寄せ棟の清蓮亭は下地だと武相荘のミニチュアみたいでしたが、棟を上げれば京都の庭園にふさわしい表情となるはずです。
茅葺き屋根の地域性がもっとも顕著に現れるのはやはり棟です。
昨年たくさん積んだ関東の屋根は、どれも断面が半円のカマボコ型でしたが、関西の茅葺き屋根の棟は断面が三角になります。
棟は一番最後の押さえ竹から縄(現在は多く針金ですが)を取って固めます。一度に高く積み上げると固まらないので何回かに分けて固めるのですが、その際に関西では押さえ竹から針金を取るのは1回目だけで、2回目は1回目に固めた針金から、3回目は2回目の針金からと、上に上にと鏡餅のように積み上げていきます。
最後の押さえ竹から屋根表面までのギャップを埋めるために、半分に切ったススキの穂先の方を、棟の根元に段が付くようにして並べて止めます。
両端には並べたススキがこぼれないように、杉皮でススキを巻いたものを固定しておきます。
雨養生に杉皮を被せて竹で押さえます。
竹を押さえる縄(今回は針金ですが)は杉皮を割って棟の中から取らなければなりませんが、その位置は次の工程で棟飾りが乗る位置に揃えておきます。
茅束を杉皮で巻いた棟飾りは単なる飾りではなく、杉皮を押さえた竹を縫い止める縄を、雨から養生する働きがあるので「針目覆い」と呼ぶ地方もあります。
美山では捻りなく「マキワラ」と呼んでいますが。
針金だと雨が伝って漏る心配もあまりないので、単なる飾りにしてしまってもよいのですが、せっかくなのでマキワラが隠してくれる位置で、押さえ竹を止める針金を取っておきます。
杉皮の端を揃えてはみ出した茅を切り揃えれば棟は完成です。