月別アーカイブ: 2007年11月

1129 軒付け

茅葺き用の下地の段取りが整ったので、いよいよ茅を葺き始めます。
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今回は垂木が竹となり釘打ち出来ないので、カヤオイも丸竹を藁縄で結わえ付けて使います。

例によってまずは堅めの材料をかきつけて行きます。今回は宮城から届いたヨシの一部を使います。
ヨシの茎の中は中空で断面には穴が開いていますが、ヨシに混じって茎の中が詰まって断面が白いものが混じっています。
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何という名前の植物か判らないのですが、ヨシとは異なる種類だと思います。しかし、ヨシに混生して外見はそっくりなので、刈り取られて茅材となったヨシには常に紛れ込んでいます。

ストロー状のヨシに比べて通気に欠けるせいか耐久性が劣るようで、刈り子さんからはヨシに対して「アシ(悪し)」と呼ばれていたりします。雨に濡れる屋根表面に使うのは避けたいので、選り分けて屋根裏となるかきつけに用いることにしました。
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「アシ」をかきつけた上に、角度を稼ぐための稲藁を取りつけて行きます。

藁の上には短く切ったススキを並べてさらに角度を稼ぎます。
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最後に長くしっかりとしたススキを並べて竹で押さえて、軒裏となる部分が葺かれました。
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美山では時雨れていたというのに冬の瀬戸内は天候に恵まれて、茅葺きのセオリーから外れた下地に手こずりながらも、今のところ仕事は捗っています。
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里山公園のある藍那は、神戸の中では天気の崩れやすいところではありますが。

1127 続・茅葺くための下地とは

丸太のヤナカの上に、竹の垂木を藁縄で「箱結び」にして固定して行きます。
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少なくとも日本の技術で葺く限り、並べた茅を押さえる竹を縫い止めるために、縄にしろ針金にしろ垂木に回して締めつけますから、その時に片効きせず均等に締まるように、茅葺き屋根の垂木は断面に角の無いものでなければなりません。

丸竹の垂木を配して、これで茅屋根を葺いて行けるようになりました。
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ただし、普通の屋根を葺くための小屋組の上に、茅屋根を「張り付け」たようなことになりますので、屋根全体がしなやかに動いて風や地震の力を受け流す、茅葺き特有の強さは期待できないかもしれません。
もちろん、それを賄うだけの構造計算がなされているのでしょうが、丈夫に固めるのではなく「総持ち」で粘る茅葺きの強さも、現代の構造計算式で評価して頂けるようになればと思います。

ところで今回の現場では「藍那かやぶき交流民家」に続いて、「手伝いさん」チームをアルバイトを募って編成していますが、3K+αの現場にもかかわらず茅葺きに関心を示してして下さる人達が集まってくれました。
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感謝しつつ、いきなりの肉体労働に勤しんでもらっています。茅葺きの現実ですので w
軒付けに使う短い茅を作るために、ススキの束を切ってもらっています。

1126 茅葺くための屋根下地とは

今回茅葺屋で担当させて頂く現場に、大工さんの建て方が済んだのでやって来ました。
新築されるストローベイルハウスの屋根を茅で葺きます。
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常々、「藁の家」は屋根を茅葺きにしてこそ完成するのでは?と思っていたので、とても興味深い現場を任せて頂けることになりました。

ただし、角材の垂木で和小屋に組まれた下地は茅葺きのためのものではなく、このままでは茅屋根を葺いて行くことができません。
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茅葺き屋根を新築する機会というのは、大工さんにとっても建築士さんにとってもほとんど無いことでしょうから、新築物件の場合必ずしも珍しいことではありませんが・・・

しなやかで丈夫な茅葺き屋根の「総持ち」が発揮されるように、できることならば小屋組から配慮された建物が増えて行くようになると嬉しいです。
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そのために我々茅葺き職人からも、出来る限りの情報発信を心がけて行きたいと思います。

とにかく茅屋根を葺ける下地にしなければなりません。まず大工さんにお願いして、角材の垂木の上に丸太のヤナカ(母屋)を設置してもらいました。

071123 冬支度

仕事の合間を縫って少しずつ葺き進めていた砂木の家、ようやく窓枠周りの複雑な所も含めて、全ての軒が固まりました。
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さあ、これからペースが上がるというところなのですが、ここでひとまず時間切れとなってしまいました。

