茅葺き現場日誌@藍那Cハウス棟」カテゴリーアーカイブ

0306 竣工、そしてゴモクの行方

棟の際から刈りはじめた刈込み仕上げも、吊り足場の丸太をはずしながら順番に下って来て軒裏を刈り落とし、軒の表を刈り揃えたらついに竣工です。
P3061567_2.jpg

2年越しの仕事がようやく終わりました。
P3151625.jpg
断熱性に富みながら通気性も持つというストロウベイルハウスの魅力を引き出すには、同様の性能を発揮する茅葺きで屋根を葺くに限ると常々思っていました。
今回それが実現はしたものの、この建物の設計は茅葺き民家らしく広々とした開口部を持ち、壁の断熱効果を活かすオーソドックスなストロウベイルハウスとは随分印象が異なります。

さて、屋根を葺いている間は大量の茅くずが、刈込みに入ってからは大量の「すさ」が茅屋根葺きの中では日々「生産」されていきます。
P3061557.jpg

もちろんこれらのゴモクは建築廃材などではなく、堆肥原料としても天然マルチとしても素晴らしい農業資材です。
P3061563.jpg

今回は手伝いチームを率いてくれた、百姓イマイさんの畑でじっくり熟成堆肥に育ててもらえることになりました。
P3241718.jpg
茅葺きの建物は竣工が完成ではありません。身近な草を屋根に使い、使い終われば土に還る、循環の環が繋がって成長し続けて行きます。
近い将来は里山公園の中でも、来園者とともにその環が繋がって行くようになることでしょう。

0305 しつこく雪の季節

仕上げの刈込みもいよいよ表の一面を残すのみとなりました。
P3051545.jpg
今日は天気もよくて仕事が捗ります。

と、思っていたら一天俄にかき曇り、結構な勢いで雪が降り出しました。
P3051552_2.jpg
断熱効果に優れた茅屋根にはすぐに雪が積もり、積もると屋根の面を見通すことが出来なくなり、刈込みはとても難しくなってしまいます。

と、悩む間もなく雪は止み青空が広がりました。
P3051547.jpg
やれやれと胸を撫で下ろし、屋根に積もった雪を掃き落とします。

気を取り直して刈込み再開。
P3051549_2.jpg
ところが西の空にはもう次の雪雲が迫って来ています。

結局雪が積もって、雪を掃いて、晴れて、を3回も繰り返してしまいました。
P3051553.jpg
青空に舞う風花。
いつまでも雪の季節ではあるまいに。せわしない日でした。

0229 刈込み

棟も無事に収まり仕上げの刈込みが始まっています。
P2291489.jpg

屋根ハサミで茅葺き屋根の表面を刈り揃えて行きますが、一番丈夫な茅材の根本の部分を刈りすぎることの無いように、葺いて上がる段階できちんと屋根の面を出しておかなければなりません。
P3011495.jpg
傷んだ根本やケバをわずかに刈り揃えて行くことで、丈夫で美しい屋根の仕上がりを目指します。

刈込むハサミの先に太陽の暈の虹の環が。
P2291491.jpg
幻想的できれいな風景ではありますが、明日からの天気が心配です。

0224 まだ雪の季節

さらに反対側の屋根も葺き上がり、いよいよ棟を積もうという時に、また雪で足止め。
P2241468.jpg
瀬戸内気候で本来なら冬場に乾燥して天気の良い日が続く神戸では、冬は茅葺き屋根葺き替えの好適期なのはずなのですが。

そういえば一昨年に交流民家を葺いた時も、神戸らしからぬ雪の多い年でした。
P2241473.jpg
藍那は雪と縁があるのか?

