シオザワの母校である神戸芸術工科大学で、かつて学生を指導しながら一緒に制作した茅葺きの方丈庵が、新校舎建設の用地にかかりるということで、取り壊される前に解体しに行って来ました。
在籍中の茅刈り活動が現在の茅葺屋の礎となったように、神戸芸術工科大学では神戸市が全国有数の茅葺きが残る地域であることを明らかにし、さらにそれらをサスティナブル建築、環境共生住宅、生態系保全、都市と農村との交流機会など、環境デザインの視点から評価する研究活動が活発に行われて来ました。
この方丈庵でも実際に茅屋根葺きを体験することで、茅刈りに参加する学生の技術とモチベーションの高まりを期待していました。もちろん、身近に茅葺きの建物があることで、建築として評価する機会としても活用していってほしかったのですが・・・
めくりながら再使用可能な茅はまとめて、畑行きの茅とは分けてはおきました。それらは研究室のメンバーが保管場所まで運んでくれましたが、再利用できない茅は畑に行くあてが無く産廃扱いとなるようです。
解体に際して学部の学生が誰も来なかったのは寂しいですね。夏休み中ということもあるでしょうが。
学内でも茅刈りなど行われるようになって、多少なりとも茅が刈り貯められていたら、別の場所でまた葺き直すということも検討できたのですけれども。
この建物がそこまで学生に愛され無かったということについて、滋賀県立大や立命館大学での、独創的な切り口での茅葺きに関わる活発な活動を見て来たこともあり、もっと学生の興味を引き出すような方法があったかもしれないと、責任も感じています。
同時に「デザインの大学」であるはずの母校が、敷地内の茅葺きや雑木林といった資産を活かせず(デザインできず)、ファッションとしての建築やCGアートなどに偏りつつあるように思えて心配です。僕はこの大学で「茅葺きが環境デザインである」ことを学んだのですが、現役の学生がそのような薫陶を受けられそうな空気は、随分と稀薄になっているように感じました。
茅葺きの方丈と並んで建っていた、かつての在校生が版築工法を用いて建てた、土の実験住宅も取り壊されました。草や土の小屋が建ち並ぶ様は、現代の建築デザインの最先端モデル展示場のようで壮観だっただけに、仕方の無いこととはいえ残念です。