来週から神戸で大きな現場が始まるので、雪の季節を迎える美山を後にして、春までこちらはお休みです。
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屋根に養生を念入りに施し、雪が積もって足場が壊れないように茅も全て下ろします。

下ろした茅は、先日刈った茅と合わせて軒周りにぐるりと立てかけておきます。
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刈った茅を乾かすと同時に、壁の無い砂木の家に風が吹き込むのを防ぐためです。いわゆる「雪囲い」ですね。

家の中から見るとこんな感じ。風を防ぐ上に断熱性の高い茅束に囲われて、とても暖かくなります。
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ただ、とても暗くもなりますが。

それでは、春まで無事でありますように。
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1121 ヨシの搬入

久し振りに神戸の里山公園予定地にやって来ました。
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今年度ここに新築される、2棟の茅葺き建屋の屋根葺きに携わります。

神戸は美山と比べて2週間ほど季節が遅いでしょうか。
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日だまりに羽を休めている蝶も、飛び立つとまだまだ元気です。

そこに宮城県の北上川河口のヨシ原から、大型トラック満載のヨシが届けられました。
藍那の里山公園に葺かれる屋根の茅は、公園内を含めた地元神戸と、将来予想される来園者の多くの方にとって身近であろう、淀川水系のヨシを中心に葺いて行くことで、茅葺きの身近な環境との繋がりを感じてもらえるようにしたいと思っています。
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ですが、本格的な茅刈りシーズンの始まる直前の今は、最も茅材の枯渇する時期となるため、とりあえず軒付けを賄う量のヨシを国内最大手のヨシ屋さんから購入しました。

これを積むのも下ろすのも手作業ですので。なかなかに骨が折れます。

071118 時雨れて後、虹

今朝は久し振りに雨の音で目が覚めました。
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これからの長く暗い季節の到来を知らせる冷たい雨ですが、盛りを迎えた紅葉の鮮やかさが気持ちを救ってくれます。

雨の日はもちろん、屋根は触れません。
11月は竹材の切り旬で、この季節に切った竹には虫が入ることがありません。集落の入り口にある竹薮に、竹伐りに行きました。
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かつては稲藁とともに生活道具の多くを賄っていた竹材ですが、最近では使われることが少なくなったばかりに、各地で増え過ぎて問題視されてしまっています。
茅葺きには大量の竹が必要ですから、地主さんにことわって刈り続けて行くことで、この竹薮もきれいな竹林に育てて行きたいと思っています。

時雨れている中で竹を伐るのは、なかなかに堪える仕事ではありましたが、夕方に雨が上がるとちょうど砂木の谷を跨ぐように、見事な虹がかかるのを見ることができました。
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これほど近くで、はっきりした虹を見るのは始めてだったかも知れません。

071117 雪虫

今朝は冷え込んで、茅屋根の上に初霜が降りました。
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去年の冬は年が明けても生暖かい日が続きましたが、今年の冬は例年並みの積雪となるのでしょうか。
雪は困りますが、ナラ枯れの急速な蔓延と、昨年の暖冬、今夏の猛暑が関係していたのなら、冬は冬らしく寒くなって欲しいとも思います。

秋に冷え込んで霧の立ちこめる朝は、日中の快晴を約束してくれます。
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ここ数日、美山では穏やかな小春日和が続いています。
天候に恵まれて、砂木の家の屋根葺きもじわりと進行しました。

優しい午後の日差しの中を、ふわふわと小さな綿毛のようなものが待っています。
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体から分泌され蝋状の綿毛に覆われたアブラムシの仲間ですが、美山をはじめ積雪地では広く雪虫とか雪ん子とか呼ばれています。
雪虫が飛ぶと、そろそろ初雪が降ると言われています。雪の季節までに屋根を葺いてしまうのは、難しくなって来ました。あわてる必要も無いのですが・・・

