茅刈り」カテゴリーアーカイブ

お知らせ 茅刈り体験会@美山

茅葺き現場体験会 カヤカル 参加者募集開始しました。

昨年、美山町「砂木の家」建設現場で行われたカヤマル'07@美山に続いて、地元砂木集落の主催で次回カヤマルの開催が決まりました。
P9013595.jpg
来年5月にこの村のお堂の屋根の一部を葺き替える際に、地下足袋持参での2泊3日の茅葺き体験会を行います。
それに先立ち12月6,7日に、葺き替えに使うための茅を村の人たち皆で刈り集めます。
そこで1泊2日の「茅刈り体験会 カヤカル'08@美山」を開催し参加者を募ります。

人と自然の共生する伝統的な暮らしの文化に触れ、山里での営みの喜びも苦労もリアルに体験できる機会です。

村のおっちゃんやおばちゃんたちと一緒に鎌を手に汗を流し、茅葺きが里山の大地としっかりと結ばれていることを実感してみてください。

期日:2008年12月6日(土)〜12月7日(日) 1泊2日

会場:京都府南丹市美山町高野地区 「砂木」集落内の茅場
(重要伝統的建造物群保存地区指定の茅葺き集落まで車で 30分)

詳細http://www.kayabuki-ya.net/plans.htm

問合せ:info@kayabuki-ya.net

IMG_9194.jpg

P9043661.jpg

0423 茅場と鹿のほど良い関係

美山にしては数年振りの大雪に見舞われた冬を乗り切った、砂木の家の屋根葺きを再開します。
P4233006.jpg
養生シート、足場、雪囲いと、無事なようで胸を撫で下ろしました。

が、裏側にまわってみるとこのとおり。
雪の重みに耐えかねた足場が折れて、下屋の瓦が相当数割れてしまっていました。
P4233011_2.jpg
とはいえ雨漏りも無いし、雪の中に葺きかけのまま半年近くも放置したのだから、この程度で済んで良かったと思います。

さて、昨秋ご近所の協力のもとこの砂木の家で開催した、カヤマル'07が集落内で好評をいただき、村のお堂の修繕もカヤマル式に行えないかというご提案を頂きました。
P4233019.jpg
ありがたいことです。
当然茅葺きは茅刈りから始めなければなりませんから、秋に良い茅が刈れるように村の茅場の手入れをしておきました。
ここでは昨秋茅刈りをしていないので、枯れたススキがそのまま残ってしまっています。これが混じると茅としての品質が悪くなるので、新芽が出る前に刈り倒しておきます。

場所によっては既に芽吹いているススキの株もありましたが、よく見ると僕たちが刈る前から新芽の先がありません。
鹿が食べた痕のようです。
P4233014_2.jpg
それでは鹿に食べられてしまって、このススキはもう茅としてダメなのかというと、この時期ススキの成長点は根本近くにあるので、葉先を食べられても問題は無いそうです。

そういえば休耕田を茅場にしようとすると、土が肥え過ぎていてススキが大きく育ち過ぎてしまうため、5月の連休頃に新芽を一度刈ってしまうと良いと言われたことがあります。ただし、刈る時期が遅くなるとススキが花を咲かせなくなってしまうので、6月が近づいたらもう手を出してはいけないとも言われました。

ススキは春の野辺に真っ先に芽を出す草の一つです。そこで青草に飢えた鹿に食べられることがあっても、茅としての品質に影響はありません。やがて暖かくなり勢い良く葉を伸ばす時には成長点も葉先へと移動して来るので、この時に葉先を食べられてしまっては困りますけれども、もうその頃には茅場は柔らかなハコベやノカンゾウで溢れているので、鹿も固くなったススキを好んで食べることは無いのでしょう。

何とも上手く出来ています。
ちょっと出来過ぎではと思うくらい。

0422 芽吹き前の茅場

一旦美山に帰るにあたり、資材を取りに里山の茅倉庫に立ち寄りました。
P4222992_2.jpg
先月は梅の香りだけが春の訪れを知らせていた周りの茅場は今や春の野花の盛りです。

ここがかつて長い時間田んぼであった記憶をとどめるレンゲの他に、スミレ、タンポポ、ハハコグサ・・・最近ではあまり見かけなくなった在来種の花も多く見かけます。
P4222993.jpg
毎年冬には茅刈りによって手入れされ、春先には地表に隈無く日光の降り注ぐ茅場は、春に花を咲かせる野花に取っては理想的な環境なのでしょう。
何千年ものあいだ人の営みに寄り添うようにして、多くの野草が花を咲かせて来たはずです。

