茅葺き現場日誌+古民家族@船坂/旧坂口家」カテゴリーアーカイブ

1016 ビエンナーレ+茅葺き古民家

古民家族が活動させてもらっている西宮市山口町の船坂集落で、西宮船坂ビエンナーレが開催中です。
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再生中の古民家2棟も、もちろん参加とのこと。ちょっと覗きに行ってきました。

庇のシコロ(錣)屋根の瓦が葺き直されている!
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見えるところだけ・・・でも随分しゃんとしましたね。見違えました。古瓦を再利用しているところがまた、良い感じ。苫葺きの軒も補強されているし。

アーティストの作品発表の場となり、古民家そのものもアートとして体験できるように設えてありました。
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アートと茅葺きと、おもてなしのお茶に人が集います。

週末には古民家族の学生メンバーがボランティアで常駐して、古民家の解説などこなしているそうです。
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学生にとっても、たくさんの人たちと話をする良い機会となることでしょう。

夜には別に再生中の茅葺き古民家で、つくり直された囲炉裏のお披露目がありました。
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火も、人を集めますね。

0920 刈込み仕上げ

5月から延々と続いて来た、船坂集落の旧坂口家の屋根葺き替え、泣いても笑っても今日仕上げないと、いよいよ後がありません。
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みんなが寝ている間に、こびとさんが刈り落としてくれた軒裏ですが、あえて学生の仕事も残しておくという、心憎い配慮もされていました。

こびとさんが・・・というか、山城萱葺き屋根工事のヤマダさんなんですけれども、堅いヨシやススキで葺かれたところを刈り落として、柔らかく刈りやすい稲ワラの部分を残してくれています。
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さらに所々稲ワラの部分も仕上げてあるのを参考に、職人さんから借りた屋根鋏で軒刈りに挑戦。
言う程簡単ではありませんが・・・

半日かかって何とか軒裏が落ちました。
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最後の工程、軒の上端を刈り込んで仕上げます。

職人と並んでさくさくと・・・リズム良くとは行きませんが、重い屋根ハサミの扱いにも、少しは慣れて来ましたかね。
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仕上がった面から足場の解体も進めて行きます。
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安全に解体するために切断する順番はもちろん、危険な番線クズが散らからないように、クリッパーで切断する箇所にも気を遣いましょう。

家の中では大掃除が佳境を迎えています。
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屋根の葺き替えをすると大勢出入りしたり、屋根裏から茅を下ろしたり上げたり、どうしてもほこりっぽくなりますからね。
しかし、そこまで磨いて、前よりもきれいになったのでは?

押さえ竹を縫い止める際に屋根裏にはみ出したり垂れ下がったりした茅を、一本一本手鋏で取り除いて行きます。
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このひと手間を惜しまないことで、縁側に座って眺めたときの屋根の表情がずいぶん違います。

最後に職人が軒端のラインを揃えるハサミを入れて、全ての工程を締めくくります。
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足場を解体して掃除が済んだら、竣工です。
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古い屋根と新しい屋根の境のブルーシートは、しばらくこのままにしておかざるを得ませんが、とにかく雨漏りは無くなり、みんなが集える広い軒先が出来ました。

0905 こびと

その1:
茅葺きの下地は一番高い棟木から、一番下の草桁まで1本のレン(垂木)が通っています。
古民家族で再生に取り組んでいる旧坂口家では、後補の庇を解体したりしたこともあり、屋根全体を受け止めてバランスを取る大切な草桁が、建物の本屋から切り離されて独立柱だけで支えられていました。
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軒がついて屋根が重くなって行くに従い、不自然な揺れ方をするようになって危なくなっていましたが、ある日河原工房の大工さん、ユイさんがふらりとやってきて、梁で繋いで行ってくれました。

下屋の草桁が本屋の柱と梁で繋がり安定しました。
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これで安心して葺き進めることができるようになりました。

その2:
「今年最後の茅葺き3連日」と銘打ちながら、僕の段取り悪くて9月に作業が持ち越してしまった旧坂口家の屋根葺き。
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正直に言えば、9月あと1回の活動で本当終わるのかすら不安だったのですが、ある日山城萱葺屋根工事の茅葺き職人ヤマダさんがひょっこり訪ねて来て、軒を刈り落として行ってくれました。

愛車KTMアドベンチャーでのツーリング中に、偶然通りかかった山城萱葺き屋根工事の丁稚ワタナベ君も手伝ってくれました。
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これで残す作業内容は間違いなくラス1です!

