茅葺屋の住まい@砂木の家/新築」カテゴリーアーカイブ

051101「砂木の家」のコンセプト・3

◯昔の茅葺き民家
・葺き下しの軒が空いていることで、破風の煙出が機能します。
・屋根裏表の気圧差や気温差により、屋根全面でも換気します。
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・屋内で火を焚くことは煙による燻蒸効果はもちろんですが、屋根裏に乾燥した暖気と上昇気流をもたらすことで、軒先から新鮮な外気を導くことによる換気効果が期待できたはずです。
・ちなみに煙で燻すことは屋根そのものへの影響はともかく、結果的に屋根裏への小動物の侵入を防いで来ました。煙たいですから。

◯今の茅葺き民家
・庇で空気の取り入れ口(軒先)が塞がっているため、煙出の機能はあまり働きません。
・天井も貼ってあり屋根裏の空気があまり動かないので、屋根の表裏の気圧差は小さく屋根表面からの通気量は低いと思われます。
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・室内と屋根裏は隔絶されているものの、天井裏は「屋内」なのでネコやタヌキに入って来てほしくないと思うのが人情でしょう。

隙間を塞ぐためにますます屋根裏の換気量が少なくなります。

◯これからの茅葺き(砂木の家)
・少なくとも一つの面では茅葺きは葺き下ろしとして、軒先に空気の取り入れ口を確保します。
・薪ストーブの排気を屋根裏に出し、換気効果が高まることを期待します。
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・土間は吹き抜けとして屋根裏との空気の流れを妨げないように。
・土蔵の「置き屋根」のイメージ(防火のために土で塗り込められた蔵を、風雨から養生するために茅葺き屋根が載せてある)。土塗りの天井の上は「屋内」ではないので、風が入ってもタヌキが入っても神経質にならずに済む。

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・茅葺きの屋根の下の天井を、竹簾の上に土を盛った「大和天井」とすることで、保温と通気を兼ね備え、火災の際に生存空間を確保します。

・天井を塗り込めにすることで、寝室にムカデが落ちて来なくなる(なってほしい)ことも期待しています。

051031 「砂木の家」のコンセプト・2

・やわらかに囲む
屋外と屋内のあいだに、中間域を豊富に設けるようにします。
軒先、土間、縁側、屋根裏・・・
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特に茅葺きの屋根裏に関しては、これまでデッドスペースとみなされて来た感がありますが、室内気候の調整のために大きく機能しているはずだと思っています。

・ベンチレーターとしての茅葺き屋根の空調機能を引き出します。
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二階を設けることをあきらめるのではなく、屋根裏部屋ではなくロフトとして、梁から下の構造と屋根の構造が分離した、本来の茅葺きの民家のつくりから外れないように注意し、ロフトの天井と茅屋根のあいだに充分な空間を確保しておきます。

・ロフトへの採光、通気
南側は縁側の上に大きめの窓→外の景色は見えないが、天候に煩わされない通風と縁側に反射した外光を柔らかく取り込みます。
北側は外の様子を伺える小さめの窓を穿つ→茅葺き屋根の耐久性に問題が生じないようなデザインを検討します。
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水廻りは下屋に納めて茅屋根の下から外すように努めます。

051030 「砂木の家」のコンセプト・1

この小さな小屋が、美山町の砂木という集落のはずれにある拙宅です。
茅葺きの実験住宅を建てようと決めたのは、即ち自宅を建て替えようということでした。他所のお宅で実験は出来ませんので。
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もともと夏場に高知から来られる、「山行きさん(山林技能士)」の飯場として建てられたらしいこの小屋は、華奢すぎて茅葺き屋根を乗せたら耐えられそうにもありません。
また、これからの茅葺き民家の在り方を探るならば、正攻法なら既存の茅葺きの古民家の改装でしょう。美山町内で地元のつてを頼りつつ時間をかけて探せば、手頃な「くずや(茅葺き民家)」の空き家を見付けることもできたかもしれません。

しかし、田舎での暮らしに大切なのは、土地との縁より人との縁なのです。
10年近く暮らして良くして頂き、せっかく根付いた砂木のコミュニティを離れて新たな人間関係を築くのは、同じ美山町内であってもかなり大変そうなので、思い切ってこの場所を最低限必要なだけ造成して、新築で「茅葺きの家」を建ててみることにしました。

◯新築なので全く新しい茅葺きのデザインに挑戦してみたい誘惑にも駆られますが、今回用いたデザインが有効であれば、今後既存の茅葺き民家のストックをレストアする際に使ってもらえなければ意味がありません。
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一般的な美山の茅葺き民家の構造と間取りを踏襲して、伝統的な「くずや」に「改造を施す」という仮定の下に設計することにします。

◯茅葺き民家のネガを潰して行くのではなく、ポジティブな要素を組み合わせることで、他にはない快適な住宅を目指します。
即ち、「茅葺きなのに快適?」 →「茅葺きだから快適!」 へ。

