手入れの行き届いていない茅場で刈り取ったススキには、このように根元がえげつない曲がり方をしているものがあります。
ただ、ヨシだと毎年刈り取っているヨシ原でも、このように曲がったものがちらほら混じります。
環境だけではなく遺伝子などの先天的な原因があるのかもしれません。
イギリスの茅葺き職人は、このように曲がったヨシのことを Dog Legs と呼んでいました。
犬の後ろ足みたいな曲がり方だと思いませんか?
さて、屋根に手を突っ込んで竹押さえの針金をとっていると書きましたが、具体的な方法について。
分厚い茅の中にいきなり手を突っ込むのは大変(というより無理)なので、このような道具を使います。
「テバリ(手針)」とか「カイ(櫂)」とか呼ぶようですが、美山ではもともと使わない道具なので、ウチの現場ではまだ呼び名が安定していません。
そのカイを屋根に差し込みます。
感触を頼りに垂木の位置を探し出し、
90度捻って茅に隙間をつくります。
そこに手を突っ込んで垂木に針金をかけます。
今回の現場では天井が張ってあり屋根裏に入れないので、仕方なくこのような方法をとっていますが、地域によっては日常的にこの方法を用いられる職人さん達もおられます。
捻ったカイを戻して引き抜けば、茅に開けられた隙間は塞がります。
とはいえ一旦きれいに並べた茅を開くのがためらわれるのと、1カ所の隙間から通した針金や縄で押さえの竹を締めれば、垂木の太さの分だけ茅は割れてしまいます。
垂木の左右に分けて差した針の縄なり針金を、屋根裏に入ってもらった人にかけかえてもらえればそのようなことはおきないので、やはり僕は出来れば手針は避けたいのですが。
ちなみにカイは普通木製です。
カイに適した板材がなかなか手に入らないので、金属製のものを色々試作して試しているところです。