今回は「笹」で茅葺きの屋根を葺きます。
このブログでも何度か書いていますが、「茅」という植物があるのではなく、屋根を葺くために用意された草の束を茅と呼びます。
日本でポピュラーな茅はススキとヨシ。何といっても丈夫で葺いた屋根が長持ちしますが、丈夫な故に刈り取りには切れ味鋭い鉄の鎌が不可欠です。
鎌で刈ったススキやヨシですら仕上げにハサミをかけるくらいで、切り口をシャープに整えて水はけ良く出来なければ長持ちも期待できず、手間をかけて茅の根本を屋根表面に出す「真葺き」で葺く甲斐がありません。材料と工期が少なくて済む、茅の葉先を屋根表面に出す「逆葺き」で葺いた方が効率良くなります。
ですから刈り取りに使う鉄の鎌や、仕上げの刈込みに使うハサミの無い縄文時代には、屋根は逆葺きで葺かれていたのではないかと思うのです。
逆葺きで葺く茅としては稲ワラが一般的ですが、かつてはクマザサやリュウキュウチクのような笹も各地で使われていました。稲作以前の茅として検討してみる価値があるのではないでしょうか。
ところが現在クマザサの笹葺きは、丹後半島と能登半島に僅かに残されているだけです。
雑木林の林床での笹刈りから始めて、笹場をつくり笹葺きの技術を学び、消え去る直前だった丹後の笹葺きを再興しつつあるのが、立命館大学学生有志による「丹後村おこし開発チーム」の面々です。
先輩から後輩へと引き継ぎながら、5年の歳月をかけて丹後山中で朽ちようとしていた民家の屋根を笹で葺き替えた彼等は、材料の確保から施工まで一貫して実行できる、現在日本で唯一の「笹葺き集団」です。
勝坂遺跡で笹葺きの復元住居に挑戦できるのも、彼等が笹の手配に一肌脱いでくれたおかげです。
そして、いよいよ笹を葺き始めるのに合わせて、遠く近江から相模まで駆けつけてくれました。
笹の「葉」で屋根を葺く笹葺きは、ススキやヨシの根本を整然と並べる真葺きの茅葺き屋根とは全く表情が異なります。
粗く葺いているように見えますが、ふさふさなものを平らに、均等に葺くのは、規準となる平面が無いだけに却って難しいところがあります。
葺き並べた笹はヌイボクで押さえ、ヌイボクは屋根下地に縫い止めて行きます。
ヌイボクを止めるのはネソで・・・と、行きたいところなのですが、大量のネソを揃えるのは技術的にも予算的にも難しいので、ここは針金を使います。
中途半端にワラ縄を使うよりも、誰の目にも縄文時代にあり得ないのが明らかな針金を使うことで、代用の技術であることを明らかにしておきたいので。
意匠的には下地に使ったネソが目立つので、中に入って見上げても針金はそれほどうるさくはないと思います。
前例の無い、笹葺きによる縄文時代の竪穴式住居の復元が、笹葺きチームを迎えていよいよ始まりました。