0829 刈込み

今回葺き替え予定の分の屋根は無事葺き上がりました。
上から下へと順に足場に吊っていた丸太を外しながら、ハサミをかけて仕上げて行きます。
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大きな屋根鋏に初めて触れる人も、職人の指導を受けながらザクザクと。

葺く時に叩いて形を整えながら葺いては来ましたが、やはりきれいに面を揃えるためには仕上げのハサミかけは欠かせません。
叩いて折れたり潰れたりした茅の木口も、良く研いだハサミでシャープに刈り揃えることで、屋根の水はけも良くなります。
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新しく葺いた屋根と古い屋根の境目は、本来なら差し茅で調整して合わせるところなのですが、時間が押しているので、ひとまずブルーシートを挟んで対応しておきます。

ていねいに施工した軒まわりですが、最後にもう一度手を入れて整えます。
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傷みやすい箇所ですが、意匠的に目立つ場所でもあるので、長くきれいな状態を保ってもらわなければなりませんから。

手直しが済んだら軒裏を刈り落として、軒の端を刈り揃えて足場を外したら、今回の工事箇所は竣工です。
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です・・・が・・時間切れ。

「何としても仕上げる」などと大口叩いておりましたが・・・すみません、段取りが悪くて。手弁当で来てくれている職人さんのこだわりや、暑い中頑張ってくれている学生さんや一般参加者の皆さんのやる気を、時に空回りさせてしまいました。

我ながら現場まわすの下手で滅入ります。懲りずに来月にもう一度だけお付き合いください。

0827 続々・葺き上げ

ようやく空には秋の気配が漂いはじめましたが、地上の暑さは全く衰えないなか、古民家族の旧坂口家の屋根葺き替えが続きます。
あ、↑ブログ始まっているみたいです。
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今回は傷みの酷い軒から3分の2の屋根を葺き替えて、棟の部分には手を付けません。
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ですから軒から葺き上がって来た屋根を、古い棟の下に潜り込ませてやらないと屋根として繋がりません。
丸太を突っ込んで古い屋根を持ち上げ、新しい屋根を差し込む隙間をつくっておきます。

今日も暑い暑い中、屋根の上でも下でもみんな働き者ですね。
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と、思ったら・・・電池切れですか?
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立ったまま寝ているし・・・
暑いからね。

まあ、アイスでも食べて。
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葺き上がりまでもう、あと僅か。頑張りましょう。
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0818 続・葺き上げ

お盆が明けても暑さが和らぐ気配が見えませんが、古民家族による船坂での旧坂口家の屋根葺き替え再開しました。
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今回の目標は「誰も倒れないこと」。
暑い中無理は避けましょう。

雨養生のシートをめくると、いきなりこんなものが。
菌糸で真っ白になった茅屋根。梅雨で濡れた屋根にシートを被せて、夏場に一ヶ月放置でしたからね・・・
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倉庫保管中に濡らして菌糸まみれになった茅を葺いて、屋根にキノコを生やしてしまったことがありましたっけ。
ま、濡れていたのは表面だけなので、真夏の太陽に灼かれて絶えるでしょう。

平日開催ということもあり参加メンバーは常連組中心。さすがに作業の段取りも飲み込めて来て、職人の指導のもと手際良く葺き上がって行きます。
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それにしても陽射しから逃げ場の無い屋根の上は、照り返しもあってかなりの暑さになります。

