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0911 久し振りの美山

美山町の「かやぶきの里」こと、伝統的建造物群保存地区に指定されている北の集落で仕事が始まりました。

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考えてみると美山での仕事はほぼ一年ぶり。
現在でも茅葺屋根の葺き替えが当たり前の美山では、お施主さんはもちろんご近所の厳しい目にも鍛えてもらって修行して来ました。
地元ならではの緊張感もありますが、やっぱり落ち着きます。
何と言っても、住宅として使われている屋根の葺き変えには、文化財等とは異なるないやりがいがあります。

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まずは足場組みから。
軒の高さに合わせて丸太足場を番線で組んで行きます。

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夕方集落裏手の山に、「ユキワリ(棟飾りの上に横に渡す丸太)」にする杉を搬出に行きました。
茅倉庫に運んで乾燥させておきます。

060907 待望のプラン提示

建築士のヤナガワさんと、小浜の「風音(ふうね)」というお店で打ち合わせました。カレーが美味しいお店でした。
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鎌倉での打ち合わせ で話した僕のコンセプトと図面を下敷きにして、3つのプランを提示してもらいました。
全てのプランにおいて、敷地にあわせて下屋の奥行きを縮めてあり、僕のプランでは決められなかった階段の位置が検討されています。

A案:僕の描いた図面をもとに改良されたもので、下屋を薄くした分書斎の北側にまわり込むキッチンが、閉ざされた印象を受けないように、居間に対してオープンキッチンとして、居間が家族の中心となるように計画されています。
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階段は居間の北西角に曲がり階段とし、階段で出来たコーナーを一段下げて薪ストーブコーナーに。

A-2案:A案のストーブコーナーを設けず、階段を居間と書斎のあいだに設置したものです。
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階段は全体が透けている力桁階段となっているため、居間と書斎との通風やつながりは保たれています。

B案:キッチンと居間、土間、さらには庭もつなげて、季節の良い時には大勢集まったりして楽しめます。冬は、かっちり閉じることも可能です。
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水廻りをいじめることなくオープンキッチンが可能なので、トイレ、洗面脱衣にそれぞれ適切な広さが確保できた、バランスの良い案です。

C案:大きなカウンターを中心にしたキッチンを真ん中に配置し、居間と繋がった大きな空間をつくり、広々使えるシンプルな平面となっています。
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建具を設ければ、冬はキッチンと居間を仕切ることも可能です。階段はA-2案と同じ配置。

いずれのプランも魅力的です。あまりのんびりしている時間はありませんが、じっくりと検討して選ばせてもらおうと思います。
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国宝の本堂と三重塔のある明通寺が近くなので、打ち合わせのあとお参りしてから帰りました。

0904 VS カラス

かやぶき音楽堂、竣工いたしました。
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ところで、かやぶき音楽堂に差し茅に来るのは、始めてではありませんでした。
駆け出しの頃に今回手を付けなかった側の大間を差し茅しました。
屋根にカブトムシの幼虫がわいて、それを食べるためにカラスがほじくるので傷むという話でした。

茅葺き屋根が局所的に傷むのは、材料や葺き方に問題があって雨水が染み込んだり、周囲の立ち木や日当りのせいで乾きにくかったりすることが原因となるのが普通です。
ところが、カブトムシの仲間の幼虫は、乾いた屋根までせっせと食べては土に変えてしまいます。もっとも、乾いた屋根よりは居心地のよい腐葉土が周りの地表にたくさんあるので、問題になるほど屋根にわく事はそれほど多くはないのですが、修理しても一匹でも残していると再び致命的な損傷に至ってしまう、茅葺きにとっては癌のようなものです。
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とにかく、土に変わった部分の屋根と幼虫を全て取り除き、傷んだ箇所を差し茅した後に、お施主さんの希望で「カラス除け」のためにCDをたくさん吊っておきました。

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禅定寺ではアワビの殻 を使っていましたが、この手の「光りモノ」が鳥除けとしては気休めにしかならないのは、ベランダのハト除けやゴミ集積所のカラス除けで皆さん経験されている通りです。
こちらでもカラスはすぐに慣れてしまって効果は限定的だったようで、その後もカブトムシ除けに屋根にクレオソート(石油系木材用防腐剤)を噴霧したり、色々と試行錯誤を繰り返されていたようです。

で、今回訪ねてみると問題の側の大間には、ステンレスのワイヤーが張り巡らされていました。
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これだけしておけば例えカラスが慣れてしまうことがあっても、屋根に止まる事は物理的に不可能でしょうね。
今のところカブトムシによる被害も出ていないようです。
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まあ、少々うるさい気もしないではありませんが、これだけの大屋根を維持して行く苦労を思えば、効果のあるカラス除けを設置できたのは大きな事だと思います。

0903 差し茅の仕上げ

昨夜、社に祀られていた神輿が、集落内を練り歩いて行きます。
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1ヶ月に渡ったかやぶき音楽堂暮らしも、間もなく終了です。
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最後に残った小間も、仕上げの軒刈り。
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差し茅をする段階で屋根の平面などのかたちがきちんとできていれば、刈り込み仕上げも手間がかからずはかどります。

