箱棟の大和棟には「養蚕のために2階の通気窓が必要」というような、切実な機能上の訴求があった訳ではありません。採用することによるメリットとデメリットを考えてみると、結構微妙なバランスであるにもかかわらず、その地域を代表する意匠となるまでに普及している要因としては、結局「格好良い」からではないかと思うのです。
カッコイイかどうかというのは主観の話になってしまいますが、モノの要素としては重要な事柄でしょう。僕は多少機能面に不満があっても、デザインが気に入っている道具は案外愛せます。が、その逆はなかなか難しい。
さて、関西は茅葺きといえば入母屋造りが殆どで、美山町もその例外ではありません。けれども,美山周辺の入母屋の茅葺き屋根は、民家としては例外的なほど大きな破風(ハフ:三角の煙出し)を設けています。
風破を設けて入母屋造りにすること自体は単なる装飾ではありません。排気効率を高めるだけではなく、妻側だけ傷んだときに棟を障らずにその面だけを葺き替えることができたり、色々と便利なこともあります。ですが、破風はとにかく付いていれば良いのであって、大きくしたところであまり良いことはないばかりか、風に対して弱くなるし、雪が屋根裏に吹き込んできたり、動物が入り込みやすくなったり、何かと悪いことばかり増えてしまいます。
それでも、美山町の伝統的建造物群保存地区に行けば、大きな破風を上げた家ばかりずらっと並んでいるのは、やはり、「大きい方がカッコイイ」と皆が思ったからではないのかなあ。
sh@