そして日当りの良い草原を好む植物は、茅刈りによってススキが元気に繁っていればこそ、ススキとともに葉を伸ばして行くことができるのです。
P4222994_2.jpg
ワラビもそんな草のうちの一つ。ですから、手入れの良い茅場では春にはワラビ採りが存分に楽しめます。

積み上げていた茅束の中から飛び出して来た、この小さな小さな野ネズミも、やはり人の手が入ることでつくられる茅場の環境を棲処としています。
P4222982.jpg
おそらくカヤネズミかと思われます。
文字通り、茅とともに生きるネズミですからね。

0318 茅刈りの日々

今年も茅刈りの季節は終盤を迎えつつあります。
0713P3171630.jpg
毎年の刈り取りで手入れされていてこそ、このように茅として優れたススキを得ることもができますから、屋根葺きに忙しいからと行って刈り残すことは出来ません。

丹後で笹葺き民家を再生しつつある立命館大学の丹後村おこし開発チームのメンバーが、茅刈りの様子を見学がてら手伝ってくれました。
P3171641.jpg
「笹刈り」には慣れた彼等も、「ススキ刈り」には興味津々の様子。

我々が茅刈りに使う鎌は、枝払いなどに用いる両刃の木鎌。
色々試してこれに落ち着きました。
0713P3181647.jpg
良く研いで使うことが良い茅を得るためには肝要。自身の疲労も軽減されます。

住宅地の幹線道路の法面で茅葺き民家の葺き材が生産されているとは、この道に車を走らすドライバーの方々は思いもよらないことでしょう。
P3181643.jpg
しかし、この場所が他と比べて「きれい」であることに気付いておられる方は、少なくも無い様子。
茅刈りの楽しさを伝える手段を考えて行きたいと思います。

刈り取った後に残るススキの葉やハカマ、雑草などのゴモク。そのままにしておくと翌春の芽吹きの妨げになります。
0713P3181654.jpg
昔はその場で燃やしていましたが、住宅地のなかで火を使う訳にも行きませんから、きれいに掃き集めて畑の土へと還します。

0302 茅葺き現場体験会カヤカル'08@神戸

今シーズンのカヤカルは、ヨシ刈りに続いて茅刈りも雨で順延となってしまいました。冬場の開催で今まで一度も雨にも雪にも合わなかったのが、まあ運が良かったといえばそうなのですが。
P3021530.jpg
しかし延期開催となった日曜日は冬晴れの茅刈り日和。
急な日程変更にも関わらず参加頂いた皆さんには、茅場での一日を楽しく過ごして帰って頂けました。

「家に帰った後もススキが気になる」「茅刈りしたくて腕がうずく!」とは何ともありがたいお言葉まで頂きました。
P3021510.jpg
茅刈りの楽しさをもっともっとたくさんの人たちに知ってもらえるように、これからも努めて行きたいと思います。

0216 茅刈り体験会カヤカル'08@淀川

2年振りにヤマダさんの手入れされている淀川十三干潟でのカヤカルを開催しました。
02161395.jpg
予定していた開催日に雨が降り翌日に順延となったことで、参加して頂けなかった方も多く出てしまいましたが、参加された方にはヤマダさんから手厚い指導がありました。
それにしても今年はゴミが多いなあ。

梅田の本当に目と鼻の先で、茅葺きの材料となるヨシが何百年も変わらず刈り取られています。
02161417.jpg
カヤカルが梅田で暮らしたり、働いたり、学んだりしている少しでも多くの人たちに、そのことをまず知って頂く機会になればと思います。

梅田の目と鼻の先でこんなにも深く自然と関わることができる、その楽しさを。
02161426.jpg

071110 里山暮らし塾の茅刈り

友人の大工さんが運営されている美山里山暮らし塾の、茅刈りをお手伝いしてきました。
1110PB100292.jpg
江戸時代に建てられた茅葺き民家の周りで、そこにお住まいの方が毎年ススキを刈り取って手入れされている、茅場の茅を刈らせてもらいました。

人が刈って、干して、ヤギが食べて・・・いや、食べてはだめですが、肥料にも飼料にも燃料にも建材にもなる、茅という素材のポテンシャルを垣間見せてくれたような気もするというと、こじつけ過ぎでしょうか?
1110PB100296.jpg
参加者の皆さんは国際色豊かな顔ぶれだったので、僕も酷い英語なりに説明させて頂きましたが、お互いにコミュニケーションをとろうという意志があれば、それなりに伝わっていたようで。言葉は道具なのだとあらためて思いました。