0221 続々・葺き上げ

葺き並べた茅の穂先が棟を越すようになったら、片側の屋根だけを先に葺き上げてしまいます。
両方から並べたら押し合いになってしまいますので。
P2201433.jpg

押さえ竹や縫い止めた針金に負担をかけないように、なるべく多くの人数で並んで掛け声をかけながら、息を合わせて押さえ竹を踏み固める様は、見ていると楽しいというか滑稽でもあります。
P2201437.jpg
しかし、体重をかけて引っ張っている針金が万一切れた場合に備えてバランスをとりつつ、渾身の力で踏み固めるのはなかなかの重労働です。
何より、地下足袋で竹を踏みつける足の裏が痛い。でも、靴でやると力の加減が出来ず竹が割れたりして具合が悪いので。

そんな苦労を重ねつつ片側の屋根は葺き上がりました。
P2211444.jpg

0213 雪の季節

所用があり美山の自宅の様子を見て来ました。
0204_1254.jpg
今シーズンは晩秋にカメムシが多くて嫌な予感がしていましたが、やはり雪の多い冬となってしまいました。
「カメムシの多い年は大雪」

雪が積もらないように軒先の足場板は全てはずしてあるので、雪下ろしをしようにもあがることも出来ません。
0213_1323.jpg
まあ、屋根の上においておけば晴れた日には溶けるし、これ以上は積もらないだろうと思っていたのですが・・・一週間ほどあけて行ってみると更にひどいことに。
春まで無事なのを祈ることしか出来ません。

カメムシの多い年だからなのか、神戸の藍那まで雪に見舞われることが多くなってきました。
02131391.jpg
本格的な雪の季節になっては、茅屋根葺きは捗りません。

0208 葺き上げ

既に難しい軒の部分は済ませてありますから、どんどん葺いていきます。
02071351.jpg

並べた茅を屋根に固定する押さえ竹を締めつける時には、なるべくたくさんの人数が並んで呼吸を合わせて踏みしめます。
02071353.jpg
ひとりで締めると押さえ竹や、それを縫い止めている針金に負担がかかって折れたり切れたりするし、もちろん並んで締めた方が良く締まるからです。

あいな亭に集まったメンバーほぼ全員がこちらへスライドして来てくれているので、葺き上げはぐんぐん進みます。
02081354.jpg

0205 Welcome back

さて、「あいな亭」は竣工しましたが、藍那での屋根葺きはまだ終わっていはいません。
02051330.jpg
ストロウベイルハウスの屋根がまだ途中だったのを忘れてはいませんよね?

暫く放っておかれた屋根を手直しして破風板を取り付け、のべ茅を入れて葺き上げ再開に備えます。
02051329.jpg

こちらはすっかり足場が解体されて全景が現れたあいな亭。
02061334.jpg
神戸市内でも有数の規模の大きな茅葺き民家だったこの家。解体される前にも何度も通いましたが、こうして見ると随分と雰囲気が変わりました。
屋根はオリジナルに忠実に葺いたつもりでしたが・・・建物は建っている場所にも、長い時間や人々の想いの込められた必然がありますから、古材を用いても移築すればその歴史を引き継ぐことは難しいのかもしれません。
もちろん解体されてしまうことを思えば、ここ藍那の里山公園で新たな歴史を刻みはじめたことは、とても喜ばしいことですけれども。

1212 ひと休み

ストローベイル(正確には稲藁ベイルですが)が運び込まれて来ました。
1212PC140469.jpg
ストローベイルハウスと言ってもベイルのブロックを積み上げて家にするのではなく、木造在来の柱梁構造に断熱壁材としてベイルを使用するようです。
日本の法規制を考えれば賢明な方策だと思いますし、そうでなければ茅葺き屋根を支えることもできないでしょうし。

屋根の格好も次第についてきて、建物の内装工事も本格化して来ましたが、クラブハウス棟の屋根葺きはここで一旦お休みにします。
1212PC120461.jpg
今回公園内に建てられる、もう一棟の茅葺き屋根を先に仕上げてしまいます。
限られた人員を振り分けるよりも、集中して一棟ずつ仕上げて行った方が効率が良いという判断です。

これは先日打ち合わせに赴いた際の写真。東日本なら珍しく無いサイズかもしれませんが、神戸では指折りだった大きな茅葺き民家を移築して来ています。
1212PB270394.jpg
鳶さんが素屋根をかけてしまう前なので、骨組みだけでも車などと比べて大きさを感じてもらえるのではないでしょうか。

こちらの現場は、ヤマダさんの山城萱工房が仕切ります。
1212PC100450.jpg
クラブハウス棟の一時撤収準備と平行して、既に下地組みが進められています。明日からは茅葺屋もこちらに本格的に合流します。