.jpg
これで茅葺き屋根からの軒垂れが、手前の下野庇に速やかに排出されるようになりました。

隣接棟とのあいだに充分な隙間を設けて、新しい軒が取り付けれれました。
12軒P1060257.jpg
茅葺屋根は時間が経つとその形状が変わって行きますので、それを見越して後々問題が生じることの無いようなデザインにしておかなければなりません。

1221 棟の解体

歪んだ現状の棟は、屋根を葺いて行くにあたっての目標を過たすので、撤去してしまうことにしました。
1223P1060204.jpg
正しい下地の棟木とスミレンの位置を確認しておかないと、最後になってとんでもないことにもなりかねませんので。

今年になってから鎌倉や茨城で何回も見て来た、瓦で収めたタイプの関東の棟です。
1223P1060212.jpg
何故か最近この棟に縁があります。

でも、何となく感じが違うな、と思っていたら、瓦の下の養生に引かれたガルバリウム板を剥がすと、潰したヨシが積まれていました。
1223P1060215.jpg
おそらく琵琶湖産のヨシで、屋根全体に差し茅されていたヨシと同じものです。
つまり差し茅の際に棟も傷んでいたので、どうやら滋賀の職人さんによって、関東風に似せて積み直されていたようです。

正しい葺き止めの位置を確認して、あらためて安心して屋根葺きに専念できるようになりました。
1223P1060223.jpg

武相荘もそろそろ冬枯れの景色となりつつあります。
1223P1060242.jpg
それでもなお、毎日尽きることなく落ち葉が舞い落ちて来ます。

葺きかけの屋根にもすぐに積もってしまいます。
乾いているから良いようなものの、大量の濡れ落ち葉が張り付いたいりすれば、もちろん屋根の寿命に良いことはありません。
1223P1060245.jpg
まあ、でも、葺いて行くあいだに関しては、雪が積もるよりはずっとましですけれど。
美山なら例年この時期になると、雪かきしながらの屋根葺きを覚悟しなければならなくなりますので。
今年はまだ一度も屋根に霜も下りていないし、暖かいなあ。

1218 骨折・脱臼(屋根が)

今日は朝から快晴でした。
1218P1060197.jpg
晴れた朝の冷え込みは堪えますが、じめじめして変に生暖かいよりも、やはり冬はパキッと冷たく乾いた朝が、らしくて良いです。

東側の小間は全ての古茅を取り除きました。
と、いうのもスミレン(隅垂木)が折れてしまっていて修理が必要だったからです。
1218P1060163.jpg
このスミレンは折れたままで何回も葺き替えが繰り返されていたようです。
茅屋根の仕上がりを揃えるために、折れてへこんだ下地の上だけとてつもない量の茅が葺き重ねられていました。

折れたままで何十年も台風や地震をやり過ごして来た訳で、屋根屋の言葉で「総持ち」と言いますが、茅葺き屋根が屋根全体で荷重を分散して受ける構造であることが、はからずしも証明されています。
1218P1060169.jpg
とはいえやはり下地が揃っていなければきちんとした屋根は葺けません。
養生シートのなかった頃には、大きく屋根をめくるリスクを避けるために、あえて修理をなおざりにして来ていたのかもしれませんけれども。

折れたスミレンを新しいものに交換し、外れてずり下がった継手を、今回はジャッキもチェーンブロックも使えない場所だったので、「人力」で担ぎ上げて嵌め込みました。
ヤレヤレ。
1218P1060174.jpg

新しいヤナカ(母屋)を入れて補強し、横竹を整えて下地の完成です。
1218P1060198.jpg

これで、最後まで手をつけていなかった東側の小間にも軒を付け始めることが出来ました。
1218P1060201.jpg

軒が付いたら気持ちの上では半分済んだようなもの。
ひとつ目の大きな山は越えたので、あとはどんどん葺いて行きます。
1218P1060177.jpg

1215 続・軒付け

冬の雑木林と言えば、落ち葉を踏んで歩く楽しさ。
1215P1060139.jpg
美山に住むようになってから忘れていましたよ。
日本海側では落ち葉は常に湿っていて、踏んでもかさかさと鳴ってはくれませんから。

先に軒を付けた表側はそろそろ葺き上がりの工程に入りました。
1215P1060144.jpg

土手のようだった裏側にも軒が付きつつあります。
1215P1060148.jpg

軒を解体する際に、四隅に「つくりかや」が取り付けられているのを見付けました。
1215P1060140.jpg
関東の職人さんはあまりされないと思うのですが、前回の葺き替えも西国から来られた方がされたのでしょうか。

こちらは拙作のつくりかやを取り付けた新しい軒です。古いものとはかたちが少し異なります。
1215P1060141.jpg
僕の目から見ると取り外したつくりかやは、軒を付けて葺き上がって行くにあたって、どうにも使いずらそうなのですが、これを取り付けた職人さんにとっては、そのキャリアの中で磨かれたベストのかたちだったはずです。
どのように屋根を収めていたのか、ぜひお話を聞いてみたかったものです。

今年は東京でも冬型の気候配置が安定してくれず、12月なのに季節の変わり目のような天候不順な毎日が続いています。
1215P1060155.jpg
それに加えて、宿舎がノロウィルスの洗礼を受けてしまいました。こういうとき共同生活は脆いです。
今は回復しつつありますが、ここ何日かはなかなか前線に人数が揃えられませんでした。

皆さんも、時節柄うがい手洗い励行して下さい。

1212 雑木林と茅葺き屋根

今回は覚園寺ほどの巨大な軒を付ける訳ではありませんが、関東風の覗いた(水平にせり出した)軒を付けるために、やはり力竹で軒を補強します。
1212P1060095.jpg

表側の軒が付いたので、小間(妻側)、裏側と軒付けのために古い屋根を解体して行きます。
1212P1060079.jpg
こうして見ると土手にしか見えませんが、裏面の大間(広側)の屋根です。

こちらにもカエデやケヤキの若木が育ちつつありました。
1212P1060127.jpg

とりあえず、表面の土壌化した層を欠き落として屋根を乾かします。
1212P1060131.jpg
ところで茅葺きの手入れのために屋根に生えた苔を落とすべきかどうかは難しいところです。
屋根は乾いていた方が良いのは当然なのですが、屋根の表面は少しずつ分解されて減って行くので、あまり頻繁に苔を落とすとその速度を速めてしまいかねません。
また、傷みが進んだ屋根では、苔をどけるとここの屋根のように穴が開いていて、止めを刺してしまうことにもなります。

春に屋根に積もった雪が落ちる時に、一緒に落としてくれるくらいで丁度良いかもしれません。

そして、表側程ではありませんでしたが、やはりこちらにも立派なカブトムシの幼虫が。
1212P1060115.jpg
それにしても、大きい!
小学生の頃に飼っていましたけれど、こんなに大きかったかなあ。
建物を博物館として活用している関係でエアコンで全館暖房していますが、昔の家なので断熱材の入っていない天井から熱が逃げて、屋根裏は相当暑いようですが、それと関係あるのでしょうか。温室栽培。

ひょっとしたら、全館冷暖房は屋根の傷みとも何らかの関係があるかもしれませんね。
茅葺きの良さを活かしながら、現代的な生活にも適合させるための工夫を重ねて行かなければと思います。

武相荘の敷地内には本当にきれいな雑木林が残されています。
5,6年前に訪ねた時には、周りにもまだ他に雑木林や田んぼが見られたはずでしたが、今回来てみるとここだけが孤島のように残されていました。
1212P1060105.jpg
武相荘に町田中のカブトムシが集まって来てしまったのでしょうか。