お昼には茅葺き民家に上がらせてもらって、囲炉裏を囲んでカレーを頂きました。
1110PB100290.jpg
おクドさんを使って、羽釜で焚いた美山の新米と取れ立て野菜のカレー。何とも贅沢でした。

刈った茅はこのように春まで立てておきます。「ニウ」とか「カヤツボ」と呼んでいます。
1110PB100310.jpg
ススキに雪が積もって倒れてしまうと、折れたり曲がったりして茅としては刈り取れなくなってしまうので、美山では雪の季節を迎える前に、まだ青いススキを刈り取って風通し良く立てておくことで、雪が積もっても倒れず春までに乾燥させるようにします。
従って美山のような積雪地の茅は、同じススキでも年が明けて葉やハカマが枯れ落ちてから刈る、無雪地域の茅とは建材としては別物となります。同じススキを用いた茅葺き屋根でも、それぞれ異なる葺き方が発達していて、屋根のかたちもそれに合わせて微妙に異なってきます。

070330 茅刈りの日々 4

手入れして来た茅場のススキを、里山公園の修景工事に使うために株ごと移植することになりました。
造園屋さんが5,6人バックホーも使って、一日がかりで一番上の耕作放棄田のススキを掘りとって行かれました。
0327P1070564.jpg
茅葺き民家もある里山公園だから、そこにはススキが生えているべきだと考えて下さるのは嬉しいのですが、正直娘を嫁にやるような複雑な心境でもありました。
ススキは秋にタネを集めてまけば、いやでも生えてきて2,3年で立派に株立ちするのですが・・・
「守り育てる公園」「造り続ける公園」というコンセプトであっても、やはり竣工時の見栄えもそれなりに大切だということなのでしょうけれども。

さて、気を取り直して残された茅場の刈り取りを続けます。
ここではササとクズの薮になっていた耕作放棄田へ茅刈りという行為を働きかけることで、健康な里山の構成要素である茅場へと移行させようとしているのですが、そもそもススキは荒れ地に生える植物なので、廃田とはいえ土地の肥えた田んぼに生えると少々大きくなり過ぎてしまいます。
0327P1070567.jpg
右が団地の茅場で刈り取った「茅らしいススキ」左は田んぼの「ややごついススキ」

写真だと判りにくいかもしれませんが、手で触ってみると右の方がずっと細かく蜜な感触です。
細くても痩せた土地で苦労して育ったススキの方が、茅葺き屋根に葺いた際に丈夫で長持ちします。
ですから土地が肥えてしまわないように、伝統的な茅場では刈り取りの後に火を入れて、落ち葉や雑草を燃やして処分していますし、それが出来ない団地の茅場では苦労してでも掃除が欠かせないのです。
0327P1070568.jpg
田んぼの茅場でも、肥料を吸収して大きくなったススキを毎年刈り取って持ち出すことで、次第に肥料過多な状態は解消され土のバランスも良くなって来ているようです。
最初のころはもっと大きなお化けみたいなススキでしたが、これでも段々良くなって来ていますから。

何とか茅刈りも済ませて、里山も春を迎える準備が整いました。
0327P1070563.jpg
株ごと掘りとった手前の方が、ちょっとすっきりし過ぎていますけれども・・・

気がつけば茅場を囲む雑木林の縁では、サツキの花が咲き始めています。
0327P1070555.jpg
茅刈りの季節は終わっていました。
茅葺きに行かなければ。

070327 茅刈りの日々 3

団地の茅場の茅刈りをやっと片付けて、里山の茅倉庫の周りの茅刈りに移ります。
0327P1070275.jpg
ここでは茅刈りを中心とした「茅葺きによる里山管理」を実践しています。

茅場としてはまだ新しいのですが、周囲を幹線道路に囲まれた団地の茅場と違って、荒れ始めているとはいえ長いあいだ里山の暮らしが営まれていた土地ですから、手入れをしたところにはすぐに豊かな自然が戻って来ます。
0327P1070552.jpg
先日姿を見せたカヤネズミ?が夏のあいだ暮らしていた古巣が、茅場のあちこちに架けてあります。

さて、茅場とそこに生えるススキは手入れするほどに良くなって行くという話しをしましたが、同じように刈り取って同じ場所に生えているススキなのに、このように真っ直ぐに生える株の隣りで、曲がったススキばかりの株が生えてしまうこともあります。
0327P1070299.jpg
手入れしないことには話にならないのですが、手入れしても曲がってしまうススキがあるのは、環境だけではなく遺伝子とかも関係しているのかもしれません。