◯民芸趣味に走ることのなく、新しい「茅葺き住宅」のかたちを模索してみようと思います。

051019 茅葺屋の考える「これからの茅葺き住宅」

そもそも伝統的な民家の間取りは、外部空間と一体化した使用を前提として、生産活動や公的な行事のために用いるためのもので、家族のくつろぎの場として造られた現代住宅とは、根本的に異なるものだということを理解しておく必要があります。
我々の感覚での「家」としての家族のための空間は、奥まって閉ざされた「納戸」と呼ばれる一室に限られるかもしれません。

壁一枚、ドア一枚を隔てて、外部から隔絶した屋内を求めるのではなく、外部と柔らかく繋がる民家の構成を活かしながら、快適な暮らしのために必要なところはしっかりと守るようにしていこうと思います。

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◯寒さ対策
・暖房を効かせる部屋のメリハリをつける。
・縁(半屋外)を緩衝、換気に上手く利用する。

外 < 縁(縁側、土間、屋根裏) < 居室 < 寝室
寒 ← ー ー ーーーーーーーーーー ー ー → 暖

◯暗さへの対応
・家の中には暗いところ「も」あって良い
・直射日光は「冬に陽の当たる縁側」だけで充分

縁側や縁先の反射光、障子越しに拡散する明かり、北の窓から見える明るい景色、内装色、茅葺きの天窓・・・

気分的に明るくなる工夫
・「風を入れる窓」「光を入れる窓」の使い分け

◯水廻りの質の向上
・水廻りは下屋にまとめる(土間は空けておく)
・居室と繋げる(特にキッチンに開放性を)

051018 現代住宅としての茅葺き民家のネガ

伝統的な茅葺き民家は、現代の生活にとって必ずしも快適な住宅ではありません。新素材などを用いた改装がなされていても、残念ながら住みにくいが故に建て替えられることも多く、その住み難さを楽しめる人でなければ暮らせない、特殊なものになってしまっています。

昔の茅葺き民家を住宅として使い続ける際に問題となる点としては、「夏は快適でも冬は寒い」「屋内が昼間でも照明が必要なほど暗い」「水回りの設備の不備(或いは初めから存在しない)」があると思います。

それらへの対策を講じて尚、今の茅葺きの家が抱える問題をあげてみると

◯「寒い」ことへの対策として、
天井を張り、アルミサッシ、ボード、断熱材で部屋を気密して対応

結果として激しい結露、その割にあいかわらず寒い

泥縄式の対応で不十分な気密、そもそもの構造的な熱効率が改善されていない

◯「暗い」ことへの対応として、
シコロ屋根を設けて茅屋根の軒先を切り上げる

小屋裏の換気を阻害

茅屋根の寿命を縮める一因に

また、
雨戸列にアルミサッシの窓ガラスを入れる

結露甚だしい

縁側は構造的にそれでも寒いため結局閉め切り、採光の改善に繋がらない
(むやみに直射日光を屋内に入れると、陰が深まり余計に暗く感じることも)

◯水回りの使い勝手の向上のために、
土間に台所、風呂、便所を設置

暗くて、寒くて、湿っぽいキッチン、サニタリー

土間に風が抜けなくなることで家全体まで湿気る

そもそも、土間が無くなると民家の間取りはユーティリティに欠ける

家の周りにものが溢れ、軒下に積み上げられる

建物周りの通風が悪化し、ますます湿気る

と、いったところでしょうか。

051017 茅葺きの 普通の 家

茅葺き民家を、お金持ちの道楽や数寄者の趣味ではなく、ふつうの住宅として使ってもらいたいと思っています。
文化財として遺して行くだけでは、文化としての茅葺きは滅びてしまいます。

住宅として使って行くためには、文化としての茅葺きが今の社会にとって必要とされることと、建築としての茅葺きが住む道具として充分機能することが必要です。
茅葺きを次代へ繋げて行くためには、このソフトとハードの両面で茅葺きを支える、新しい仕組みが必要ということです。

ソフト面では文化としての茅葺きの意義を探り、それを広く知って頂くためにカヤマルカヤカルカヤコヤ 等の活動を行っています。
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ハード面では建築としての茅葺きが、現代住宅として使われるために必要なことを検討し、検証するために、茅葺屋の経験に基づいて考える、「茅葺きの 普通の、家」 を建ててみる事に決めました。

普通の とは、住宅として現代的で快適な生活を送れる「普通に暮らせる家」であり、茅葺きならではの快適さや自然と共生した生活を送れる「普通の装飾ではない茅葺き」 と、いうことです。

田舎暮らしをする住宅として、ログハウスや瓦葺きの古民家などと同列に、茅葺きの家が選択肢として上げられるようにしていきたいのです。