月別アーカイブ: 2006年4月

0406 茅材としてのヨシ

禅定寺の茅葺き屋根は、ヤマダさんによるとおそらく琵琶湖産のヨシで葺かれています。
そして、今回差し茅のために用意されたのは、宇治川の「中書島」で山城萱葺屋根工事によって刈られたヨシです。
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'06カヤカルvol.1で刈り取った淀川の「南方」のヨシと比べると、長さも太さも倍以上、手触りも違うし、とても同じ種類の植物とは思えません。

現在、茅材として流通しているヨシの主な産地は、宮城県の北上川河口と青森県の岩木川河口、それに琵琶湖の西の湖周辺です。
前2カ所は海水の混じる汽水域に広がるヨシ原で、淀川のヨシ場も大阪湾の潮の影響を受ける干潟にありますが、いずれも細くパリッとした感じの茅になります。塩分が作用するとそのようなヨシになるのかもしれません。

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宇治川のヨシは琵琶湖のそれと同じように触った感じは少し柔らかめ。太く大きくなるので、差し茅用に1m前後に切った茅が、一束のヨシから3つくらいもとれます。
太くて丈夫な一番根元、材の揃った二番目、先細りで柔らかめの三番目以降を、それぞれ適材適所に使い分けます。
海水の混じらない場所に生える、これがヨシ本来の姿なのか? 或いは琵琶湖の富栄養化した環境のせいで大きく育つのか? 常々気にかかっていましたが、最近そもそも琵琶湖のヨシは大きくなる遺伝子群だという話も耳にしました。もし、そうだとすると淀川水系のどのあたりで、宇治川タイプのヨシと淀川タイプのヨシが住み分けているのか・・・

分類上は同じ植物なのでしょうけれど、茅材としては全く別ものです。どちらが優れているということはありませんけれども(地元の屋根屋さんはそれぞれ自分の使っているタイプのヨシを「日本一の茅」と言いますが)、葺き方は違うのできちんと使い分けることが肝心だと思います。

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sh@

060405 八幡めぐり

春の雨にしては少々肌寒い一日。
現場は動かせないので、ヤマダさんが八幡界隈を案内してくれました。くるまで。

八幡にある重文の茅葺き民家、I家住宅。公開はされていませんが、ヤマダさんのお供ということで特別に見せて頂きました。
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このブ厚い軒はこの家の見所なのですが、これって軒を残して葺き替えを繰り返しているうちに、こんな風に「なってしまった」のかもしれませんね。

たわんでいるし。
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当初は麦わらとかススキの軽めの茅材で葺かれていて、軒が厚くなっても気にされなかったのが、重量のあるヨシで葺き換えられてしんどくなってしまったのかも。

こちらはさらに驚きました。何と、裏に回ってみると総2階。
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増築に次ぐ増築の結果なのでしょうが、ここまで来たら茅葺きでなくても良いのでは?と思う程です。それでも表側を茅葺きにしているのが気概ってものなのでしょう。

こちらのお宅で、個人的に心惹かれたのがこの外蔵。
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軒下の垂木隠しがナミナミしていて、何ともかわいらしいというか、洋風な雰囲気も漂います。

八幡と言えば「流れ橋」。
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堤防沿いにすばらしい自転車道が整備されているし、やはり天気の良い日にチャリンコで再訪したいと思います。
余談ですが、この流れ橋周辺の土手の草刈りも、ヤマダさんの「山城萱葺屋根工事」で行っています。代々、巨椋池周辺のヨシ原の入会権を持ち、冬に刈り取ったヨシをスダレに加工して販売していたヤマダ家ですが、輸入品に押されてスダレの販路を失うと、ヨシは主に材料として出荷し、春夏は草刈りのノウハウを活かして堤防の管理をされています。
最近ではヨシの需要を広めるために、自らも修行して屋根屋となってヨシ葺きに忙しくされているという訳です。
何百年も欠かすこと無く毎年のヨシ刈りで手入れされて来たヨシ場を、時代が移ろっても柔軟な対応と人生をかけた覚悟で、次の世代に引き渡すべく守り続ける。
良い話。

最後に解体修理中の、田辺のこれも茅葺きの重文、S家住宅。
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これは・・・難しそうだぞ。
2棟がLの字につながっているのですが、それぞれの面がきちんと通っている訳ではないし。下地を組むだけで一苦労だろうなあ。
それだけにやりがいはありそうですが、残念ながらこの現場の茅屋根葺きが始まるのと入れ違いに、別の現場へ応援に行くことが決まってしまっているので、あくまでも見学のみ。後ろ髪引かれつつ後にしました。

今日はあまりものを考えないようにして、観光気分に浸っていました。
sh@

0404 差し茅工程

差し茅を始める前に、まず屋根表面の風化して土に変わってしまった茅を、苔ごと取り除きます。
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この苔は畑に入れると地力が衰えてしまうために、肥料にはならないそうです。
いかにも堆肥になりそうなのですが、何故だめなのか具体的にご存知の方がいれば、ぜひ教えて頂けませんでしょうか。

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屋根表面を雨水が流れることで、茅葺屋根は表面から分解して少しずつ薄くなっていきます。
押さえの竹から屋根表面までの厚みは茅葺き屋根の寿命を示す事になりますので、痩せた分だけ茅を引っ張りだして元の厚みにもどします。

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傷んだ先端部分はハサミで切り取って取り除きます。

茅を引っ張りだしたことで押さえの竹は緩んでいますから、緩んだ分だけ新たに茅を差し込みます。
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このとき、どこに、どんな茅を、どのように差すのかが、差し茅で肝心なところです。

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sh@

0401 差し茅

茅葺き屋根に降った雨は、茅材の表面張力と重力とのバランスにより、中に染み込むこと無く屋根の表面を流れていきます。従って、茅は雨に濡れる外側から風化していきますが、中は傷むことはありません。
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ちょっと一本引っ張りだしてみれば、良くわかります。
変色しているのは外側の数センチだけです。

差し茅というのは簡単に言うと、表面が風化した屋根の痩せた分だけ茅を引っ張りだして、傷んだ茅の先端部分を取り除き、引っ張りだして押さえの竹が緩んだ分だけ新たに茅を差し込む。というものです。(他のやり方もあります。あくまでも今回の場合)

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実際には茅葺き屋根は、かたちや長さが様々な茅を上手く使いこなすために、一様には葺かれていませんし、その様子は外観からではよく解りません。
引っ張ってみた手応えや感触で判断して、短くなったりしていて使えない茅は取り除き、差した茅が緩んで抜けたり、詰めすぎて茅の勾配がおかしくなったりしないように調整しながら、屋根全体を均一に新しくしていくのは、それなりに気を遣う作業です。

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sh@