「茅葺き現場日誌@かやぶき音楽堂」カテゴリーアーカイブ
0403 続々・差し茅
ほぼ棟の際まで差して上がって来ました。
今回の差し茅修理はここまでです。
棟に近づいて見てみると、棟に段を付けて積んだワラが何カ所も引っ張り出されていました。
おそらくカラスの仕業かと思いますが、エサを穫っているという説には首を傾げます。茅葺き屋根の中は乾燥しきっていて、カラスのエサになるような大きな虫はほとんどいませんし、何より葺いたばかりの屋根からも茅を引っ張ります。カラスほど頭の良い鳥が新築の屋根には虫がいないことを理解できないとは思えません。
やはり、遊び半分なのではないかと。
0401 続・差し茅
我々関西の茅葺き職人は、通常なら先に大間(屋根の平面)を葺いてから、それを規準に小間(屋根の妻面)を葺くのですが、事情があり先に小間を葺いたので少々差しにくい思いをしました。
アリゴシまで葺き上がったのでこれからはもうそんな不自由はありません。
ところで工期中は現場に泊まり込ませて頂いているのですが、こちらの茅葺き民家は「茅葺き住宅」として活用するために、色々とアイデアを凝らしたアレンジがなされています。
僕が寝ている屋根裏を改造した2階の間もそのひとつ。大きく開けられた窓からの光が美しい屋根裏の造作を照らしています。
ただし、居室の天井が茅葺きの「現し」だと、やはりゴミやホコリが落ちて来ます。
ましてや屋根葺きの最中なら尚のこと!寝具や着替えを毎朝シートで養生することは欠かせませんでした。
僕の個人的な考えとしては、茅葺き屋根の下は居室に使う天井のある部分と、縁側や土間、囲炉裏の間など「半屋外」として割り切り吹抜けにする部分に分けてしまった方が、住宅としては使いやすくなり屋根も長持ちするのではないかと感じています。
そのあたりのことは砂木の家で試してみたいと思っています。
0330 胡麻の里再訪
一昨年、後ろの音楽ホールになっている本堂を差し茅で修復したかやぶき音楽堂にまたやって来ました。
今回は手前の住居に使用されている庫裏を差し茅します。
差し茅はあくまでも屋根葺き替えの期間を延ばすためのメンテナンスです。あまり手間がかかるようでは葺き替えた方がましになってしまいますし、かといって急ぐあまり手を抜いてすぐに傷むようではやらない方がましとなってしまいます。
限られた予算と工期の中で最大の効果が得られるように、手際良く仕事が進むように集中して行きたいと思います。
0904 VS カラス
ところで、かやぶき音楽堂に差し茅に来るのは、始めてではありませんでした。
駆け出しの頃に今回手を付けなかった側の大間を差し茅しました。
屋根にカブトムシの幼虫がわいて、それを食べるためにカラスがほじくるので傷むという話でした。
茅葺き屋根が局所的に傷むのは、材料や葺き方に問題があって雨水が染み込んだり、周囲の立ち木や日当りのせいで乾きにくかったりすることが原因となるのが普通です。
ところが、カブトムシの仲間の幼虫は、乾いた屋根までせっせと食べては土に変えてしまいます。もっとも、乾いた屋根よりは居心地のよい腐葉土が周りの地表にたくさんあるので、問題になるほど屋根にわく事はそれほど多くはないのですが、修理しても一匹でも残していると再び致命的な損傷に至ってしまう、茅葺きにとっては癌のようなものです。
とにかく、土に変わった部分の屋根と幼虫を全て取り除き、傷んだ箇所を差し茅した後に、お施主さんの希望で「カラス除け」のためにCDをたくさん吊っておきました。
禅定寺ではアワビの殻 を使っていましたが、この手の「光りモノ」が鳥除けとしては気休めにしかならないのは、ベランダのハト除けやゴミ集積所のカラス除けで皆さん経験されている通りです。
こちらでもカラスはすぐに慣れてしまって効果は限定的だったようで、その後もカブトムシ除けに屋根にクレオソート(石油系木材用防腐剤)を噴霧したり、色々と試行錯誤を繰り返されていたようです。
で、今回訪ねてみると問題の側の大間には、ステンレスのワイヤーが張り巡らされていました。
これだけしておけば例えカラスが慣れてしまうことがあっても、屋根に止まる事は物理的に不可能でしょうね。
今のところカブトムシによる被害も出ていないようです。
まあ、少々うるさい気もしないではありませんが、これだけの大屋根を維持して行く苦労を思えば、効果のあるカラス除けを設置できたのは大きな事だと思います。
0903 差し茅の仕上げ
0902 祭りのハシゴ
完成した方の小間は足場も解体したので、一服するところは空が広くなりました。
残りの小間の差し茅もほぼ終了。
あとは仕上げを残すのみです。
その夜、胡麻の八幡さまのお祭りでした。
世話役の方が軽トラでまわりながら、スピーカーで「みんな家から出て来なさーい」と呼んでまわっていたので、呼ばれて行って来ました。
お社には神輿が祀られて、境内には地元の皆さんの手作りの屋台が建ち並び、盆踊りは無いけれど昨夜の僕の地元のお祭りよりずっとにぎやかで、いかにもお祭りな雰囲気を楽しませて頂いて来ました。
かやぶき音楽堂に戻ってあらためて夕食。
今夜はナカモリ料理長ではなく、お施主さんの息子さんが手料理を振る舞ってくれました。
何故か北アフリカの料理が並びます。
めずらしくておいしい料理でお腹が一杯になりました。
0829 もう少し差し茅は続く
かやぶき音楽堂のある胡麻にはとてものどかな風景がひろがっています。
山や家の雰囲気は同じ丹波に違いないのですが、美山には無い広々とした感じが和みます。
山一つ越えただけなのに。
そして、かやぶき音楽堂の中はこんな感じになっています。もちろん、今だけ。泊まり込みなので。
テントは・・・蚊帳だと思えば・・・
ハンモックは・・・? 銅鑼は私物ではありません。
残っている小間は午前中はずっと日陰で、夏に仕事するには最適です。
しかし、日当りが悪いというのは、茅葺きにとっては厳しい条件です。
とはいえ僕とヤマダさんでここを担当した以上は、最初に傷んで来たらワカモノ達に示しがつかないので、差し茅にも気合いが入っております。
0827 まだまだ差し茅は続く
ハサミはあくまで仕上げにかけるもので、差す過程である程度は屋根の平面ができあがっているのが理想です。
差して上がる時にきちんと屋根のかたちが出来ていないと、足場用に吊ってある丸太を外してから、ハサミをかける前にでこぼこをならす調整が必要となり、余計な手間がかかってしまいます。
丁稚のワカモノ達が調整に苦労しているあいだに、反対側の小間にも足場を組んで差し茅を始めました。
今回のように屋根全体に差し茅をしてかたちを作り直す「総差し」では、軒を充分な厚みで丈夫につくっておく事が、長持ちさせるためにも肝心となります。
古くなった屋根では手前のように軒の厚みは半分程に減っています。ここに茅を差すことで軒をつくり直して行きます。
ところで、我々が毎日使わせてもらっている洗濯機で、この白いアマガエルがいつも休んでいます。
アマガエルは住む場所に合わせて体の色を変えているので、茅葺き屋根の上で暮らしている灰色の個体は良く目にしますが、ここまで白くなったのは始めて見ました。
間違って洗剤で洗ってしまった訳ではありません。