0902 祭りのハシゴ

完成した方の小間は足場も解体したので、一服するところは空が広くなりました。
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残りの小間の差し茅もほぼ終了。
あとは仕上げを残すのみです。
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その夜、胡麻の八幡さまのお祭りでした。
世話役の方が軽トラでまわりながら、スピーカーで「みんな家から出て来なさーい」と呼んでまわっていたので、呼ばれて行って来ました。
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お社には神輿が祀られて、境内には地元の皆さんの手作りの屋台が建ち並び、盆踊りは無いけれど昨夜の僕の地元のお祭りよりずっとにぎやかで、いかにもお祭りな雰囲気を楽しませて頂いて来ました。

かやぶき音楽堂に戻ってあらためて夕食。
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今夜はナカモリ料理長ではなく、お施主さんの息子さんが手料理を振る舞ってくれました。
何故か北アフリカの料理が並びます。
めずらしくておいしい料理でお腹が一杯になりました。

060901 八朔のお祭り

美山の僕の暮らしている集落では、八朔のお祭りを9月1日にずらして行っています。
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この日に合わせて、午前中は集落総出で林道の草刈りをします。
その後昼から青年団?で盆踊りのやぐら建て。

夕方になると茅葺きのお堂に料理を持ち寄って集まり、お地蔵さんにお経を上げてから皆で頂きます。
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「持ち寄って」といっても僕は一人暮らしなのに甘えて、食べる方専門でした。

数年前まで盆踊りもこの地蔵堂の周りで行っていました。
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この光景は好きでしたけれども、日が暮れてから尾根の上の高台にある地蔵堂まで登ってくるのは大変な事もあって、今はゲートボール場の隣りにやぐらを組んでいます。

これは今年。
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我々青年団?ではやぐらを建てた後はかき氷を作ったり、金魚をすくうためにたらいに放したりするだけですが、
こうやって集落の人達が集まって下さって、茅葺きが近くになくなっても良い光景です。

0829 もう少し差し茅は続く

かやぶき音楽堂のある胡麻にはとてものどかな風景がひろがっています。
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山や家の雰囲気は同じ丹波に違いないのですが、美山には無い広々とした感じが和みます。
山一つ越えただけなのに。

そして、かやぶき音楽堂の中はこんな感じになっています。もちろん、今だけ。泊まり込みなので。
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テントは・・・蚊帳だと思えば・・・
ハンモックは・・・?    銅鑼は私物ではありません。

残っている小間は午前中はずっと日陰で、夏に仕事するには最適です。
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しかし、日当りが悪いというのは、茅葺きにとっては厳しい条件です。
とはいえ僕とヤマダさんでここを担当した以上は、最初に傷んで来たらワカモノ達に示しがつかないので、差し茅にも気合いが入っております。

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眺めは抜群のかやぶき音楽堂なのですが、足場はこの通り。
この高さは結構怖いです。

0827 まだまだ差し茅は続く

入り口側の小間は完成して、大間の方も仕上げに入りました。
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ハサミはあくまで仕上げにかけるもので、差す過程である程度は屋根の平面ができあがっているのが理想です。
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差して上がる時にきちんと屋根のかたちが出来ていないと、足場用に吊ってある丸太を外してから、ハサミをかける前にでこぼこをならす調整が必要となり、余計な手間がかかってしまいます。

丁稚のワカモノ達が調整に苦労しているあいだに、反対側の小間にも足場を組んで差し茅を始めました。
今回のように屋根全体に差し茅をしてかたちを作り直す「総差し」では、軒を充分な厚みで丈夫につくっておく事が、長持ちさせるためにも肝心となります。

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古くなった屋根では手前のように軒の厚みは半分程に減っています。ここに茅を差すことで軒をつくり直して行きます。

ところで、我々が毎日使わせてもらっている洗濯機で、この白いアマガエルがいつも休んでいます。
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アマガエルは住む場所に合わせて体の色を変えているので、茅葺き屋根の上で暮らしている灰色の個体は良く目にしますが、ここまで白くなったのは始めて見ました。

間違って洗剤で洗ってしまった訳ではありません。

060823 旧南桑田郡の茅葺き

かつて各地に出稼ぎして活躍していた、芸州屋根屋と呼ばれる広島の茅葺き職人さん達の記録をされている、マイミクの 青原さとし さんが出稼ぎ先の一つである亀岡に、調査のため訪ねて来られました。
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亀岡市南部の旧南桑田郡は、京都府と大阪市の県境=丹波と摂津の国境にあたる地域です。
美山の近所でもあるので、ご案内がてらに同行させて頂きました。

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自分とは立場の異なる方がヒアリングする内容は、とても興味深く勉強になります。

調査の結果はいずれ 青原 さんが記録映像へとまとめられて、発表されるのを楽しみに待たせて頂いていますが、僕個人の印象としては、亀岡盆地の南側では茅葺き職人と住人の方との関わり方が、我々の地元である北側とは随分異なる事が驚きでした。

0822 差し茅はつづく

小間(妻面の屋根)といえども、規格外の大きさ。
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ようやく一面仕上がりましたが、より大きな大間(平面の屋根)はもう少し差し茅をしなければ刈り込みにはかかれませんし、反対側の小間はまだ手つかずです。
今年は大きな屋根が続くなあ。

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暑い中で炎天下の屋根の上での作業に向かうパワーの源は、やはりおいしいご飯です。

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「サラダうどん、棒棒鶏仕立て」うどんが見えないほどてんこ盛りの具。

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そして本日は「野菜たっぷりタイ風カレー」

何だかこのブロク「賄い飯」みたいになって来ましたな。