合併浄化槽の本体がやって来ました。
下水処理施設は、流域下水道>集落排水施設>個別合併浄化槽と、規模が小さくなるにつれて無駄が省かれていく印象を持っていますが、いかがなものでしょうか。
我が家専用の下水処理場ですから、「水に流す」ものにも自ずと気を使うようになると思いますし。
今までの汲取便所にも特に不満はありませんでしたが、今の時代にどうしても来客を選ぶことにはなりました。
まあ僕にとっても、自分が出したものを確認できるようになるのは良いなあと思っています。
「茅葺屋の住まい@砂木の家/新築」カテゴリーアーカイブ
060924 敷地の地盤
合併浄化槽の設置工事が始まりました。
「初代砂木の家」は「砂木の家」が竣工後も残すつもりなので、外便所を設けて早速浄化槽を動かすつもりです。
田舎の暮らしでは家の外にもトイレがあると、何かと便利ですからね。
すでに付き合いの長い土地なので地盤調査などは行っていませんが、実際に地面の中を覗いてみたのは始めてです。
この深さでは岩盤は出ませんでしたが、湧水もほとんどなく安定した土地という印象です。
美山は地下水位が高くて水が豊富なのは良いのですが、家のまわりに水が滲み出して、ただでさえ湿度の高い土地をますます湿っぽくしてしまっていることが多いのです。
実は集落の墓地のすぐ隣りという敷地です。お墓のある場所は長く災害に遭わず日照などの条件にも恵まれた土地ですから、もともと地盤に関してはあまり心配していません。
060915 敷地が広くなりました
060907 待望のプラン提示
建築士のヤナガワさんと、小浜の「風音(ふうね)」というお店で打ち合わせました。カレーが美味しいお店でした。
鎌倉での打ち合わせ で話した僕のコンセプトと図面を下敷きにして、3つのプランを提示してもらいました。
全てのプランにおいて、敷地にあわせて下屋の奥行きを縮めてあり、僕のプランでは決められなかった階段の位置が検討されています。
A案:僕の描いた図面をもとに改良されたもので、下屋を薄くした分書斎の北側にまわり込むキッチンが、閉ざされた印象を受けないように、居間に対してオープンキッチンとして、居間が家族の中心となるように計画されています。
階段は居間の北西角に曲がり階段とし、階段で出来たコーナーを一段下げて薪ストーブコーナーに。
A-2案:A案のストーブコーナーを設けず、階段を居間と書斎のあいだに設置したものです。
階段は全体が透けている力桁階段となっているため、居間と書斎との通風やつながりは保たれています。
B案:キッチンと居間、土間、さらには庭もつなげて、季節の良い時には大勢集まったりして楽しめます。冬は、かっちり閉じることも可能です。
水廻りをいじめることなくオープンキッチンが可能なので、トイレ、洗面脱衣にそれぞれ適切な広さが確保できた、バランスの良い案です。
C案:大きなカウンターを中心にしたキッチンを真ん中に配置し、居間と繋がった大きな空間をつくり、広々使えるシンプルな平面となっています。
建具を設ければ、冬はキッチンと居間を仕切ることも可能です。階段はA-2案と同じ配置。
いずれのプランも魅力的です。あまりのんびりしている時間はありませんが、じっくりと検討して選ばせてもらおうと思います。
国宝の本堂と三重塔のある明通寺が近くなので、打ち合わせのあとお参りしてから帰りました。
060808 建築家のための茅葺きツアー
砂木の家の図面を起こしてくれている建築士のヤナガワさんが、学生のトヨマキさんを連れて美山を訪ねてくれました。
茅葺きの特殊性を理解して頂かなければ、その設計図を描くことは不可能なことですから。
きたむらではナカノさんたちが葺き替えをされている現場も見学させて頂きました。
内部を公開している資料館では屋根裏に潜り込んで、茅屋根の構造材が総持ちになっている様子について、解説させてもらいます。
茅屋根に窓を穿つイメージを持ってもらうために、きたむらよりさらに奥へ入ったところに建つ、イギリスの茅葺き職人さんが葺き替えて、屋根に窓を設置した家も見に行きました。
因にこのお宅の葺き替えを手伝ったことが縁となり、僕も半年程イギリスへ当地の茅葺きを勉強しに行くことが出来ました。
この家の窓は屋根裏部屋のためではなく、明かり取りの天窓として機能しています。
お住まいのSさんからもお話しを伺うことが出来ました。庇を設けず茅屋根を葺き下ろした古いスタイルの茅葺き民家は、現代の住宅としては屋内の暗さと湿気が問題なのですが、天窓のおかげで明るくなっただけではなく、湿気も除いて冬でも冷え込むことが無くなったそうです。
最後に砂木の家の敷地も訪ねてもらって、正確な面積も測量してもらいました。
しかしここで問題が。「思ったより狭くてこのままでは収まらないかも・・・」
・・・え? それは大変なのでは?
