カヤマル(1)で参加者の皆さんと天日干しにした、あの膨大な阿蘇の茅束は、今、こうなっています。もちろん、これはほんの一部です。
明日は、カヤカル(3)。「カヤマル'06」中、最後の茅刈りです。現地は、雪が降りそうで、冷え込んでます。
カヤマル参加者の皆さんに手伝って頂いた茅干し作業、いつ終わるとも知れず続いています。
当たり前のことですが、いくら茅葺き屋根に通気性があると言っても、湿った茅で葺いては屋根は中から腐ってしまいます。ですからきついことを言えば、充分に乾燥していなければ、ただの「濡れたススキの束」であって、茅とは呼べません。参加者の皆さんも「なぜ屋根葺きに来て、茅拵えを手伝わされるのか」納得しかねることもあったことと思います。
しかしながら、自然の産物である茅は工業製品のようには生産管理できません。雪が積もるとススキは潰され折れてしまって、茅として使えなくなってしまいます。
今年は初雪が重く、降る時期も早かったため、阿蘇でも雪に追われて刈り倒しておいた茅を、雪の下から掘り出して束ねたそうです。本来なら商品として受け取れるような品質ではないのですが、良質な茅を毎年産出して頂いている茅場だけに、天候不順が原因なら可能な範囲でこちらも協力させてもらうことにした次第です。
カヤマル参加者の皆さんには、十分な説明も出来ずお付き合いさせてしまって、申し訳ありませんでした。
sh@
九州の阿蘇山から茅(ススキ)が10tの大型トラックでやってきました。
いずれは里山公園とその周辺の茅刈りで、必要な量の茅をまかなえるようになりたいのですが、とりあえず今回は各地の「茅場」から買い集めて、カヤカルによる成果の不足分を確保しました。
何しろ阿蘇のほかに、吉備高原、北上川、宇治川から10tトラックが4台も集まってくるのですから。今回は新築ということもあり本当にたくさんの茅が必要になります。そして、茅葺き屋根が想像以上に重いということもわかってもらえるのではないでしょうか。単純計算だと40t。
sh@
茅材は屋根下地に対して角度をつけて並べなければ、屋根の形になりません。そのために軒裏となる部分で、下地のほぼ45°勾配から一気に水平近くまで角度を上げてしまいます。
この軒付けで屋根の大きさや形が決まってしまう、最初の大きな山場となります。
下地の一番下に据えられている木材が「カヤオイ」。断面が台形で角度をつける最初のステップとなります。要は下地の横竹よりも太ければ良いので、細めの丸太等も使われてきましたが、カヤオイの太さが一定でなければ、仕上がった時の軒の厚みがそろわないため、製材した角材を用いています。
柔らかな茅材が屋根裏にはみ出してこないように、下地に一握り厚さのヨシをワラ縄でかきつけて行きます。
その上に稲藁を一定の厚さで固定します。短くてテーパーのきついワラで角度を稼ぎます。ワラは水に濡れるとすぐに傷んでしまいますが、軒裏には雨水が回る事は無いので問題ありません。
ワラの上に半分に切ったススキの穂先等の短い材料を並べて、さらに角度を稼ぎます。
必要な軒の厚みが出た段階で、茅材を並べるのに最適な角度に収まっているように調整して、最後に長く丈夫なススキを並べて茅押さえの竹で縫い止めます。
sh@
「屋根屋さん、この肥やしみたいな臭いは何なんですか?」
「さあ、屋根の材料ではないですよ。古色に柿渋を塗らはったんと違いますか」
「えっ、あれってこんな臭いするんですか?」
「柿渋はウ○コの臭いしますからねえ」
ウン○の臭いは時間が経てば消えるけれど、古色を塗ることは竣工時に完成型を求めるわけだから、『つくり続ける公園』のコンセプトからぶれてしまわないか心配になります。
個人的な考えとしては、これから時間をかけて使い込んで、いい色出していけば良いのにな、と思います。
sh@
レン(茅葺き屋根の垂木)。手前から1本目と3本目が、柿渋系塗料による『古色』着色がなされた新補材。
2本目はエイジングによる本来の『古色』が出た古材。