屋根の上と同様、屋根の下での作業も手際良くなって来ました。
茅束を運んでいるだけでぱらぱらと茅くずが落ちる茅葺き。掃除は欠かせません。
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掃除していてもそもそも散らかる現場ですから、ご近所のご理解が無ければ茅葺きは続けられません。
古民家族の活動を温かく見守って下さる、船坂にお住まいの皆さんに感謝です。

2日間の作業でだいぶ屋根らしくなって来ました。
しかし、今シーズン葺けるのは、実質残り1日くらいです。
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残りの作業量を思うと余裕はありませんが、それよりも誰も熱中症で倒れることも無く、怪我も無く、酷暑の中無事にやりとげられたことに、今回は価値がありました。水分補給対策に気を配ってくれた、学生スタッフのおかげですね。

みなさん、おつかれさまでした。

0711 葺き上げ

軒がついたので茅を並べて屋根を葺いて行きます。
オシギリで切ってつくった短い材料を間に挟んで、葺き並べる茅が屋根の下地に対して一定の角度を保つように調整します。
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この屋根は勾配が緩いこともあり、短く切った茅の先の方を踏みつぶして、よりテーパーの効いた材料に加工して、葺いた時に角度を稼げるようにしておきます。
茅は適材適所に選り分けるだけではなく、時に必要に応じて加工することもあるのです。

長い茅を端から端まで薄く並べたら、その次は短い茅を同じように並べる・・・というのを繰り返し厚みを出します。何層にも重ねるレイヤーの材料を選ぶことで、勾配を調節しながら葺いて行きます。
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滑りやすいヨシを混ぜて葺くときは、このようにあらかじめ滑り止めの板を吊っておきます。

一定の厚みに茅を並べたら竹で押さえて止める訳ですが、押さえの竹を下地に縫い止める様子をあらためて。
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青い竹の垂木に縄をかけるために、写真で竹の上側の際から差し込まれた針から、「針受け」の役目の人が縄を抜きます。

今度は写真で竹のすぐ下側の際に出るように、針受けの人が声をかけ得て誘導してあげます。
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良い位置に出て来たら、最初の縄を針にかけてから引いてもらえば垂木に縄をかけることが出来ます。
さらに男結びで止めるために2重がけにする方法はこちら

竹を縫い止めて仮固定したら、ずれ止めの板を外してから叩いて形を整えます。
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叩いて伸ばした後で理想的なかたちに収まるように、板を当てているときから想定しながら並べておかなければなりません。

ひとつひとつの作業に意味があることを考えなければならないのは、もちろん葺き並べる時も同じですが、軒がきちんとつけてあれば、それを目安に葺いて行けるからずっと捗ります。
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どんどん葺いて行きましょう。

0620 続々・軒付け

1ヶ月程空きましたが、船坂では今回もまだ軒付けが続いています。
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ここは茅葺き屋根の善し悪しを左右する工程で、後からやり直すことも手直しもできません。「いい加減」にして先を急ぐことは出来ないのです。
「屋根屋と雀は軒で鳴く(泣く)」

チームワークのもと丁寧な作業を積み重ねて来て、良い軒になったのではないかと思います。
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さて、下の写真、右の束は今年の早春に古民家族が刈って来たもの。左の束はどこかの茅葺きの天井裏にストックされていたけれども、トタンを被せたからもういらないや、というのを頂いて来たもの。
ちょっと煤けているのは、かまどで火を使っていた頃から保管されていた、ビンテージものだということです。
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どちらも同じススキですが、まるで形が違うのは保存期間の長さではなく、生えていた環境と刈り取る時期によるものです。
早春に刈り取ると花穂が伸びきり、葉やハカマが枯れ落ちて、シュッとした束になります。もう一方はおそらくまだ葉に緑の残る晩秋に刈ったもの。くしゅくしゅとした束になります。
植物としては同じススキですが、茅としては別の材料として使い分けます。

さて、ボランティアで指導にあたってくれている茅葺き職人のために、古民家族の武庫川女子大のメンバーが、昼食を用意してくれるようになりました。
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これで、もう「手弁当で手伝っているから」という言い訳はできなくなりましたね。ね?ヤマダさん
女子大生の手造り弁当食べてしまったら、そらもう張り切らなあかんでしょ!

