月別アーカイブ: 2007年4月

0407 軒付け/いさざ

軒付けは進んで、軒の裏側になる部分は付け終わりました。短い材料を使って下地に対して角度を稼ぎます。
これから葺いて上がって行く際に、茅を屋根に設置する角度の基準となります。
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美山の屋根も相当勾配がきついのですが、丹後の屋根の平(ひら)面はそれ以上に急角度なので、何も対策をとらずに葺いて行くと、奥の方が起きて茅を設置する際の角度が急になりすぎてしまいます。
なるべく茅が寝るように、材料や葺き方に気を遣っていく必要がありそうです。

さて、周りを海に囲まれているとはいえ山深い丹後半島には、谷川がそのまま海に注ぐような、きれいな流れの川がいくつもあります。
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旧永島家住宅の前でもそのような川が阿蘇海(宮津湾の天橋立に仕切られた部分)に注いでいて、まだ寒いのに放課後の子供達が水遊びに集まって来ますが、この時期子供の他にもそのような川のうちのひとつに集まって来るのが「イサザ」です。

「この時期に丹後に来たらイサザ食わなあかんわ」と博物館の方に薦められて、イサザ漁の漁師さんを紹介してもらいよくわらないままに買いに行きました。
買ってみて判ったのですが、イサザとは産卵のために河口に集まって来たシロウオのことでした。
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踊り食いを珍味として高級料亭で供するというイメージがあったのですが、漁師さんは一合単位でドパッと売って下さいました。

さて、それをどうするか。
ぼやぼやしているとせっかくの新鮮なシロウオが、見る間に弱って行くようです。
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一応踊り食いにも挑戦してみましたが、それで量を食べるものでもありませんし。
吸い物、卵とじ、素揚げなどなど、淡白なのに噛むほどに味の濃くなる、なかなかに後を引くお味でした。

0405 茅葺きの屋根裏

丹後の現場に入ったばかりでしたが、冷たい雨に降られて一旦美山に退却して来ました。
夜には花寒から春の嵐へと。雹に降られると自宅のトタン小屋は寝ていられません。
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美山ではコブシが花盛り。タムシバかもしれませんが、見分けられません。
これから新緑までの一ヶ月間、山は日々移り変わる一年で最も賑やかな色彩を楽しませてくれます。けれど今年も現場泊まり込みなので、美山の春はおあずけです。

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さて、再開した現場では軒付けが順調に進んでいますが、押さえの竹を下地のレン(垂木)に縫い止める工程で少々問題が発生しました。

押さえの竹を止める縄(or針金)は、大きな屋根葺き用の縫い針を突き通して、屋根裏に入った人に取ってもらう(「針取り」と呼びます)のですが、旧永島家住宅の屋根裏は、郷土資料館に付属している収蔵庫として使われていて、収集された民具が溢れかえっているのです。
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屋根裏に入らずに縫い止める方法もあるのですが、僕としては作業効率と精度の両面から、針取りをするのが一番良いと思っているので、できることならばそれでやりたいところです。

と、いうわけで丁稚サガラには苦労してもらうこととなりました。
民具を片付けるにも文化財だけに手荒には扱えず、しかし中には触っただけで壊れそうなくらい劣化したものもあり、何とか造ったわずかな隙間に体を潜り込ませての作業です。
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茅葺き屋根の屋根裏は家の中で火を焚いていた時代には煤だらけで、大事なものをしまっておける場所ではありませんでした。しかし、毎年刈り貯めた茅を収納するには、煙たいということは乾燥して虫がつくこともないので、かえって具合が良かったのです。茅が屋根裏一杯に詰まっていても、葺き替えの際には外へ運び出されますから、それは針取りの邪魔になることもありません。

火を使わなくなったことで天井が貼られ、屋根裏が物置になったり居室に改装されたりするようになりました。
針取りがやりにくいだけならばまだ良いのですが、それが茅葺き屋根の寿命に悪い影響を与えるようなことはありはしないかと、少し気になっています。

0403 天橋立のたもとで軒付け

天橋立を眼前に望む丹後郷土資料館に移築されている、「旧永島家住宅」の屋根を葺き替えに来ました。
丹後の茅葺き民家の特徴でもあるとても高い軒は、養蚕が盛んだった時代に屋根裏を蚕室として利用するために、2階にも窓を設けるために施された改造です。
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養蚕のために茅葺き民家には、日本各地でそれぞれ工夫を凝らした改造が施され、今日私達に多様な茅葺き屋根の姿を見せてくれている、大きな要因のひとつとなっています。
それにしても多雪地帯の丹後で、土塗りの大きな妻壁を庇も付けずに曝しているのは、建物の耐久性に問題を生じないのかいつも心配になりますが・・・このスタイルが丹後の西側では普通に見られます。

カラスが茅を抜くと、屋根の表面にこんな風に茅が散らばってしまいます。
加えてこの屋根の場合、破風(ハフ)との境に何者かが潜り込んで穿った穴が開いていますね。
穴を開ける時に茅を掻き出したな・・・
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ネコとかイタチとかムササビとかでしょうが、囲炉裏やクドで火を使っていた頃には、屋根裏は煙たくてわざわざ潜り込みたくなるような空間ではなかったはずです。
「囲炉裏を使わないから屋根が傷む」という説は、通説としてまかり通っているほど僕としては納得してはいないのですが、「囲炉裏を使わないから屋根裏が快適→動物が入り込んで天井裏に棲みつく→動物が入らないように隙間を塞ぐ→屋根裏の換気が悪くなり屋根が蒸れて傷む」ということはあると思います。

外観はそれほど傷んではいなかったのですが、解体してみると再利用できる茅はほとんどありませんでした。
前回の葺き替えに用意されたススキの品質が、もともとあまり優れていたとは言えないものだったようです。
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下地の竹も軒並み虫食いのために交換が必要で、刈り旬を待たずに慌てて材料を用意しなければならなかった、前回の屋根葺きの際の苦労が偲ばれます。
茅葺きの葺き替えが人の暮らしの中にあった頃には起きなかったことでしょうが、公共事業の予算の執行には、茅葺きのリズムはのんびりし過ぎていて付き合ってもらえないようです。
そんな訳で今時の茅葺き職人には、常時材料のストックが欠かせなくなってしまいました。

下地を交換して軒を付け始めます。
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最初に屋根下地に固めの材料を薄くかきつけてこれが軒裏の一番内側のラインとなります。

現場の目の前には横一文字に伸びる天橋立。
晴れた日には広々とした風景に気持ちが和みます。
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うらうらとした春の日差しに、のんびりし過ぎて眠くなってしまうのは困りものですが。