月別アーカイブ: 2006年10月

1030 棟の解体

解体せず残しておいた上半分の屋根に、そろそろ葺いて行く茅材の穂先がつかえるようになりました。
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軒に続いて筑波流に特徴的な棟も解体する事にします。
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割竹を編んで作られた竹の簾、棟養生の杉皮、その下にはさらにトタン板。
それら棟に被せられた材料を外して行くと、カマボコ型に曲げられた茅が出て来ました。
こんな風にきれいに曲げるためにはススキを濡らしておかなければならなさそうですが、トタンや杉皮を被せてからどうやって乾かしたのか?
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外見は同じようなカマボコ型の棟でも、やはり鎌倉で奈良の職人さんであるスミタさんが葺かれたのとは、茅の積み方が随分異なります。

棟の端を俵状に束ねたマキワラで収めるのは関西と同じですが、その形態は当然ながら全然ちがっています。
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取り外すとこんな感じ。茅を束ねたにしては軽すぎるので、藁を芯にしているのかどうか。時間をあらためて調べることにします。
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軒を締め付ける針金を取るための、一番肝心な押さえ竹がどうなっているのか、屋根の傷み方が酷くてよく解りません。
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メンバー全員の観察力と推理力を動員して検討します。

古屋根は完全に取り除かれて下地が現れました。
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この門の屋根裏には化粧天井が貼ってあるので、下地の様子を目にするのも初めてです。

1028 軒付け

筑波の屋根を特徴づけている、軒の部分の解体に取りかかります。
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水平に大きく張り出した軒を支えるために、鎌倉の覚園寺でも使った「力竹」が入っています。

軒が付いた状態でも茅材が随分急な勾配で屋根に置かれています。
関西では軒に先細りの材料を使って、軒が付け終わるまでに茅材を置く勾配をなるべく水平に近づけるように努めるので、これには驚かされました。
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軒を層状に積み重ねて美しい縞模様をつくる筑波流の茅葺き屋根。
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このシマシマはバウムクーヘンのように一枚ずつ剥がして行く事が出来ました。

水切りになる軒端の部分を取り去ると、そこから下はそれまでとは明らかに別の職人さんの手によって、より丁寧に収められていました。
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おそらく前回の葺き替えの際にもここより下の軒は傷んでいなかったために、取り替えることなく残されていたものと思われます。

軒を水平に張り出そうとすれば薄くなるので、丈夫に葺くためには難しい技術が必要ですが、上手に葺かれていて茅材の勾配もここでは不自然な程ではありません。
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今回も特に傷んだ箇所を除いてこの軒は残して、その上に重ねて屋根を葺いて行く事にしました。

軒のコーナーを押さえるための、平たい割竹を曲げるための目からウロコな工夫。
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どうなっているか判りますか?

押さえの竹に使われているのは割り竹だけではなく細めの丸竹も。
タナカさんが「マンダケ」と呼ばれたシノタケかネマガリタケと思われる竹は柔らかく、曲げても折れる事は無いようです。一方で固いマダケは折れないようにねじって曲げてあります。
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竹を茅葺きの材として使いこなす技術の発達を垣間見る事が出来ます。

関西流の葺き方だと、コーナーの部分に独立して「角付け」をして固めたくなりますが、筑波のやり方に習ってあらためて軒端の水切りを付け直して行きます。
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茅材の奥が起きて勾配がつきすぎないようにしながら、手前の軒の端になる部分をしっかり固めなければならないというのは、単純に考えると相反する条件を満たさなければなりません。
取り付ける場所を考えて一束ずつ茅を選び、束ごとのクセを活かしながら上手く収まるように気を遣って軒を付けて行きます。

1026 筑波山麓にて

鎌倉滞在中に下見に来ていた、重要文化財 坂野家住宅の薬師門を葺き替えに茨城県にやって来ました。
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6月に予定していた通り、タナカさんが講師をされる社団法人全国社寺等屋根工事技術保存会の茅葺師技術現場研修会として葺き替えを行います。
研修生は僕の他に美山から2人、神戸から1人。
偶然、普段仕事をしている顔ぶれと同じになってしまい、今ひとつ新鮮みに欠けるのは致し方なし。その分互いに気心は知れています。

昨日は資材の搬入と、前もって鳶さんが組んでくれていた作業足場を、茅葺き作業に合わせてアレンジし直したりで暮れてしまいました。
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今朝はタナカさんの手配されたススキが奈良の曽爾高原から4トン車で届きました。
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門とはいえ結構大きいので、これに加えてさらに2トン車大盛り一杯の茅が必要です。

研修なので、地元の職人さんの葺き方を調べながら時間をかけて古屋根の解体にあたります。
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使っている材料はススキの他にシマガヤ、ヨシ、稲ワラ・・・ あれ、何でもあり? 葺いた時期も場所によって差があり、どうやら何度も補修を重ねて来た模様。

おまけに例のカブトムシ?の幼虫が大発生していて、屋根の傷みもかなりのもの。
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周りを立派な屋敷杜の高木に囲まれているせいもあると思います。

