全くの私事ですが、夏の終わりに妻と入籍したことを、親族や親しい友人たちに報告する席を先週末に設けました。
「茅葺き職人のブログ」なので、あまりプライベートに過ぎる内容は押し付けがましいと、控えるように心がけていますが、今回は会場として使わせて頂いた建物の事を、ぜひ知って頂きたいと思いましたので。
開港地として栄えた神戸では、保存地区に選定され観光地として有名な北野地区とは別に、風光明媚な須磨・塩屋の地に居を構えた人々も多く、海を望む緑の丘に異人館の点在する風景は、地元でジェームス山と愛着を持って呼ばれてきました。
しかしジェームス山の洋館群は、その歴史的建築的な価値にも関わらず、これまで保全の策が講じられずにいるため、近年その多くが取り壊されたり放置されたりし、存続が危ぶまれる状態です。海沿いを走る国道や鉄道からもよく見え、ジェームス山の顔とも言える旧グッゲンハイム邸も、ここ数年急速に傷みが進行していくのを、幼い頃からこの地で過ごして来た僕は、暗澹たる想いで眺めていました。
それがこのほど、地元のステンドグラス作家の方が、個人で費用を捻出して購入、町のシンボルとして活用されることで維持を図って行くべく、修復を進められているという朗報に接することができました。
自分たちの結婚を祝う集いが、塩屋の風景の一部であり、地域の財産である旧グッゲンハイム邸の、保存活用の一助になれば、これほど嬉しいことはありません。早速コンタクトを取り想いを伝えると、快く使用を許諾して頂けました。
建物の使用が決まってから開催までひと月もなかったので、とても慌ただしい準備となりましたが、多くの人達の助力を得て無事執り行なうことができました。
急な話しに貴重な時間を割いて集まってくれたゲストの皆さんも、自然に恵まれ文化の薫り立つこの地を象徴する、歴史建築の空間を存分に楽しんで下さったようでした。
これから末永く、この建物が多くの方々に愛され活用されて行く事を祈ると同時に、異人館の建つジェームス山が漁村の路地の奥に見える、独特な塩屋の街並を守り育む道が拓かれるように、わずかでも力になれる事を探して関わり続けて行くつもりです。