あいな交流民家にも応援に来て下さった、「山城萱葺屋根工事」のヤマダさんの現場にお手伝いに来ています。
宇治田原市の禅定寺というお寺の本堂です。
今回の工事は葺き替えではなくて、「差し茅」と呼ばれる補修です。茅葺き屋根を長持ちさせるためには、適切なタイミングで差し茅を行う事が大切です。
まずは、足場組みから。
足場主任者講習を受けに行っても、「最近では行われていませんから」といって該当する内容を飛ばされてしまう丸太足場ですが、茅葺きの現場では今でもこれが幅を利かせています。
昔は屋根屋はハサミ一本担いで現場に行けば、材料の茅も手伝いさんの手配も、お施主さんに用意してもらうのが普通でした。別に屋根屋の怠慢ではなくて、集落共同体での農業生産の中で、そのようなものが自然と賄えた訳です。足場も、どこの家にでもあった刈り取った稲を干すための「ハサ木(稲木)」を借りて、足りなければ裏山の竹を伐って来たりして縄で組んでいた名残です。
話が逸れますが、現在そのようなかつての伝統的な生産システムに変わるような、「茅葺きと暮らすためのソフト」が構築されないまま、全てが現金決済に置き換わってしまっているのが、「茅葺きは高価」である、主たる要因でしょう。
では、今でも丸太足場にこだわるのは単なる因習かというと、そうでもありません。茅葺き屋根では軒周りの造作に手間がかかるのですが、足場の高さが絶妙な位置にないと、作業に支障が出るばかりでなく、場合によっては仕事ができなくなってしまう事すらありますが、杉丸太を番線で組み上げる足場丸太ならば、足場面の高さを屋根に合わせて自由に設定できます。また、深い軒の下まで回り込んだ足場は、柱材が短すぎるのはもちろん、長過ぎても上部先端が屋根に刺さってしまい使えません。杉丸太なら場合によっては簡単に切断して長さを調節することもできます。
足場を組んでいる途中の様子。
足場の上にはかさばる茅材をストックするスペースも必要です。今回はあくまでも補修のために、どちらかと言うと狭め。葺き替えだと出来ればもう少し広い方がありがたいです。
sh@