とにかく、傷みが予想以上に酷いのと改修によりかなり変更を受けているため、時間をかけてめくった割には得られた情報は多くはありませんでした。
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こちらの葺き換えられたばかりの主屋も参考にしつつ、これまでの経験と気心の知れたもの同士のチームワークで、良い屋根を葺いて行きたいと思います。
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・・・できることなら、こちらの屋根を解体してみたいなあ・・・
などと言っては叱られてしまいますけれども。

門の屋根を解体して行くと、カブトムシの幼虫に混じってこいつが何匹も出て来ました。
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晩秋にはアシナガバチが、乾いた茅屋根の中に潜り込んで冬眠しかけている事が良くありますが、スズメバチは初めて。勘弁してほしい。

茅葺き屋根の中は、本来なら極度に乾燥しているのであまり生き物は棲んでいません。
こんなに虫だらけの屋根はめずらしいです。
それだけ傷みやすい条件にあるという事かもしれないので、葺き替えにはいっそう気を遣います。

061020 早業

この屋根、新築。4日で下地から葺き上げました。

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もちろん、新記録!!

ただし、裏側から見るとこの通り。
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時代劇の撮影用オープンセットだそうです。

まあ、お仕事ですから、こんな屋根を葺く事もありますわな。

1015 竣工しました

天候にも恵まれて刈込み仕上げは順調に進みました。
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穏やかな秋の日差しの中、北では稲刈りに続いて収穫された、粟(アワ)が稲木で干されているのを目にする事が出来ます。
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ハサミで仕上げて足場を解体し、本日無事竣工しました。
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手前側の小間(妻側の面)は何年か後にあらためて葺き換えます。

茅葺き屋根は北側と南側、棟の方と軒の方、大間と小間で日当りや雨水の流れる量が異なりますから、傷み方にも差が出て来ます。
毎年少しずつ刈り貯めた茅で、傷んだところを順番に葺き替えていくのが本来の茅屋根の葺き替えの在り方です。この時の屋根の分割の仕方は、地域による気候風土の違いに即して、最も効率が良くなるように工夫されて来ました。
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北の「かやぶきの里」はもちろん、美山とその周辺では屋根を上半分だけ葺き換えた、つぎはぎの茅葺き屋根が目につきます。
茅屋根の葺き替えが文化財保護のための特別なことではなく、そこに住む人の暮らしの中で当たり前に続けられている事、そのような住人の意識こそが、「かやぶきの里」美山の一番の財産なのではないかと思っています。

1012 棟収め

美山では朝晩は冷え込むようになって来ました。
朝起きて曇っているようでもそれは秋の霧で、上空には青空が広がっています。こんな日は間もなく晴れて気温も上昇して来ます。
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10時をまわればこの通り。
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ちなみにこれからの季節の美山で逆に朝から青空が見えていると、昼までに天気は崩れて来ることが多いので、写真を撮りに来られる方などはご参考までに

夕方にはいよいよ葺き上がり、明日は棟上げです。
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と、思っていたら、また雨。

一日休んで本日、気を取り直して棟収め。
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今朝も冷え込んで霧が出ていますが、既に霧を透かして青空が見え始めています。

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秋晴れのもと順調に棟を収める事が出来ました。
が、ちょっとお日柄が悪いということで(本日は仏滅)、仕上げのユキワリ(棟飾りの横木)は上げずに待機して別の工程をこなして来ました。

1009 葺き上げ/連休の美山

週末になってようやく雨が上がりました。

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これほど長期にわたって天候が荒れるとは。油断していました。天気図を読み切れなかった自分が悪いのですが、天気予報に愚痴の一つも言ってみたくなります。

日曜日は北の八幡様のお祭りで、かやぶきの里の中を神輿が練り歩いて行きました。
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行楽シーズンの連休で、かやぶきの里も大勢の観光の人達で賑わっています。
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茅葺きの葺き換えに興味を持って頂けるのは嬉しいのですが、北集落の住宅には塀や垣根がありませんので、うっかり他所のお宅の庭や畑に入り込んでしまわないようにご注意下さい。
見学は町道上からどうぞ。また、しつこいようですがくわえ煙草は厳禁でお願いします。

連休最終日は久し振りの快晴でした。
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お祭りもすんで現場の人数が揃った事もありますが、天気が良いとやはり仕事は捗ります。

1007 雨月

美山では雨に降り込められてもう3日目です。
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あまり雨が続くと屋根屋のフトコロは干上がってしまいます。

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昨晩の中秋の名月ももちろん顔を見せてはくれませんでしたが、雨の止み間に庭に出てみれば月夜の曇り空は全天がぼんやりと光っていて、月も無いのに庭も明るく不思議で良い感じでした。

1004 銀波うねる季節の美山

きたむらではススキの尾花が秋風に揺れています。
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月初めから美山に戻って葺いています。
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僕が神戸で茅運びをしている間は続きの工程ではなく、それまで手をつけていなかった南側の大間の下半分の差し茅をされていたそうです。

わざわざ取っておいてくれるなんて・・・
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と、いうか、角の部分は職人の個性が出るところなので、続きをするのを皆が嫌がったのかも。
と、いうのは、もちろん冗談ですが、それぞれの角は一人の職人が責任を持って葺き上がった方が良いのは確かです。