070324 茅刈りの日々 2

細くて真っ直ぐで、茅として最高のススキです。
0322P1070518.jpg
毎年欠かさず茅刈りをして手入れを続けていると、このようなススキが生えて来てくれます。

一方で事情があって3年ほど茅刈りを休んだ場所は、たちまちこの通り。
枯れたススキを刈って取り除かなければ、翌春の芽吹きの邪魔になり曲がったススキが生えて来ます。やがては枯れ草に空間を占拠されてしまい、芽吹きそのものも不活発となり枯れ草だけの薮となってしまいます。
0322P1070505.jpg
枯れ草に遮られて日の当たらなくなった地面には野花が咲くことも無く、枯れ草ばかりでは虫もそれを食べる鳥も暮らすことは出来ません。
やがて枯れ草も絡まるクズに引き倒されて、クズの蔦が絡まり合いのたうつだけの、単一で貧弱(で凶暴)な植生へと移行してしまいます。

ところでこのクズの蔓は茅を束ねる「サンバイコウ」としてはとても具合が良いのですが、それは地面を這っている蔓に限られていて、ススキや灌木に絡まり立ち上がった蔓は使い物になりません。
茅刈りのされた茅場では、クズが成長する時期にはススキはまだ柔らかく丈の低い青草ですから、クズはそれに絡まり立ち上がることはできず、またその必要も無く、地面の上を横へ横へと伸びて行きます。もし茅刈りをしなければ、翌年にはクズは日光を求めて立ち枯れたススキに絡まり立ち上がり枝分かれしてねじれ、混沌としたクズの薮をつくりはじめてしまいます。
0322P1070517.jpg
しかし実際には茅刈りをして立ち枯れたススキを取り除くとともに、茅場の地面を這い回っているクズの蔓を集めてサンバイコウとして活用することで、翌年にもクズはおとなしく地面の上に蔓を伸ばし、秋になればススキ野原の中に七草にも数えられる花を咲かせます。
秋の七草は全て茅場に生える植物なのですが、ススキとクズの関係に見られるように、それらは茅刈りという行為を通じて人の暮らしが関わることで、ともに茅場という環境をかたち作り共生してくることが出来たということのようです。

さて、クズの他にも茅場を好んで生える植物は多くあり、このチガヤもそのひとつです。
ススキのような棹が無く柔らかくしなやかなので、これもサンバイコウに使ったりもしていますが、クズの蔓や稲ワラに比べてつるつるして滑りやすいので、束ねた後運ぶときなどに多少ずれて緩んだりしやすいという欠点があります。
0322P1070533.jpg
その分稲ワラなどに比べて水には強いと思われるので、ススキに比べて軽量で扱いやすい特徴も活かして、ワラ葺き屋根の茅として使えないかと思い色々と試したりしています。

茅刈りを始めて6年目の茅場。もこもこと株立ちしているのがススキで、その間の暗い部分がセイタカアワダチソウの優先する群落です。
そして、道路から2mくらいの幅で、やや丈の短い草が帯状に茂っているのがチガヤの群落です。
0322P1070320.jpg
チガヤはススキよりずっと早く、夏のあいだに花をつけてタネを散らします。
道路沿いにチガヤのベルトができたのは、道路管理者の市が秋の初めに業者を頼んで草刈りをしているせいなのかもしれません。チガヤもススキも刈ることで芽吹きを促し元気になる植物ですが、草刈りをするタイミングによって、チガヤが優先する草原になったり、ススキの優先する草原になったりするのでしょう。

ススキの根株にはナンバンギセルの花の跡が。
0322P1070541.jpg
始めて見付けた時には正体が分からず訝しんだものでした。
例年通りのもう少し早い時期に茅刈りをしていると、触るたびに胞子のように細かい黄色のタネをまき散らすので、キノコの仲間かと思っていました。

茅刈りの時期が遅れたせいか、今年はモズもちょっと顔を見せに来たくらいでした。
つがいでやって来ては似合わないやさしい声で鳴き交わしていて、もう茅刈りに張り付いてエサを探し、冬を乗り切るという時期は過ぎてしまったのでしょう。
ちょっと悪いことをしたかなあ。
0321P1070489.jpg
かわりにシベリアに帰る前のツグミがやって来て、茅刈りを済ませた茅場を歩き回っていました。