060723 福井・千古の家
美山に茅葺きの普通の家、「砂木の家」を建てる計画の相談で、建築士のヤナガワさんを訪ねて鎌倉からの帰りに 福井県の芦原に寄って来ました。
ご実家では地元の食材をふんだんに用いた、おいしい食事を始めとするおもてなしを頂きました。ありがとうございます。
こちらのお宅のような、居心地の良い縁側のある家にしたいと思っています。
翌日はヤナガワさんの案内で福井見物。「千古の家」と呼ばれる重要文化財坪川家住宅では、ちょうど茅葺き屋根の葺き替えが仕上げの段階でした。
日曜日のためか職人さんの姿は見えませんでしたが、きれいな仕上がりでした。
オリジナルはススキ葺きだったと思いましたが、今回はヨシに葺き換えてありました。主に費用の問題からかと思いますが、比較的長持ちし材料として流通している量も多いヨシで葺かれる事例が、文化財建造物でも増えているように感じます。
屋根の中程を突き破って顔を出している丸太は、白川郷の合掌屋根などと同じ「こうがい棟」という棟収めのためのものです。棟に横積みにした茅を、この丸太に掛けた剥き出しの縄で止めておくという、いかにも千古の家にふさわしい素朴というか豪快な棟収めです。
もっとも今回の葺き替えでは、ご覧のように杉皮と針金を用いた棟収めがなされたので、この丸太はかざりになってしまっていますけれども。
文化庁(の外郭団体)の設計監理によるのでしょうが、重文で幾ばくかの補助金があるとはいえ、実際の維持管理は所有者(千古の家の場合はおそらく坪川さん個人)がなされているわけですから、少しでも安価で長持ちするような工法が選択されるのは、ある程度仕方の無い事です。
一方で文化財指定の意味を考えると、特に民家の場合は建物単体だけでは無く、それを支えていた地域の文化も継承して行く必要があります。
例えば、日常的な草刈りの規模で維持できる小さなススキの茅場があるだけでも、それを使って棟はオリジナルのススキのこうがい棟で収める事が出来れます。傷みやすく頻繁に必要となるいこうがい棟の交換を、職人の手を借りず有志の近隣住民の手でこなしていけば、あまりお金をかけずに茅葺きを介して土地の文化を伝える機会にもなると思いますが、難しいですかねえ。
実は千古の家の近くにも、手入れされた茅場とおぼしき休耕田がありました。周辺には他に茅葺き民家も見当たらない事から、千古の家の葺き替えに備えていたものかもしれません。今回の葺き替えでここのススキは活用されたのかどうか・・・
こちらは千古の家の軒裏です。本来なら茅葺き屋根の場合、草桁(外壁の上の横木)の上に丸太の垂木が乗っているだけなので、垂木のあいだには隙間があり屋根裏への空気の取り入れ口になっています。
しかし、現在では多くの茅葺き民家に庇がつけられたために軒裏の隙間は塞がれていていて、千古の家のように茅屋根の葺き下しでも、このように隙間は藁束を詰めてわざわざ塞がれています。
茅葺き屋根が長持ちしにくくなった原因として、囲炉裏で火を焚かなくなったからだと言われていますが、自分の実感としてはそれ以上に、軒裏を塞いだり天井を張ったりして屋根裏の換気が悪くなったからのように思われます。
美山に建てる家では、そのあたりを実際に色々と試してみたいと思っています。
060709 建築士と初打合せ
僕は学校を出てからずっと屋根に上がっていて、建築設計の修行を積んでいません。
大工さんに渡す最終的な設計をまとめるのは、プロの建築士の方にお願いするべきだと考えていましたが、大学の同期で、地域の工務店と在来軸組による木造を多く手がけている、建築士のヤナガワさんが引き受けてくれました。
そしてこの程、鎌倉まで訪ねて来てくれました。
ラ・ジュルネ の家庭的な雰囲気の中美味しいご飯を頂きながら、砂木の家のコンセプトに耳を傾けてもらい、僕のまとめた図面に目を通してもらいました。
伝統的なモジュールに沿って、なるべくシンプルな間取りを心がけた、三間取りの続き間。水廻りは北側の下屋にまとめながら、キッチンは居間に開放すること。
2階はロフトとして茅屋根の構造と絡まないこと。
土間は吹抜けにして、茅葺きの屋根裏を閉じてしまわないことなどを確認しました。
後半はしかし、アルコールも入り他のお客さんも加わって、話しが広がり逸れて行ってしまったのは、このお店の持つ魔力というか魅力というか、致し方の無いところです。
同期の友人と久し振りに会って、楽しい時間を共有できたことがまず、何よりでした。