ところで、かやぶき音楽堂に差し茅に来るのは、始めてではありませんでした。
駆け出しの頃に今回手を付けなかった側の大間を差し茅しました。
屋根にカブトムシの幼虫がわいて、それを食べるためにカラスがほじくるので傷むという話でした。
茅葺き屋根が局所的に傷むのは、材料や葺き方に問題があって雨水が染み込んだり、周囲の立ち木や日当りのせいで乾きにくかったりすることが原因となるのが普通です。
ところが、カブトムシの仲間の幼虫は、乾いた屋根までせっせと食べては土に変えてしまいます。もっとも、乾いた屋根よりは居心地のよい腐葉土が周りの地表にたくさんあるので、問題になるほど屋根にわく事はそれほど多くはないのですが、修理しても一匹でも残していると再び致命的な損傷に至ってしまう、茅葺きにとっては癌のようなものです。
とにかく、土に変わった部分の屋根と幼虫を全て取り除き、傷んだ箇所を差し茅した後に、お施主さんの希望で「カラス除け」のためにCDをたくさん吊っておきました。
禅定寺ではアワビの殻 を使っていましたが、この手の「光りモノ」が鳥除けとしては気休めにしかならないのは、ベランダのハト除けやゴミ集積所のカラス除けで皆さん経験されている通りです。
こちらでもカラスはすぐに慣れてしまって効果は限定的だったようで、その後もカブトムシ除けに屋根にクレオソート(石油系木材用防腐剤)を噴霧したり、色々と試行錯誤を繰り返されていたようです。
で、今回訪ねてみると問題の側の大間には、ステンレスのワイヤーが張り巡らされていました。
これだけしておけば例えカラスが慣れてしまうことがあっても、屋根に止まる事は物理的に不可能でしょうね。
今のところカブトムシによる被害も出ていないようです。
まあ、少々うるさい気もしないではありませんが、これだけの大屋根を維持して行く苦労を思えば、効果のあるカラス除けを設置できたのは大きな事だと思います。