日別アーカイブ: 2006-12-06

1206 武蔵野入り

ナカノさんの「きたむら茅葺き屋根工事」をお手伝いするために、博物館として公開されている旧白州次郎/正子邸「武相荘」の葺き替えにやって来ました。
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今年最後の現場も関東です。

手入れの行き届いた雑木林に囲まれた、建物の屋根は一面の枯れ草に覆われていて、夏場にはさぞかし青々としていたことでしょう。たくさんの実生も枝を伸ばして周りの林と一体化しようとしているかのよう。
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すぐ軒際にあるシラカシではなく、親木の少し離れたカエデやケヤキの苗が多いのが不思議と言えば不思議です。

軒裏を覗くと、軒の端は乾いているのに中程が濡れています。
屋根の中に雨水が入り込んでしまっている証拠です。
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果たして幼木を引っこ抜くと巨大な穴が・・・
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では、木の根がこの穴を穿ったのかと言えば、必ずしもそうとは限りません。
普通の状態では雨水は茅葺き屋根の表面を流れるだけで染み込むことは無いので、乾いた屋根の内部に木が根を伸ばして行く事は無いはずです。実際屋根に芽を出した実生や雑草を引っこ抜くと、屋根表面の風化した部分に広く浅く根を張っている事が殆どなのです。

穴の中からは今まで見たことのないような、立派に太ったカブトムシの幼虫がごろごろ出て来ました。
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カブトムシの幼虫は乾いた屋根までせっせと食べては良質の腐葉土に変えてしまう、茅葺き屋根に取っては癌のような困った存在です。

古い屋根の断面を見ると、ススキで葺かれた屋根に後年の補修でヨシによる差し茅がされてますが、差されたヨシが丸ごと水に浸かったような状態になってしまっています。
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差し茅の際に古い屋根との取り合わせや勾配が合っていないと、このように屋根の表面ではなく中を雨水が流れてしまうことがあるようです。これでは、せっかく差した部分が屋根としての用を成していません。特に異なる素材を混ぜる時には注意が必要です。

要するに、穴があく程屋根が傷んだ原因はひとつには絞れません。
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周りを木々に囲まれた、茅葺き屋根に取ってはやや厳しい環境であることを肝に銘じて、関西の屋根屋が笑われないように、長持ちする良い屋根にしていきたいと思います。