071114 刈ったり、燻したり

砂木の家の周りの茅場でも、雪が来る前に茅刈りをすませておきます。
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こうして毎年少しずつでも茅刈りを続けることで、葺き替えのための茅を用意するだけでなく、家の周りにミズヒキソウがかわいらしい花をつけ、キリギリスやスズムシの鳴く、ススキ野原を育てることにもなっています。

土間では毎日燻炭をつくっています。
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実に簡単な仕掛けですが、燃やしているのではなく蒸し焼きにして炭を作っています。部材にはほとんど色がつきませんので、煙はほぼ水蒸気で煤はあまり含まれていないようです。

出来あがった燻炭は、床下断熱材として根太の間に敷きつめます。その上に畳を敷くための荒板が貼られて行きます。
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以前美山町内で、地元の木を使った立派な築60年の小学校の校舎が、解体されてしまったことがありましたが、その際に2階の教室の床板を剥がすと、籾殻が敷きつめられていました。最初は何のためのものか判らなかったのですが、おそらく断熱と防音のためだろうと。
床下からの寒気を遮断することは、効果的な暖房のためには欠かせない対策です。なかなか適当な断熱材を見付けられずにいたとき、小学校の床のことを思い出したので、真似してみることにしました。
ただ、現在の脱穀方法で得られる籾殻は「糠が多く混ざっていて黴びる」と言われたので、それならば燻炭にしてしまおうと。
結果は、自分が暮らしてみて確認します。

071110 里山暮らし塾の茅刈り

友人の大工さんが運営されている美山里山暮らし塾の、茅刈りをお手伝いしてきました。
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江戸時代に建てられた茅葺き民家の周りで、そこにお住まいの方が毎年ススキを刈り取って手入れされている、茅場の茅を刈らせてもらいました。

人が刈って、干して、ヤギが食べて・・・いや、食べてはだめですが、肥料にも飼料にも燃料にも建材にもなる、茅という素材のポテンシャルを垣間見せてくれたような気もするというと、こじつけ過ぎでしょうか?
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参加者の皆さんは国際色豊かな顔ぶれだったので、僕も酷い英語なりに説明させて頂きましたが、お互いにコミュニケーションをとろうという意志があれば、それなりに伝わっていたようで。言葉は道具なのだとあらためて思いました。

お昼には茅葺き民家に上がらせてもらって、囲炉裏を囲んでカレーを頂きました。
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おクドさんを使って、羽釜で焚いた美山の新米と取れ立て野菜のカレー。何とも贅沢でした。

刈った茅はこのように春まで立てておきます。「ニウ」とか「カヤツボ」と呼んでいます。
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ススキに雪が積もって倒れてしまうと、折れたり曲がったりして茅としては刈り取れなくなってしまうので、美山では雪の季節を迎える前に、まだ青いススキを刈り取って風通し良く立てておくことで、雪が積もっても倒れず春までに乾燥させるようにします。
従って美山のような積雪地の茅は、同じススキでも年が明けて葉やハカマが枯れ落ちてから刈る、無雪地域の茅とは建材としては別物となります。同じススキを用いた茅葺き屋根でも、それぞれ異なる葺き方が発達していて、屋根のかたちもそれに合わせて微妙に異なってきます。

071108 籾殻で薫炭つくり

土間と居間のあいだに紙を貼りました。
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こうして壁のように仕立てるとイメージがわかりやすく、完成した姿を思い浮かべてにやにやしてしまったりしています。

もちろん、そうやって遊ぶために紙を貼った訳では無くて、土間でこんなことをするので煙除けです。
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籾殻を蒸し焼きにして、薫炭を作っています。土壌改良材や種まきのときに一緒に蒔いたりして、農業の現場ではおなじみの素材ですが、砂木の家では床下断熱材として使ってみようと思っています。

ただ、毎日燻しているので、屋根の上で作業する人は大変ですが・・・
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かつては日々の生活の中で家の中で火を焚いていて、それは屋根の葺き替えをしているときも変わらなかった訳ですから、昔の屋根屋さんの苦労が偲ばれます。

そんなことをしながら、砂木の家の屋根葺きも少しずつ進んでいます。
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晴れた日には晩秋の日差しにススキの穂が輝いて、外で働くのが気持ちの良い季節ですが、日が落ちるとたちまち冷え込んできます。