0530 続・軒付け

作業開始前に河原工房の会長さんから、伝統建築についてのレクチャーを伺います。
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様々な工法についての解説も興味深いのですが、代々受け継がれて来た歴史建築と関わる際の、心構えについて触れられたお話しが印象的でした。

気持ちが入ったところで今日も作業開始。
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茅屋根葺きのヤマ場、軒付けの中でもさらに気遣いの必要な、軒先の水切りとなる茅を葺いて行きます。

足場が狭くて材料を置けないので、地面にいる人が必要な茅を滞り無く届けてあげなければなりません。
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短かったり長かったり、先細りだったり頭でっかちだったり、自然素材である茅は束によって形も様々。そして良い加減につくられた茅葺き屋根の下地も、へこんでいたりふくらんでいたり様々。
ですから良い屋根にするためには、葺く人だけでなくて、材料を手渡す人が茅の形を見極めて、その茅が活きる場所へ届けてあげることがとても大切です。

葺き並べた茅を押さえて固定する竹を止める縄も、足場の上には置けないので地面から延ばして渡してあげます。
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このとき、縄の「うらおもて」に気をつけなければならないって、知っていました?
間違った方から縄の端を引き出すと、こんがらがって使い物にならなくなってしまいます。

色々気を使って届けられた縄の端を、茅屋根を貫通するでっかい針の穴に通して、茅押さえの竹を縫い止めて行きます。
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針の角度に注意しないと、正しい位置から竹が動いたり、雨漏りの原因をつくってしまいますよ。

縄の端を垂木にかけてあげる役目の人も、ただぼんやり針先が出て来るのを待っていてはいけません。
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垂木の際に隙間が出来ないように針を差すためには、内側から声をかけて上手に誘導してあげられるかどうかにかかっています。

垂木にかけた縄で茅押さえの竹を締め上げて、男結びで固定。
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葺く時には地面から茅を渡す人と、屋根の上で葺く人。縫う時には針を差す人と、屋根裏で受ける人。そしてもちろん、隣りで作業している人とも。茅葺きはチームプレー、全員が呼吸を合わせなければ茅葺き屋根は葺けません。

0529 下地組み・軒付け

今週は山城萱葺き屋根工事のヤマダさんとサガラが来てくれたので、「何となく差し込んであった」軒の部分の下地を直してもらいます。
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茅葺きの下地は墨を打って直角を出す訳でも、ミリ単位でボルト穴の位置を決めてもありません。大雑把なものです。
でもアバウトだからこそ、局部に無理のかからない構造にするために、経験を重ねた感覚が必要です。
いいかげんは、良い加減。その加減がなかなか難しい。

職人が下地を直している間、参加者は宇治川からやって来たとてつもなく長いヨシを、用途に即して3つに切り分けます。
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と、言ってもヨシは堅いですから。「押し切り」を使いこなさなければ切れずに刃が欠けるだけ。

宇治川のヨシに加えて、自分たちであちこちで刈り集めたススキも使います。
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茅葺きのために「茅を集めなければならない」と考えるか、「身近に自分たちで集めたものが使える」と考えるかで、茅葺き屋根との付き合い方は変わってくると思います。

下地が整ったところで、軒を付けはじめます。
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まずはきれいめのススキを選んで、ひと掴みずつ丁寧にかきつけて行きます。
屋根の基礎になるところだし、軒裏から見上げたときの化粧にもなるから、焦らずに。

一服の準備をする流しには、昨年被せた苫葺きの屋根がまだまだ頑張っています。
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軽い、薄い、苫葺きですが、風が吹けばなびき、雨が降れば受け流し、なかなかしたたかに屋根としての務めを果たしてくれています。

やたらと散らかる茅葺きだからこそ、まめな掃除は大切です。
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でも茅葺きのゴミは、決して廃棄物にはなりません。僕たちが暮らし方を間違えなければ、畑が求めてくれますから。