筑波の屋根を特徴づけている、軒の部分の解体に取りかかります。
水平に大きく張り出した軒を支えるために、鎌倉の覚園寺でも使った「力竹」が入っています。
軒が付いた状態でも茅材が随分急な勾配で屋根に置かれています。
関西では軒に先細りの材料を使って、軒が付け終わるまでに茅材を置く勾配をなるべく水平に近づけるように努めるので、これには驚かされました。
軒を層状に積み重ねて美しい縞模様をつくる筑波流の茅葺き屋根。
このシマシマはバウムクーヘンのように一枚ずつ剥がして行く事が出来ました。
水切りになる軒端の部分を取り去ると、そこから下はそれまでとは明らかに別の職人さんの手によって、より丁寧に収められていました。
おそらく前回の葺き替えの際にもここより下の軒は傷んでいなかったために、取り替えることなく残されていたものと思われます。
軒を水平に張り出そうとすれば薄くなるので、丈夫に葺くためには難しい技術が必要ですが、上手に葺かれていて茅材の勾配もここでは不自然な程ではありません。
今回も特に傷んだ箇所を除いてこの軒は残して、その上に重ねて屋根を葺いて行く事にしました。
軒のコーナーを押さえるための、平たい割竹を曲げるための目からウロコな工夫。
どうなっているか判りますか?
押さえの竹に使われているのは割り竹だけではなく細めの丸竹も。
タナカさんが「マンダケ」と呼ばれたシノタケかネマガリタケと思われる竹は柔らかく、曲げても折れる事は無いようです。一方で固いマダケは折れないようにねじって曲げてあります。
竹を茅葺きの材として使いこなす技術の発達を垣間見る事が出来ます。
関西流の葺き方だと、コーナーの部分に独立して「角付け」をして固めたくなりますが、筑波のやり方に習ってあらためて軒端の水切りを付け直して行きます。
茅材の奥が起きて勾配がつきすぎないようにしながら、手前の軒の端になる部分をしっかり固めなければならないというのは、単純に考えると相反する条件を満たさなければなりません。
取り付ける場所を考えて一束ずつ茅を選び、束ごとのクセを活かしながら上手く収まるように気を遣って軒を付けて行きます。
こんにちわ〜♪
「マルズミ」の技術は南会津の影響なんでしょうか?それとも筑波流独自もものでしょうか?
ルナルナ さん、こんにちは。
さて、どうなのでしょうか?
僕たち関西の職人から見ると、そもそも北関東と南会津の屋根はあまり変わらないように見えてしまいます。
僕が福島で仕事をした経験が無く、そこの屋根に関する理解に欠けているせいだとは思いますが。
あの辺りの渡りの職人さんたちについては、優れた報告が多々あるようですし、座学の勉強も怠らないようにしなければ、とは思いながら、なかなか・・・
なんかずっとブログみせてもらってて
だんだん感じわかってきました。
これはデザインですね、
ただ、茅葺を再生してる消極的感じと違う。
新しい屋根のあり方を古きをたずねて模索してるかのような・・・
ichide さん、コメントありがとうございます。
茅葺きというのは専門職として確立してからの歴史が浅く、神社の屋根を葺いたりする桧皮葺きや、大工さんの技術などと比べて、未だその技術が体系化されてはいません。
それはつまり、地域ごとの特色の持つ意味を理解しその良さを活かしながら、一般論として展開できる系統立った茅葺き技術の確立に、日々携わる事が出来るという事でもあるので、やりがいを感じます。
同時に、21世紀の日本の社会において「茅葺きという文化」がどのような意味を持つのか。その関わり方もデザインして行きたいと思っていますが、それらも先に述べたような技術力を磨いて、しっかりした裏付けを持たなければ、机上の空論で終わりかねないことになりますので。
元気にしてはりますか?美山は少しずつ寒くなってますよ。カメムシ君も徐々にわいてきてます。いつごろ帰ってきますかね〜?
シジュウカラ さん、コメントありがとうございます。
今回の宿はありがたいことに食事が良いので、すこぶる元気です。今までの泊まりで一番かもしれない。
カメムシはウチのボロ小屋では出発前から賑やかでしたので心配です。月半ばには帰ると思うので、それまでにはピークを過ぎてほしいです・・・
昨日も各御仁と話してたんですが、
結局本当に生きた文化は、現場からの気付きが一番なんだという事できょうつうしてました。
現場を観て未来を考える。
多分、なんの業界も一緒と想います。
私の場合、たまたま環境系にしてますけど、
壮大に見えて、実は、ちまちました幾多の現場のフィードバックです。ようするに。
多分、多くの屋根の例を丁寧に解体しつつ観ると新しい収まりの工夫も想起できるだろうとおもいます。
>ichide さん、
さすがに普段の現場ではこれほど解体に手間をかけることは出来ませんので、尚更今回のような研修の機会を有意義に活用しなければと思います。
多様性に満ちた茅葺きの文化を伝えて行くために、残されている時間の短さには焦りを感じずにはいられません。